LED ZEPPELIN / LED ZEPPELIN Ⅲ (1970) | 極私的洋楽生活

 

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豚袋でございます。しばらくライト名義の記事が続きましたので、今回は本編に行きたいと思います。
最近、再結成コンサート延期や骨折、そしてベスト盤リリースなど何かと話題にのぼります、ZEPさまを
再び取り上げたいと思います。時系列にしたがって今回は「Ⅲ」でございます。

( ちなみに1STのレビューはこちら  2NDはこちら )

1STでソウルフルなブルースロックで荒々しく衝動的なチューンでデビューし、2NDでもうすでに自己流ロックグルーヴを原型として完成させてしまった彼らですが、同時に次の展開をどうするのか、が課題であったことでしょう。1970年にリリースされた彼らの3RDアルバム「Ⅲ」。そこで彼らが選択した方向性は「アコーステイック」を切り口にヘヴィーロック一辺倒からの脱却と音楽性の拡大を図る事でした。

最初にこのアルバムを通して聴いた時は、正直戸惑ったのを覚えております。A面はほぼ期待通り、いやそれ以上に素晴らしい音がありました。大ヒットチューンの「移民の歌」のへビィネスにのっけから圧倒されました。問題はB面です。ここには誰もがZEPに期待していたであろう「ブルージーでヘビィなロック」は存在しません。フォーキーで牧歌的、トラディッショナルなアコギサウンドが展開されており、その部分をどう聞く側が解釈していいものか、きっと当時の誰もがわからなかったのだと思います。しばらくB面を聞かないという時期が続きました。そして「Ⅳ」を聞くようになって忘却していったというのが正直なところでした。

このアルバムの価値がわかるようになったのは大分後になってからでした。フィジカル・グラフティを聞いてその音楽性の幅広さと確実な彼ららしい「グルーヴ感」に魅せられた刹那、この「Ⅲ」のB面を思い出しました。そう、ここに既にあったのです。後期ツェッペリンで完成する彼らの音楽性の原資はここだったのです。そこから聞き直し、その良さとアルバムとしての意図・トータル性が理解でき、楽しめたのでした。

アルバムをファンのひとりとして感想を…

言わずとしれた名曲・Immigrant Song プリミテイヴ回帰していくかのようなプラントの野生の咆哮がたまりません。2曲目のFriendsはアコギの美しい旋律とバッキングのストリングスの音の不気味さが妙なアンバランス感を生んでいる実験的な曲。続く「祭典の日」Celebration Day はこのアルバムのなかでも出色の出来の曲。伸びやかなギターのリフとおかずで付いてくるカッティングギターのなんとカッコイイことか!こうしたリフ作りの上手さは後期ゼップ、特にフィジカルグラフティ以降に昇華されていく。そして何と言っても「Since I've Been Loving You」、曲順も絶妙。ファーストから得意としてきたブルージーなチューン、面目躍如といったところ。こういう曲をやらせるとやっぱりプラントのボーカルが光る。曲の後半にしたがって盛り上がっていくテンションは流石という他ない。これまたギターが絡みつくように歌うOut On The TilesでA面を締める。

アコギにバンジョーなども絡んだ新境地Gallows Pole を皮切りにB面はアコースティックな新境地が展開される。Tangerineの12弦ギターの美しい音色やThat's The Wayの旋律は後の名曲、「天国への階段」のオリジンではないかと想起させる。ちょっとフォーキーだったり牧歌的だったりするけど。Bron-Y-Aur Stompを聞く限り、ペイジのリトルフィート等への傾倒ぶりがよく感じられる。テクニック云々よく言われるけどペイジくん、とっても頑張っていると思う。そして最後もブルーズで締める、Hats Off To (Roy) Harper。ここでハードロックチューンで締めないところがナイスだと思う、B面のコンセプトがこれで終結する。最高だ!唯一残念な事があるとすれば、ボンゾの出番の少ない事だけだと思う。また、プラントのボーカルワークはここに来て最高潮のスキルをもって臨んでいたように思える。

このアルバムのジャケットはとっても凝っておりました。中空になったジャケの穴からいろいろな絵が見えるへんなしかけがありまして楽しかったですね。また、後で知った事ですが、フィジカル・グラフティに入っていたブロン・イ・アーはこのアルバムにはいるはずだったアウトテイクだそうです。アコギのインストなので当時入れるのが難しかったんだろうな、きっと。


 

Immigrant song

 

Since I've Been Loving You

 

Celebration day