比較的初心者向けのアドバイスなのですが、最終的に2ミックスが完成した際に市販品に比べて音像がぼやけていたり、透明感が損なわれる理由の一つとしてミックスバスが破裂しているというケースが存在します。

 

ドラムグループ、ギターグループ、シンセグループ、ボーカルグループ、あるいはマスターバス(マスターフェーダー)何でも構いませんが、バスに集合するたくさんのオーディオシグナルが一つ一つのトラックでは割れていなくてもバスに入った時点でトラックに対して、あるいはバスコンプやトーンコントロール用のプラグインに対して過大入力になっているというケースは初心者のセッションでよくあります。

 

 

Waves CLA MixDown

 

 

Waves V comp

 

例えばWaves CLA MixDownやV compを見てみましょう。 これらのプラグインには針式のメーターにIN・OUT・GR3つのスイッチが付いていますが、これは決して飾りで付いているわけではなくそれぞれのレベルを図るために用意されています。

 

 

今回問題としたいのは入力レベルつまりメータースイッチをINにした時の場合です。V compの説明書には「アナログでの理想的な入力レベルは0~+5 dBUであり、これをデジタルに直すと-22~-17 dBFSの範囲となる」という趣旨のことが書かれています。 つまり針が0dB に近づくような範疇では過大入力になって理想的な性能を発揮できない、少なくとも設計段階ではそのように作られているということです。

 

 

例えばV compをマスターバスに入れる場合に既にピークメーターが0dBFSに届いていて、それをコンプやリミッターで潰さないとクリップランプが付くようなレベルの場合は明らかに過大入力になります。

 

その場合にV compのINのメーターを見ればメーター上の赤いランプが付いて針も振り切れているでしょう。

GRやOUTが適正レベルでもINが過大入力の場合は音質に影響がある場合が多いです。

 

 

NEVE2254
 

V compの-22~-17 dBFSの範囲というのは現代人の私からすると「ちょっと小さくない?」と感じますが、V-compのオリジナルであるNEVE2254が作られたのが1970年代ですので、それを思えばこのくらいが規定レベルであることに納得がいきます。

 

 

Waves CLA MixDownのメーター部分

 

Waves CLA MixDownのInput部分

 

 

CLA MixDownの理想的な入力レベルに関する具体的な数字は述べられていませんが、インプットフェーダーの上にあるランプが黄色の状態が良いとされています。メータと照らし合わせてみればだいたいの数字を述べることもできますが、緑色は入力レベルは小さ過ぎる、赤色は入力レベルが大き過ぎるというざっくりとした判断基準です。

 

 

針式やLEDのメーターでInputレベルを見られる場合は少なくとも0dBには届くのは限界上限なので、余裕を持って-6~-12dBくらいにするのが良いと個人的には考えています。

 

 

もちろんWavesやUADなどはマニュアルに理想的な入力レベルが書かれていることがあり、例えばUAD-2のTeletronix LA -2Aは「-12dB FSの内部リファレンスレベルで動作しています。」と書かれていて、ここが歪み始める手前のポイントとなります。

 

 

UAD-2 Teletronix LA-2A

 

こういう知識があれば敢えてオーバードライブさせたり、しなかったりというミックス上の判断基準を持つことが出来るわけですが、何も考えずに(何も知らずに)常時過大入力してしまうとミックスの各所で意図しない歪みが大量に発生し、それが積もり積もって最終的なマスターアウトでは濁っているという結果になってしまうことがあります。

 

 

市販品に比べて自分のミックスは透明感がない…という理由の1つはここにあるかもしれません(ほかのケースもあり得ます)。

 

 

アナログ機器のモデリングではマニュアルに規定や理想の入力レベルが書かれていたり、またメーターが付いていたりするのですが、デジタル系のプラグインの場合はそういったことが何もわからない場合があります。

 

 

規定レベルに関してはアナログ同様に考えればまず間違いないと思いますが、入力レベルはそのバスに挿すプラグインの前にメーターリングソフトを入れれば解決します。

 

 

愛用のPSPメーター

 

「メーター」→「バスに挿すプラグイン」という順番にするだけで入力レベルを監視出来るのでとても便利です。

 

 

ミックスが濁る=歪んでいるというケースの場合は、ミックスバスで破裂しているか、そもそも個々のプラグインの用法が不適切というケースがほとんどです。元音がそもそも濁っているというケースがありますが、プラグインを適切に使えるなら大体の問題は解決出来ます。

当たり前のことですが、マニュアルを読むこと、上手な使い方を本や上手な人から学ぶこと、自分でも経験を積むこと、こういったことの積み重ねが1つ1つは小さくても全体に大きな影響を与えています。

 

 

 


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