友達でさえ、ないけど -5ページ目
道に迷った
まっすぐ まっすぐ
歩いていたはずだった
ここから 抜け出すには
その方法しか
残されていなかったから
見覚えのある スタート地点
遠回りして 泥だらけになって
この道が正しいと確信した結果
ふりだしにもどる
もう 歩くチカラ 残ってない
もう いいや
夜が明けて
朝になり
昼がきて
また夜を迎える
いつからだろう
誰かが私を見下ろす気配
そして
目線を同じ位置まで合わせてくれた
「一緒に 歩きませんか」
途中まで たぶん 同じ道だと 思うのですと
その人は言った
すがる思いで その人の後ろについて歩き
いつしか 並んで歩くようになった
二人離れる 分かれ道は
きっとまだ 遠い未来
その時は きっと 笑ってお別れできる
すれ違うたびに
ふわっと 香る
香りと 人は 結びつく
あの人がつけてた
香りが知りたかった
似てるけど 違う
作られた 香りじゃなくて
あなたの 身体の熱に溶けたと同時に
それは その人の 香りに
変わる
たかだか 数千円で 売られている
その香りを 買っても
あの人のとは 違う
すれ違う 見知らぬ人
ふわっと 香る
同じ香りだから やっぱり
振り返って みる
そこに 私が好きな あの顔はなくて
そこに 私を 想う あの人はいなくて
聞いたことも 使ったこともない言葉
結構長く 生きてきたけど
難しい言葉 騙すためだけの言葉
言葉は 取り返しがつかない
だから 怖い
私は 言葉を あまり知らない
伝えたい想いは たくさんあるのに
伝わらずにいる
時に 誤解を与え
二度と 言葉を交わさなくなって
唯一知っていた ごめんねは
使うときを 間違えた
私は 隣にいるよ
遮られる 着信音
隣で 平気な顔して 聞かないフリをする
それが 私の役割
顔がひきつる
時々
明日は 晴れるのかななんて
どうでもいいことを
思い浮かべて
聞きたくも無い 情報が 耳の奥に残る
私が聞いたこともないような
声色で
私が掛けられたこともないような
優しい言葉を 選んで
まっすぐ他へ向かう あなたの心
私は 隣にいるよ
よく見て
私は ここに いるのに
あなたには 映らない
泣きそうな私
並んで座って
作りもののみたいな私
私も もう 要らない
わかるかな あの嫌な 感じ
おあつらえむきにも 外は 雨
あぁ 今日で 逢わなくなるんだな
言いたいことは 次々に 沸き起こって
その後のあなたの 返答まで イメージできたら
やっぱり そこまで 馬鹿じゃないから
喉の奥で 言葉を詰まらせる
あなたの心に残る 良い言葉を見つけようとしたら
たった ひとことしか 浮かばなくて
タイミングを逃す
ワイパーの音が物悲しく
じゃあね 元気で
そう言われる一瞬前が
まるで 準備していたようで していなかったから
心臓は 勢いよく 痛くなって
涙の味をぐっと飲み込む
やっぱり 今日だったか
お別れを言われる気がしていたんだ
助手席から 降りたら
真っ黒なアスファルトに雨がヒカリ
ありがとう を 心いっぱいに
手をふる
本当に この言葉しか あなたには
残らなかった

