たつじは家路につきながら、自分が欲望に任せてしたことを後悔していた。翌日に謝ろうとアパートに出かけても追い返された。次からは呼び鈴を鳴らしても出なくなった。昭子は本当はたつじのこと許していた。衝動的な行為は自分が不用意だったとわかっていたし、何よりも彼との日々が忘れられなかった。彼の存在は昭子にとってはすでになくてはならなくなっていたが、意地を張っていた。
次の週にたつじが来たときに「こんなとこ近所の人に見られたらいけないから中に入りなさい」と言った。ちょうど昭子は生理が終わったばかりだった。玄関のドアが閉まるなりに「お願いだから優しくして」と懇願してたつじに抱きついた。「よかったぁ。昭子さんに嫌われたと思って…」と泣き声で答えた。たつじは唇を重ねようとしていたが、昭子が許してくれたことの喜びが溢れて、顔の下全体を舐めている感じだった。
(※画像は片桐夕子)
母性愛のようなものではなく、むしろ三十路の肉体がたつじを求めていたといったほうがよいかもしれない。無理やりに貫かれたときも10年前のように嫌ではなかった。たつじへの愛がそういう複雑な感情を抱かせていた。「大丈夫よ。あたしがちゃんと教えてあげるから…」と言いながらも、教えるだけの経験は昭子にはなった。実のところは2人の未熟者の「臨床実験」に近かった。
「もう一度一緒にお風呂に入るところからやり直しよ」と言ってバスルームに連れて行ったが、まだお湯はバスタブに溜っていなかった。というかお湯を溜める必要はなく、石鹸の泡を洗い流す温かいシャワーさえあればよかった。「あれ、この石鹸擦ってるのに泡が立たないわ。」「それ、俺の…。あんまり擦りすぎると泡が先っちょからでてしまう…」そんなばかばかしいやり取りに2人で大笑いした。
その日は蒲団をベランダに乾していた。2人は手を繋いで全裸のままリビングに行った。昭子は椅子ではなくたつじと食事したテーブルに座った。まるでたつじに料理をふるまうように自分の肢体を振舞おうとしていたかのようだった。「ねぇ優しくして」と念を押すように言った。たつじはいますぐにでも快楽を満たいという欲望を押さえてテーブルの上の肢体のうち、昭子が言う「女の子の一番敏感なところ」を愛撫した。
昭子は身をくねらせていた。たつじに愛されているという実感を確証した。「昭子さんもそんな声出すんですね」と告げると、「いや、見ないで恥ずかしいから」と身体を裏返しにした。脚は辛うじて床に着く感じで、背中と尻があらわになった。たつじは上半身を起こして乳房を掌で覆うと、今まで思っていなかった量感を感じた。剛直が尻に当たっていて、初めてそれで自分の身を貫かれてみたいと思って、顔だけ振り向いてたつじに「してもいいよ」と囁いた。
後背位ほど媾合の目標がはっきりする体位はない。哺乳類の交尾がほとんど後背位なのはわかりやすい。たつじはエーブルの上に伏した昭子に侵入した。途中少し抵抗を受けたが、そのまま進むと奥まで届いた。子宮口に当たっていたのだろう。まさしく「貫かれる」という感じだった。それを何度もロングストロークで繰り返す。男は制服感を感じ、女は被虐感を感じてしまう体位だった。たつじは若いオスだった。中で昭子がイクことができるほど長続きせずに果てた。それでも昭子は何やら中での快感らしきものを覚えた。
もっともこのとき精子が生き続ければ、新しい卵子を排卵して妊娠してしまう可能性もあった。生理が終わって心も体も高揚していたからか、そういう心配をする余裕はなかった。
昭子はベランダに乾かしていた蒲団を寝室の押し入れに収納しようとしたとき、たつじが後ろからお尻を触った。「なに、またしたくなったの?仕方ないわね」と口では言いながら顔はニヤついていた。
