「いや、違う。俺、今日今から彼女のお見舞い行ってくる。彼女の今は小田島さんオンリー。でも、いつかは俺が取って代わる、いや、必ず俺だけの裕美さんにしていく。知り合ってからの期間は短い。でもそれが何だ!付き合いの短さは俺の気持ちで塗り替えてやる。もちろん、その時には翔子はその陰すら忘れてしまってるだろう。許して欲しい、俺の気持ちは裕美さんだけにあるんだってことを」

「フフ、拓実君、ダメだよ。そんなこと言われても全然実感ない。やっぱりさっきの拓実君の告白効いてるんだろうね」

「くそ、笑いやがって。じゃお前どうなんだよ」

「何が?」

「俺のことどう思ってるんだよ」

「もちろん好きだよ。じゃなかったら私逃げてるよ」

「はぁ・・・お前がホントに俺のこと好きになるのっていつになるやら・・・」

「大丈夫だって。私泣いたじゃん」

「まぁ、いい。いつかはお前に俺をを惚れさせる。お前は俺がいないと何もできないような女にしてやる、覚えとけ!」

「私今でもそう思ってるけどな。だって拓実君いなかったら私も全然動かないもの。でしょ?」

「・・・そっか?そっかな」

「思い出してよ、例えば裕美さんがいた時でも、私自発的に何か言ったかな?」

「そうだな、お前って相手に合わせるようなことしか喋ってなかったな。言われてみると確かにお前って陰に隠れた奴だったんだ」

「だから私が日向(ひなた)に出ることはない。断言しちゃうね。いつも拓実君の陰に隠れてるよ。それでいいでしょ?」

「うん、それでいい。俺出しゃばりな奴嫌いだし」

「じゃ少なくとも私は合格ってことでいいんだね?」

「そうだな、あ~疲れた。お前とは他愛のない話ばっかだろ、こっちの身にもなってくれよ」

「でも、それで拓実君満足してるんでしょ?」

「満足?」

「いい?拓実君が私を必要なように私も拓実君は必要な人なの。お互い切っても切れない縁なわけ。こういう関係も大切なことだと思う。お互いがお互い確認しないと満足できない関係って」

「確かにな。俺もお前がいないと学校行く気も失せるな」

「拓実君の本音やっと聞けた気がする。それこそ拓実君じゃないけど、一蓮托生だね」

「お前ってやっぱ怖いわ。よく覚えてたな」

「声嗄らして言ってたじゃない」

「はいはい、わかりました。・・・って結局お前のペースで終わるもんな、ツマンネ」

「何か言った?」

「いや何も」

「そう、じゃそろそろだね、3時限目」

「あ、もう時間か。・・・で、俺言うけどよ、日曜日にでも動物園行かないか?」

「えらくまた急だね。どうかしたの?」

「普段のお前がどんな奴なのか知りたくなってな」

「別に今と同じじゃない。私は私。平日も休日も変わらない」

「俺は違うぞ。やっぱ休日の方が嬉しい。気分も楽な気になる」