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<名張毒ぶどう酒事件>鑑定結果の評価難しく

毎日新聞 5月25日(金)12時40分配信




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第7次再審請求の経過

 今回の決定が根拠とした差し戻し審でのニッカリンTの鑑定結果を巡っては、検察・弁護側双方が自らに有利な証拠と主張していた。名古屋高裁が「混入農薬がニッカリンTではないことを意味しない」として、再び再審開始決定を取り消したことは、物証が少なく発生から時間が経過した事件で、再審開始の難しさを改めて示した。

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 差し戻し審でニッカリンTを再製造してまで鑑定したのは、奥西死刑囚の自白通り凶器がこの農薬だったか否かを確かめるためだ。事件当時、現場にあった毒ぶどう酒から検出されなかったニッカリンT特有の不純物が、今回の鑑定では高濃度で検出された。「自白通りならば事件当時も検出されていたはずで、自白は信用できない」との弁護側主張に沿った結果だった。

 一方で、事件当時に近い鑑定方法も試すため必要な前処理を施したところ、不純物は検出されなかった。事件当時の鑑定と合致するので、検察側は「(不検出の)科学的知見は得られた」と自信を見せていた。

 今回の決定は前処理後の不検出を重視。不純物の元になる物質が加水分解されたためだと考えうるので、今回鑑定で高濃度で検出されたことと矛盾しないと判断した。

 最高裁が「疑わしきは被告人の利益に」の原則が再審にも適用されるとした75年の「白鳥決定」を受けて、80年代に確定死刑囚の再審が始まり無罪を勝ち取る例が相次いだ。だが、90年代に入り重大事件の再審請求が次々に棄却され「冬の時代」とも呼ばれた。00年以降の再審無罪は「足利事件」をはじめ明白な新証拠があったことで共通している。それに比べ、名張毒ぶどう酒事件では新証拠である鑑定結果の評価が難しかった。【