本田「勝ちたかった」ロッカーで大泣き

大久保嘉人、本田圭佑 =現地29日、南ア・プレトリアのロフタス・バースフェルド競技場 (撮影:財満朝則)

 【プレトリア(南アフリカ)29日=久保武司 】日はまた昇る-。サッカーW杯南アフリカ大会第19日、決勝トーナメント1回戦で日本はパラグアイと息詰まる攻防を展開。延長戦も双方無得点のまま120分の死闘を終えたが、今大会初のPK戦の末、3-5で惜敗した。日本サッカー史上初の8強入りを逃した岡田武史 監督(53)は辞意を表明。国民の期待を上回る躍進を支えた救世主、MF本田圭佑 (24)=CSKAモスクワ=は試合後に号泣したが、悔し涙は2014年ブラジル大会への虹の架け橋となる。

 

 試合後、ピッチ上でうずくまる選手がいる中、本田だけは立ちすくんだままだった。「僕は優勝を目指してもいいと思う」。そう公言して自らを奮い立たせてきたが、あとわずかのところで道を閉ざされた。

 「おれの中では準決勝に行こうが、予選で敗退しようが同じなんです。だから勝ちたかった」

 大会直前からワントップで起用され、前線で奮闘した。前半40分に松井の横パスを受けて左足でシュートしたが惜しくもゴール左に外れた。

 「とにかく点を取れ」「FWの位置で起点になれ」と岡田監督の指示のもと、ただ1人、最後までスタミナを切らさずに走り回った。主役は明らかに本田だった。

 思い切り蹴れば、どこへいくかわからないという公式球の特性を誰よりも理解していた。PK戦で外してしまった駒野はまさにこの“公式球の呪い”にかかってしまった格好だったが、その後に蹴った本田は、あえて力を込めずに落ち着いて決めた。

 岡田ジャパンのW杯が終わった瞬間、チームメートをなぐさめることよりも、日本から応援に駆けつけたサポーターへあいさつした。実はオランダ戦で敗れた後、あいさつもせずにロッカーへ戻り、日本サッカー協会幹部から「何をしているんだ。戻れ」と説教を受けた。ピッチの4隅を周り、丁寧に一礼を終えると、最後は逃げるようにロッカーへ戻って大泣きした。

 落ち着きを取り戻しても、いつもの本田節はなく、「若い選手がもっともっと海外に出なきゃダメでしょう」と課題を口にした。日本という「殻」にはめられることを嫌い、世界で成り上がりたいという本田らしい。「負けたからには何も言えない」と多くを語ろうとはしなかった。

 1次リーグ初戦のカメルーン戦で決勝ゴール、第3戦のデンマーク戦では“悪魔の左足”でFKを直接決めるなど1ゴール1アシスト。金髪とともにその存在感を強くアピールした