千代田区長選は東京大改革とは関係あらずー区民みんなで考える区長選を |  政治・政策を考えるヒント!

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   政策コンサルタント 室伏謙一  (公式ブログ)

 1月29日に告示された千代田区長選挙、東京23区の一特別区の首長選挙であるにも関わらず全国的な注目が集まっている。それもそのはず、この選挙、東京都の小池知事が今年7月の都議会議員選挙の前哨戦として位置付けており、マスコミもこぞってその視点で報道しているからである。

 

 加えて、これは以前も指摘したところであるが、この選挙が、小池知事が支援する現職の石川候補、自民党都連が推薦する与謝野候補、そして無所属無党派の五十嵐候補の三つ巴の闘いであり、小池知事と自民党都連の代理戦争ではないのだが、どうも「東京大改革」を進める小池知事と既得権益ベッタリの自民党東京都連の闘いという構図に仕立て上げた方が面白く見えるということなのだろう、いわゆる都議会のドンとされる内田都議の地元選挙区であることも手伝って、小池対自民党都連、更には小池対内田の構図で説明されることが多いからである。

 

 しかし、千代田区長選挙はあくまでも千代田区という基礎的自治体の首長を選ぶ選挙であり、区民のための区民の選挙。区民ファーストの選挙であり、誰が真の区民ファーストかを選ぶ選挙である。

 

 違う視点から言えば、これまでの石川区政をどう評価するのか、信任を与えて石川区政を更に継続するのか、それとも新たな区長の下で区政を刷新するのかを問う選挙である。

 

 例えば、千代田区の人口は転入超過で増加傾向にあり、転入者に対応するための政策が必要になるが、まず、そうした転入者には子育て世代が多いようであるので、子育て支援策の充実が必要ということになる。これについては、現職の石川候補が積極的に進めてきたとされている。もっとも区民の満足度はどうなのだろうか、評価されているのだろうか?

 

 また、転入者は当然地域コミュニティの構成員ではなかったわけだから、先に住んでいた住民の間で共有されている慣習や地域の文化、地域の「当たり前」を知らない。転入者は転入者の「当たり前」を当然のことと考えてしまうだろう。その「当たり前」が地域の「当たり前」と同じか似通っていればいいが、そうでない場合、そこに相互理解の不十分さも手伝って、紛争が生じる可能性が高い。近隣騒音はその典型例と言っていいが、他にも町会活動等様々なものが考えられる。転入者への対応策としては、既存のコミュニティへの参加、新たなコミュニティと既存のコミュニティの共働の支援といったものが考えられるし、それは最終的には区民の区政への参加を促すことにつながると思われるが、そうした施策を訴えている候補は誰だろうか?

 

 そもそも、千代田区は基礎的自治体であって広域自治体である都とは役割と権限が当然に異なる。そればかりか、東京23区は特別地方公共団体であって普通地方公共団体(市町村)と比べると権限が少ない特殊な存在である。分かりやすく言えば、一部の権限を都に取り上げられている状態なのだが、23区長会や23区議会議長会等では、かねてよりそうした権限を段階的に23区に委譲するよう要請してきている。こうしたことも踏まえれば、千代田区のこれからの在り方も区長選挙では問われているわけであり、言ってみれば、多くの区民が参加して、みんなで区政のことを考える機会というわけである。

 

 すなわち、小池知事の掲げる「東京大改革」とは全く中身も性質も異なるわけであり、千代田区長選と小池都政、千代田区長選と「東京大改革」の推進は無関係と言い切ってしまっていいのではないか。

 

 有権者の方々には頭を冷やして、落ち着いて自分たちの住む地域の行く末に思いを巡らせて、投票に行っていただきたいものである。

 

 そして、小池知事に諫言申し上げるとすれば、千代田区長選に小池色や「東京大改革」を過剰に持ち込むようなことをするのは、かえって小池都政や「東京大改革」に嫌気がさす、「嫌小池」を増やすことにもなりかねないように思われてならない。都という立場で、小池知事の掲げる「東京大改革」を進めることは大いに結構。しかし、これから来年度予算を審議する都議会も控えているのだし、いわゆる小池予算で風呂敷は広げたものの、それらを効果があるカタチで執行できるか、執行の段階で新たな課題に直面した時にそれを無難に解決し、乗り越えられるか、注目度が高いだけに、小さな落ち度でも針小棒大に扱われる可能性がある。千代田区長選はほどほどにして、豊洲移転問題を始めとする、小池都知事ご自身の目指す「東京大改革」に邁進すべきではないか。