VINTAGE TROUBLE / THE BOMB SHELTER SESSION(2010) | 極私的洋楽生活
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豚袋でございます。
 
 
10月というのにまだまだ日中は秋を感じないですね。近年は亜熱帯化しつつあるニッポン、暦と体感の季節のギャップがもはや身体にしみつきつつある感があります。
 
 
さて、自分は昨今本当にいろいろなジャンルの音楽を聴いているせいか、なかなか一枚のアルバムを繰り返して聴く事が少なくなってきています一回聴いたきりで「おお、こんな感じか」と流してしまうアルバムが本当に多くなりました。時間をかけてじっくり聴くのがアーティストに対する礼儀とも思うのですが、自分がまだ聴いていない音楽を知りたい・聴きたいという欲求に際限がなく消化しきれないほどのアルバムに接している自分がおります。
 
 
節操のない音楽趣味を持つ自分でございますが、しかしながら多分、自分の音楽嗜好の根深いところにあるのは「ブルース由来のロック」なのだろうと思います。ブルースそのものではなく、ロックというフィルターで料理した音が好き。なおかつファンクな要素がプラスされれば更によし。そしてやっぱりナチュラルな歪みのあるギターの音が好き。そんな音に接すると繰り返し聴くアルバムに仲間入りしてしまう、そんな傾向があります。
 
 
そしてちょっと遅ればせながら、このヴィンテージトラブルのアルバム「The Bomb Shelter Sessions」に最近ハマってしまいました。まさに自分のそうした根深い嗜好を刺激するにドンピシャな音だったのです。もう、最初の曲でガツンとやられてしまいました。
 
   
 
 
凡庸な言い方しかできないですが、理屈抜きで「カッコイイ」音でした。何と言ってもボーカルのタイ・テイラーのジェームズ・ブラウンも顔負けのキレッキレのシャウトにタイトでシンプルなドラム、オールドトーンのレスポールの唸るギター。ブルージーでロックでダンサブルでファンキー、すべてが自分好みの要素が絡み合う音塊でした。どこかで書かれておりましたが、「レッド・ツェッペリンのヴォーカルをジェームス・ブラウンが担っているかのような音」まさにそんな感じではないでしょうか。
 
 
まさに「ヴィンテージ」の名に恥じない、虚飾のないむき出しのバンドサウンド。しかもエッジーなドライブ感に溢れ、レトロ感よりも新鮮さが勝っているように思います。近年のエレクトロ過多のサウンドに真っ向から対峙するような孤高を感じると言えば褒めすぎでしょうか。
 
   
 
 
一転してミドルテンポの曲は、ボーカルのソウルフルな表現力が際立ち、さすが黒人にしか出せない声というか、やや低音域ではスキーになるまるでマーヴィン・ゲイやオーティスを彷彿とさせるような声を聴かせます。
 
 
演奏は上手いかというとそれほどのものは感じず、どちらかというと凡庸な気もするのですが、前のめりのパッション的なものが勝っているので気になりません。また、よく聴いていくとブルースを初めとしたいろんなルーツミュージック要素の「ブレンド具合」が絶妙に上手いのではないかと感じます。オールドリスナーが持つ郷愁の刺激と電子音に飼いならされた若いリスナーへの新体験の喚起を結果としてバランスよく収めている気がします。黒人白人混成であることで、そのブレンド感がうまく調和しているようにも思えます。
 
 
2012年のサマソニ、2016年4月と来日したようですが、ライブにもかなり定評があるようでぜひライブを見たかったと思います。残念ながらちょっと知るのが遅すぎました。プリンス、ブッカーT、レニー・クラヴィッツ、ブライアン・メイなどの大御所からも「本物」「完璧」と言わしめたその音楽性とパフォーマンス、体験したいところです。
 
   
 
 
このアルバムはデヴューアルバムで2011年にリリース、今から5年前の音です。この後のアルバムが2枚出ていて、2015年の「1 Hopeful Rd.」も聴いたのですが、このアルバムのようなバランス感覚やエッジーさが失われ、どちらかというとソウル寄りが強くなってしまった気がします。ブルーノートレーベルからのロックバンド初リリースということで気を遣った、という事なんでしょうか。悪くはないのですがちょっと残念です。次のアルバムはぜひともファーストに回帰した音を期待したいところです。
 
 
それでは、また。