ここに一冊の本がある
君に借りたまま返せない本がある
若い想い出の文字がある
もはや誰ひとり ふりむかぬ時がある
  君の人生の何ページかを
  ぼくは汚してしまったんだね
  ほんと愛してる――その一言で
  君はあかりを黙って消した
  一冊の本の歳月の重さ
  君に借りたまま返せない愛
  返せない愛がある

赤いカバーには君のサイン
細く青白い指先きを想いだす
ついに最後まで読みきれず
ある日気がつけば戻らないひとだった
  本は何度でも読みかえせても
  人の青春はくりかえせない
  ほんと愛してる――今叫んでも
  君の素肌は他人の腕に
  一冊の本の歳月の重さ
  君に借りたまま返せない愛
  返せない愛がある

  ほんと愛してる――今叫んでも
  君の素肌は他人の腕に
  一冊の本の歳月の重さ
  君に借りたまま返せない愛
  返せない愛がある