政治・政策を考えるヒント!

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   政策コンサルタント 室伏謙一  (公式ブログ)

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 参院選、自民党は議席を減らし、野党勢力は立憲民主党を中心に議席を伸ばしたものの、なんとなく勝敗のはっきりしない、白黒のつけにくい結果となった。しかも、自民党も立憲民主党もあまり結果に触れられたくないようだ。

 

 そもそも自民党は議席減を織り込んでおり、今回の9減というのは想定の範囲内といったところだろう。そうであれば意外と減らなかったし、獲得議席の目標ラインも「与党で改選過半数」とハードルを下げておいたので、まあなんとなく勝ったことにしておいて、後は話題を憲法改正の方にもっていってしまおう、そんなところか。今後の内閣改造がどうなるのか等、気になるところであるが、まあその話は別の機会に譲るとして、ここでは立憲民主党はどうだったのかということについて、考えてみたいと思う。(立憲民主党はどうでもいいなどとおっしゃるなかれ。立憲民主党、数は別にして野党筆頭、野党第一会派であり、彼らの動向は国会の審議に大きく影響を与えうるし、与党自民党を活性化する、政策の質を上げるという意味でも知っていて損はない、否、知っておくことは重要である。)

 

立憲民主党にとって大きな機会喪失だった今回の参院選

 立憲民主党にとっての今回の参院選を勝手に総括すれば、議席拡大、勢力拡大の絶好の機会を見事に逃した、といったところだろう。

 

 議席を倍増させたのだから十分勢力拡大が出来たのではないか、と思われがちなのかもしれない。確かに議席は改選前と比べて増えたことは確かだ。しかし、もっと拡大出来たはずだったのに、それが出来なかったということなのである。

 

 今回の選挙、自民党公認候補の中には落選確実とされる候補が何人かいたようであるし、そもそも一人区での野党共闘の成立は大いなる脅威であったようだ。それならば、落選確実候補を確実に落選させる戦略を考えればいい話であり、そう難しい話ではなかったはずである。しかし、敵に塩を送るがごとく、落選確実候補を当選へと導いてしまった。そして全国比例でも、目玉と目された候補が落選する等、期待したほどの成果は得られなかったと言っていいだろう。得票数ベースで見ても、結党直後の前回の衆院選と比べて300万票以上減少している。議席数は一応は増えたものの、得票数は減少、失速感が否めない状況というのは、筆者からすると6年前の参院選後のみんなの党を彷彿とさせる。

 

 では、なぜそのようになってしまったのか。その背景としては、拙稿「年金や消費増税も中途半端、参院選の争点がスッキリしない理由」で解説した点に加え、候補者選定の問題、選挙区の割当ての問題、そして党内の勢力争いの格好の機会として参院選が使われてしまった問題、これは好き嫌いで物事を考えるという旧民主党の悪い癖がモロに出たという問題とも言えるが、そうしたものがある。(6年前のみんなの党の状況も、ある意味で酷似していると言えば酷似している。)

 

候補者選定で失敗した立憲民主党

 まず、候補者選定の問題。これは説明するまでもないかもしれないが、タレント候補や、具体的な政策よりもパリテなる考え方に基づいて立てた女性候補たち・・・真面目に愚直に活動するよりも人寄せパンダで話題作り、人気取り、票集め、か?立憲民主党結党の時から考えると、およそ想定も想像もできないような状況であろう。何を血迷ったのか、まさに迷走という言葉が当てはまろう。このことは有権者を遠のかせたことは間違いあるまい。それのみならず、選挙運動に動員された党職員や秘書たちの中には、選挙運動へのモティベーションを大きく削がれた者も少なくなかったようだ。選挙は挙党一致で、党所属議員、党職員、秘書、支持者等が一丸となって取り組まなければ勝利は得られない。それが、「なんでこの候補」、「この候補の応援をしなければいけないの?」といった意識が生まれれば、挙党一致体制にほころびが生じるのは自明の理である。この候補の応援には入りたくない、とりあえず顔だけ出した・・・といったこともあったようである。候補者選定で躓いて、挙党一致体制を壊してしまったということだろう。それでは勝てたはずの選挙区で見事に敗北したのも当然だろう。

 

選挙区が「読めない」立憲民主党

 次に選挙区割当ての問題。これは候補者選定の問題とも結びつくが、なぜこの候補者をこの選挙区に立てたのか、違う選挙区に立てていれば勝てたのではないかといった話。例えば、大阪選挙区。立憲民主党がここに立てたのは、美人弁護士として有名な亀石倫子候補。才色兼備で社会派弁護士として活躍してきた彼女は、野党立憲民主党らしい候補者である。

 

 しかし、彼女は自分の選挙スタイルを優先、例えば服装についてもふわっとしたスカートにハイヒールという姿で、それについて党から改めるよう諫言されていたようだが、自分のスタイルを貫き通したそうだ。こうした選挙スタイルは大阪ではウケにくかったようだ。しかし、もし東京選挙区で彼女を立てていれば、こうした自由なスタイルや自分のスタイル優先は受け入れられやすい土壌は確実にあり、彼女の実績や主張とあいまって、当選圏内に入ることができたかもしれない。実はこうした話は、選挙前から出ていたようだ。(もっとも、伝え聞くところによれば、彼女は街頭演説もあまりやりたがらず(写真で掲載されているのは写真用にやったものとのこと)、握手もしようとしなかったようである。もしそうだったのであれば、なんとも言えなくなるが。)

 

 ただ、東京選挙区には塩村あやか候補を立てており、彼女は6人中4位で、自民党の武見敬三候補より上位で当選している。もし亀石候補を東京で立てることになれば、塩村候補を大阪で立てることになるが、様々な噂や週刊誌ネタに事欠かない彼女、大阪で立てたとしても、誹謗中傷は出たかもしれないが、「イロモノ」として扱われて注目を集め、上位ではないにせよ当選圏内には入ることができたのではないかとも言われている。(筆者の見るところ塩村候補は結構胆力があり、誹謗中傷組の「好敵手」になったことだろう。)

 

 つまり、もし大阪に塩村候補で、東京に亀石候補ならば両者とも当選できた可能性があったわけである。しかしそうならなかった背景には、党内の勢力争いがあるのだが、その話をする前に、もう一つ選挙区の割当てが失敗したのではないかとされる例を挙げておきたい。

 

 それは徳川家広候補を静岡選挙区に立てたことである。徳川候補と言えば、将軍家の血筋を引く徳川宗家の次期当主である。徳川家の全国的な知名度は言わずもがなであり、当初は全国比例の候補と目されていたようだ。それが静岡選挙区に立てることとなった。その経緯は本人が徳川家ゆかりの地である静岡にこだわったとも言われている。しかし、静岡選挙区、その選挙事情は単純ではなく、安易に立候補できるようなところではないようだ。しかも、政治が趣味とも言われているスズキ自動車の鈴木修会長の動きで選挙の流れが変わるとも言われている。今回の選挙でも、どうやら早い段階で鈴木会長が、事実上の対抗馬である国民民主党の榛葉賀津也候補を応援する方向で動いたようで、それによって徳川候補と榛葉候補の差が大きく開き、徳川候補が落選の憂き目に会うことになったようだ。(鈴木会長に根回しをしたのは、小沢一郎衆院議員であると聞いている。)

 

 徳川候補の得票数は30万票超。もし全国比例で立てていれば、立憲民主党の全国比例の今回のトップ当選が15万票超の自治労系候補であることを考えると、全国的な知名度も手伝って当選、しかも立憲民主党比例名簿中でトップ当選も間違いなかったのではないかと言われている。(徳川家ゆかりの地は、御三家、御三卿、会津松平家等、静岡に限られない。)

 

選挙よりも党内抗争を優先する立憲民主党

 そして、党内の勢力争いの格好の機会として参院選が使われてしまった問題。よりふさわしい選挙区に、その候補を立てればより有利になる選挙区に、適材適所に候補者を立てるというのが本来のあるべき姿なのであるが、それよりも、党内グループの勢力拡大に有利か否か、党内グループのボスの好き嫌いが優先されてしまったようなのである。

 

 先ほどの例で言えば、亀石候補を大阪に立てた理油は、もちろん彼女が大阪で弁護士として活躍していたということもあるが、関西方面に根をはる辻元清美衆院議員にとって、自分のグループに治めるのに、亀石候補は都合がよかったということらしい。一方で塩村候補については、辻元議員からすると望ましくなかったということのようだ。しかし、蓮舫参院議員のグループからすると都合が良かったようで、東京になったと言われている。(いずれにせよ、候補者選定と選挙区割当てはブラックボックスだ。)

 

 また、徳川候補の選挙区割当てや選挙運動については、福山哲郎参院議員と国民民主党の榛葉氏との確執、仲違いが影響しているとも言われている。

 

「万年野党の幸福」に甘んじる立憲民主党に未来はあるか?

 いずれも野党第1党にしては情けない、お粗末な話である。

 

 立憲民主党にとって党勢拡大と政権奪取に近づく重要な機会である参院選、その裏ではこのようテイタラクが繰り広げられたのは、腐っても野党第1党、その地位から当面転げ落ちることは当面ないだろうと踏んで、その地位に甘んじ、胡座をかいて、ある種自己満足に陥っていることによるものではないだろうか。その姿はかつての社会党のようであり、万年野党の地位にすっぽりと収まっている姿である。「奴隷の幸福」という言葉があるあ、今の立憲民主党に当てはめれば、「万年野党の幸福」といったところか。

 

 そんなことでは万年野党の地位からは永遠に抜け出すことはできまい。そして、その状態に対する危機意識がなければ、次の衆院選で、立憲民主の候補が立っている選挙区に、勢いに乗るれいわ新選組に対抗馬を立てられるようなことになれば、ひとたまりもないだろう。