Pultecタイプのように同じ周波数に対してブースト(増幅)と
アッテネーション(減衰)が可能なツマミがついているイコライザーについて書いてみたい。


PultecのEQP-1Aはとても有名なヴィンテージイコライザーで
ハイエンドなシェアウェアからフリーソフトまで
非常にたくさんのプラグインが出ている。



私自身も大好きでよく使うが、
どんなところが人気があるのかというと
まず真空管タイプであるということ、
そしてその独特のイコライジングカーブが人気の秘訣になっている。




上の図を見てわかるとおり、PuletecのEQP-1Aには
同じ周波数に対してブースト(増加)とアッテネーション(減衰)の
両方が出来る仕様なので、初めて触る場合は
「5dBブーストして5dBアッテネーションしたらどうなるの?」という風にわからないだろう。




実際に音を聴けばある程度わかるのだが、
5dB増やして5dB減らすというツマミの回し方が出来るのが
Pultecの面白いところであり、また難しい部分でもある。




このせいで「よくわかんないから使うのやめた」なんて人もいるかもしれないし、
あるいはよくわかんないがとりあえず使っているという方もいるかもしれない。




IK MultimediaやWAVESなどの大手を始めとして10社を超えそうなくらい
たくさんのメーカーがこの伝説的イコライザーのプラグイン化を行っているが、
私がいつも使っているのはWAVESのPuigtec。



ジャック・ジョセフ・プイグという有名なエンジニア兼プロデューサーが所有している
実機のPultec EQP-1AをWAVESがプラグイン化したという触れ込みだが、
これが素晴らしい出来でよく使っている。

WAVESがモデリングしたPultec EQP1-A



肝心のイコライジングカーブだが、
こうするとこうなるという動きを図でお見せしたい。


画像はFocusrite社のLiquid mixという実機を
コンボリューションで動かすソフトのものです。

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コンボリューションとは実機のエフェクトの効果をそのまま録音して、
それを再現する方式。
リバーブやアンプシミュレーターで利用されています。
録音したものをそのまま再現するので超リアルです。

画像はあくまでFocusrite社のLiquid mixによるものなので、、
すべてのPultecプラグインで同じ動きをしているかどうかはわかりません。
フリーソフトを含めほかのPultecプラグインが
Liquid mixと違う振る舞いをしていても責任を持てませんのであしからず。
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1.ブーストした場合。


シェルビングでブーストされる。



2.アッテネーション(カット)した場合。



同じくシェルビングでカットされる。



3.ブースト&アッテネーションが両方10dBの場合


プラスマイナスゼロになるわけではなく、
ブースト優先であることがわかる。
(それは実際に聴けば誰でもわかるが…)


ここがPultec EQP-1Aの面白い所で
ブーストのシェルビングカーブの根元に「窪みが出来る」

肩特性というヤツだ。これがミソ。


見ての通り、アッテネーションを10dBにしても
10dB減衰するわけではなく、
大体半分くらいしか減衰していない。


またブースト量もアッテネーションの影響を受けてやや下がる。
10dBブーストしても、9dBブーストくらいになる感じ。



4.ブースト10dBアッテネーション5.5dBの場合。




ブースト・アッテネーションともにMAXの状態から
アッテネーションだけを下げていくと
窪みがブーストとアッテネーションの値が同じ時よりも中央寄りになっていく。
(ここでは高くなっている)


この点も面白いので良く見て欲しい。



5.ブースト10dB、アッテネーション4dBの場合



4.の状態からさらにアッテネーションを下げると
とうとう窪みはなくなり、
普通のシェルビングの形になる。


ブーストカーブはアッテネーションがないときよりも
やや急なシェルビングカーブになっている。



6.ブースト3dBアッテネーション10dBの場合。



普通のピークディップタイプEQと同じような振る舞いになる。
しかしローの周波数は30Hzに設定しているが、
実際に窪んでいるのは250Hzくらいに見える。





6.のようなイコライジングカーブなら
別にPultecを使う必要がないのは言うまでもないが、
なんとも言えず不思議な振る舞いをするイコライザーだ。



まぁ「6.」に限らずバンド数が多いイコライザーなら同じことが簡単に出来るが、
ブーストする周波数の根元をカットするという
イコライザーのコツともいう美味しいポイントを抑えた振る舞いがこのイコライザーの
最大の売りだと思う。


Pultec EQP1-Aが現役で活躍していた時代は
現在のようにDAWで動くバンド数の多いパライコなんてなかったわけだし、
このようにブーストとアッテネーションを両方同時に操作することで
肩特性をコントロールできるイコライザーは非常に重宝されたのだろう。



現に自分でミックスしていてPultecを使わない代わりに手持ちのパライコで
同じようなEQカーブを作ることはしょちゅうある。


おまけに真空管で動作するとなると、
多少ながら倍音も加わり音も立つし、
人気が出るのも頷ける。


万能というわけではないけれど、
使いどころがカチっとはまれば素敵な音作りが出来るイコライザーだ。


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