「そう、ま、頑張っておいで」

「はい、ありがとうです」母ともしばらく会えなくなるのがちょっと悲しかったけど、私はこれから前向いて進むんだと思うとその気持ちも薄れていく。第一私には拓実君という家族と同じような頼もしい人がいるんだから。「ごちそうさまでした」お皿とか流しに持っていき2階に上がり登校準備に取り掛かる。もっとも荷物なんて何もないし準備はすぐできた。7時15分か。ちょっと早いけどもう外に出よう。

リビング行って「お母さん、早いけどもう行くね。お世話になりました」

「拓実君だってまだ来ないだろうに。あぁ、行っておいで」玄関出た。朝からもうムッとする。今日も暑いのかな。嫌だな。と思ってる間に

「おはよう、早いな」拓実君が来た。彼も早いな。

「おはよう、拓実君こそ早いね」

「いつものことさ、出る前にちょっと・・・」玄関に向かってドア開けて「おはようございます」と言うと、お母さんが出てきた。

「おはよう、拓実君も早いね」

「いつものことですよ。ま、とにかくまた翔子と学校行ってきます。昨日はごちそうさんでした」

「いいのよ、また来てね」

「はい、また来るときはこいつ連れてきます、じゃ行ってきます」

「行ってきます、お母さん、元気でね」

「行ってらっしゃい、お前も元気でね」

「はい」と言って家を後にした。

「ふぅ、今日も暑そうだな」駅に向かう途中で拓実君が言う。

「そうだね、暑いのって嫌だな」

「それよかお前寂しいんじゃないの?久しぶりの我が家帰ったのにまた寮暮らしなんてよ」

「そりゃちょっと悲しかったけど大丈夫。だって・・・」

「だって?」

「拓実君がいるんだもん」

「おいおい、どうしたんだよ、いつものことだろ?」

「そう、いつも私には拓実君がいてくれる。だから安心なんだ」惜別かぁ。そんなこと思った。裕輔さんの想いも簡単に消えてしまってる自分に驚く。わかってる、その思いは単なる憧れだったんだって。だから簡単に消えたんだ。そして、今の私には拓実君がいる!拓実君は私の戯言にも付き合ってくれる。こんな男の子はいないって思う。だから、素直に今の気持ち吐けたんだろう。

「朝からご苦労なこった。どうしたんだよ、何か変化あったのか?ひょっとして昨日の奴か?」

「だね。昨日で私の想いもどっかいっちゃったみたい。どっか遠くに」

「お前さぁ、そんなに簡単に忘れられるものか?10年くらいあったんだろ、お前の想い」

「そうだけど・・・」駅のホームに着いた。ちょうど電車が来たのでそのまま乗った。やっぱ人でいっぱいだ。押し蔵まんじゅう状態での電車はキツイ。「拓実君、大丈夫?」

「あぁ、こんなもんだよ、俺の毎日って。お前こそ大丈夫か?こんなのもほとんど経験ないんだろ?」

「大変だけど、我慢する。とにかく早く着いて欲しい」

「信濃町まで我慢しろ。たまらんけどな」

「うん、わかった」大勢の人込みの中、とにかく我慢して20分ほどで信濃町に着いた。ホッとした。
信濃町の改札口を出て「サラリーマンの人も大変ね。これだけのギュウギュウ詰めの中電車乗って会社着いたら仕事する気もなくなるな」