「私重いよ」
「大丈夫ですって」そのまま私達は西に向かう。ここはもう杉並区なんだろうな、行ったことのないとこ歩いてるなんて私らしくないな、ま、裕美さんがいるからこういう事もできるんだろうな。以前の私だったら拓実くんの後ろ歩いてたのに今はこうして裕美さんと二人並んで歩いてるなんてね。我ながら成長したもんだって思った。付近は住居ばかりで目立ったものがない。どんどん暑くなってる。裕美さんが心配で終始裕美さん眺めた。裕美さんは快調だ、いつもの裕美さんに戻ってる。でも泣くなんてね、私のこと狂ったように好いてくれてる。嬉しい、いや、愛おしいって思う、拓実君でも私のために泣くなんてことはないだろう、そんな人だ、裕美さんて。
「家ばっかだね」
「そうですね、流石1300万もの人が住んでる町なんだって思えます」
「私達もその中の一人なんだよね」
「そうですね、裕美さん、喉乾きません?」
「そういえばそうだね、喉乾いたかも」
「どっかお店でも入りますか?」
「ダメ、私達は吉祥寺まで行くの、そこでお茶でも頼むの」
「でも、長くなるんだし、ちょっと休憩でもしません?」
「そうだな、コンビニでお茶でも買うか」
「ええ、そうしましょう」私達はファミリーマート富士見ヶ丘駅前店でお茶買った。で、側の階段に腰下ろして飲む。うん、生き返ったみたいだ。スマホが鳴った。母からだ。父は出ていったとのこと、すき焼きとビールで待ってるとの連絡。
「裕美さん、父は出ていきました、どうします?」
「このまま吉祥寺まで歩きます」
「もういないんですけど」
「いいの、このまま電車乗ったら翔君がいなくなるって思うから」
「私はずっと裕美さんの側にいますって」
「私の気持ちの問題、このまま歩く」
「わかりました、歩きましょう」
「うん」私達は再び歩き出した。また一緒に手繋いで。相変わらずの家ばかりの景色、うーん、半分程度は歩いたかな、よく歩いたものだ、時刻は12時。
「裕美さん」
「ん?」
「私達もやっと半分まで行きました、吉祥寺までもう少しです」
「そっか、良かったね」
「着いたらまずお昼にしましょう、何食べたいです?」
「すき焼きがあるから軽いものでいい」
「軽いものか、うーん、ラーメンとかうどんとかですよね」
「うん、すぐお腹空きそうなのがいい」
「わかりました、探しときます」
「ヨロシクね」そう言ってまた歩く。ラーメン店か。スマホの地図で探してみるとうどん屋があった。ここにするか。あと、井の頭公園の終わりに裕美さんに言いたいことがある。絶対に一緒に寝てほしいって言うんだ、彼女のことだからもうヤラシイことはしないはず、だからホントの子供のような感じで寝るのだ、これこそが今の私が一番したいこと。思わずニンマリしてしまう。
「どうしたの、笑っちゃって」
「いえ、何でもないです、でももうこんな家ばかりの景色も飽きましたね?」