魔法の呪文をふりかけて…ポンポコ コンコン -15ページ目
どもです。Kiriです。

続き物行きますね。
今回は#006です。

1回めはこちらです。
初めておいでの方、
最初から読んでいただけると、メッチャ嬉しいです。





また今夜も、BGMを聴きながら読んでいただけると…。
文章だけでは、自信がない。
ホント、お助け音楽です。
j.d.souther  smoke gets in your eyes


「ねぇ、アタシに触れて…」

そのカケラは、また、話かけてくる。

続いて、Mさんの声。

「アイダさん、飲み物、いかがしましょうか。
コーヒー、それとも、紅茶にします」

Mさんには、聞こえてないみたいだ。

「すみません、お気遣いなく…
で、そう言っておいてなんなんですけど、
紅茶…
できれば。
でも、魔女の薬、入れないでくださいね」

「アハハハ
入れちゃうぞ。
ちょっと待ってね、
今、入れてくる」
彼女はそう言い、部屋を出て行く。

ボクは、そのカケラと対峙した。
しっかり、見つめる。
手に取り、手の平に乗せてみる。

丸いカケラ。
昔、ワインの瓶だったカケラ。

記憶…
遠い遠い、遥かに遠い日の記憶。

手紙が入ったワインの瓶、投げちゃったんだっけ。
ユキちゃんのワインの瓶。
月が空で見てた。

遠い日のユキちゃん、それからボク。
記憶はあの夜へ飛ぶ。
しっかり、憶えてる。

「何書いたんだか、教えてくれない」

「やだ。ナイショ…」

「アイダ君さ、投げてくれない、この瓶。
アイダ君が、投げたらさ、きっと、きっと、
アメリカに着くような気がする」

「何書いたんだか、教えてくれたら、投げてもいい」

「あ~、アイダ~、なんだぁ、オマエ、交換条件を出すかぁ…。
まぁ、いいか…。
でも、なんか、恥かしいな。
でも、いいよ。
教えてあげる」

ふいに、
ガラスのかけらから、何かがやってきた。

そして、その何かは、
ボクの手から、腕を伝い、やがて、ボクの全身を包んだ。
ボクは思わず目を閉じた。

なんだかわからない何かは、除々に形を取り出す。

暗い海を、漂う瓶。
アメリカまでなんて、とてもじゃない、行けっこない。

ただ、夜の海をさまよって、そして、壊れ…。
あの日のユキちゃんの願いはどこに行ってしまったんだろう。

何かは、完璧な形を取った。
寂しさだった…メチャクチャ、透き通った哀しみ。
その哀しみに、ボクは共鳴する。
ボクは、その哀しみと同化する。

哀しかった。
とても哀しかった。
ボクは、思わず目をあける。

目の前に、ユキちゃんがいた。
あの日のままのユキちゃん。

彼女は、
ボクを見つめ…

それから、
笑顔を見せ、
ボクに触れようとする。

愛しい。
ユキちゃんのぬくもりを感じた。

あの頃、決して、触れることがなかったユキちゃんのぬくもり。
彼女の感情がボクにやってくる。

「やっと…
また、会えたね。
長かったね、ね、アイダクン」

彼女の透き通った哀しみは穏やかな安らぎに変わっていく。

ユキちゃんの涙がボクの胸に…。
涙は、ボクの胸から心の深いトコロへと染みてく。

そして、

ボクは気づく。


ユキちゃんが、希薄になって行く。

ちょっと、待ってくれ。
消えないで…。

ユキちゃんは
徐々に、
徐々に、
薄くなって…。

待てって。
な、ユキちゃん。

消えていく。

「ね、アイダクン、また会えるよね」

よく聞き取れなかったけど
そう言ったような気がした。
でも
ボクもユキちゃんも、
ホントは、さ、
そんな日が、昔みたいに
もう二度と
絶対に、来ないことを知っている。

ユキちゃんは、
消えちゃった。

ボクの手の平に、昔、ワインの瓶だったシーグラスが、残った。

彼女の瓶は…
ユキちゃんは、
長い時の流れの中で、海の涙になった。

「でも、なんか、恥かしいな。
でも、いいよ。
教えてあげる。
また、大切な人に会えますようにって…」

〔to be continued〕

どもです。Kiriです。

読んでいただきありがとうです。

いつもなら
前に書いたものを書きなおしてから
アップしてるのですが

昨日のまま、悲しいシーンの後、
2,3日おいておくのも
なんだか、せつないので
次の分を書き直さないで
アップします。

で、アップしてから直すかもです。
写真も、とりあえず、今はなしで…

で、前回






BGM。またまたcranberriesです。
I will always

できましたら、聴きながら読んでください。
ですが、もうちょっと我慢です。
ここから音楽は、スタートさせません。
もうちょっと後からのスタートにします。


秋、夏の暑さが去り
風に冷たさが混ざり込む。
僕は湘南を目指していた。

sea glass…
その存在は、ネット上で知った。
どういうわけか、ボクは、その存在に心を引かれた。

ネットを主催している方に連絡を取り、
見せてもらえないか、と打診した。
Mさん。
彼女は、心よく、OK。

ボクは、栃木の生まれ育ちだ。
栃木は、海がない山地方。
もちろん、シーグラスなんて、まったく知らなかった。
もしかしたら、シーグラスは、
海の街に住む人にとっては、当たり前のモノなのかもしれない。

目的地の駅に電車は滑り込む。
空は曇っていた。

約束の階段を降りると、約束の赤い車。
そして、その車の前に、女性が1人立ってる。
ミステリアスな、女性だった。年齢が解らない。
年齢不詳…。

もしかしたら、彼女は、魔女かもしれないな。
自然と膨らむ妄想。
いつものボクの悪い癖。
魔女は、年齢をとらない。

「こんにちわ。Mさんですか?」

「アイダさん?
遠いところ、わざわざすみません」

「いえいえ、こちらこそ…
お忙しいところ、時間を割いていただきまして」

それから、彼女の車に乗り、彼女のアトリエへと向かった。
彼女は、シーグラスで、なにやら、アクセサリーとか工芸品を作っているとのコト。

車は、曇り空の灰色の海を左手に、走る。

海を見るのは、久しぶりだ。
そう言えば、ヒロキや、ユキちゃんと来たのも
もしかすると、このあたりだったのかもしれない。

ユキちゃんと2人だけで、
話せたのは、結局…
湘南の海
あの夜だけ。

遠い記憶。
あれから、たくさんの時間が過ぎた。
たくさんの、たくさんの時間…
いやになるくらいたくさんの時間。
10年はひと昔。
確かにそのとおりだと思う。

「ねぇ、アイダさん。
今、浜辺が見えてるでしょ。
あそこの浜辺で、シーグラスを拾ってくるの。

シーグラスっていうのは、
河から流れてきたガラスや、
波に飲み込まれた瓶が、
たくさんの時間をかけて、
海底で、波に洗われて、角をなくして
小さな石のようなカケラになるのよね」

ここでBGM、スタートしたく思います。


「たくさんの時間って…?」
「そう、短いのは、5年、長いのは10年以上。
そして、
それに魔術をかけて、アクセサリーをつくるの」

「魔術?」
やっぱり、彼女は魔女だったのか?

「アハハハ、冗談よ」
Mさんは、さらっと、とんでもない事をいう。
そうだよな、もちろん、冗談に決まってる。

長い、長い時間かぁ…。

車は、やがて、アトリエに着いた。

所狭しと、
アチコチにシーグラスが、置かれている。
海で角を削られ、石のような曇ったガラスのカケラたち。

それから、できあがった作品、
アクセサリー
工芸品
貼り絵のようなものとか…。

そのとき、突然、
声が聞こえたような気がした。

「ねぇ、アタシを見つけて」

微かな、微かな…声。
ん、なんだ今の。
Mさんの声じゃなかったような気がする。

「アイダさん、見て、ほら。
この薄い緑色のシーグラスは、コーラの瓶。
で、茶色のこれは、きっとビール。

それで、
これが、まだ5年くらいかなぁ。
まだギザギザがあるでしょ。

こっちは、10年以上。
丸くなって角が取れてるよね」

「ホントだ」
と言おうとしたら、

「鈍感なアイダくんは、アタシを見つけるのは、無理よねぇ…」

またまた、微かに、声が聞こえてきた。
Mさんの声ではない。
気のせいではないみたいだ。
ん、鈍感とか、言ってなかったか?

ボクは部屋を見渡した。
そして、見つけた。

机の上、
たくさんのカケラたちの中に
1つ、
どうしても気になるガラスのカケラがあった。

10年以上、海の底を漂ったのか、
丸みを帯びたカケラ…。

そのカケラは、何かをボクに伝えようとしてる。

ボクはそのカケラを指差し、Mさんに聞いてみた。

「ねぇ、Mさん、
この青っぽいヤツなんだけど
昔はなんのガラスだったんですか?」

「うん、これは、きっと、ワインの瓶だと思う」

そのカケラは、また、語りかけてきた。

「ねぇ、アタシに触れて…」

なんだぁ。
気のせいじゃないみたいだ。
今度ははっきり聞こえた。

〔to be continue〕

どもです。Kiriです。

フィクションです。
続きの4回めです。
1回めは↓


今回も、BGMを聴きながら、お読みいただければ嬉しいです。
cranberries when you're gone


やがて季節は本格的な冬を迎える。
ボクは、あいかわらずの生活を送っていた。

バイト帰り、久しぶりにヒロキの店に寄ってみた。
まだ、夜が始まったばかりなのに
ヒロキは店をかたづけていた。

「やぁ」

振り向いたヒロキは、様子がおかしかった。
顔色が悪い。

「どうしたの。
まだ8時ちょっと過ぎなのに…。
もう今日は、閉めちゃうの?」

「うん。
それどころじゃなくなった。
さっき、ユキちゃんの学校の友だちだっていう女性が来たんだけど…」

嫌な気がした。

「悪いニュースをもってきた。
ユキちゃん、故郷(くに)で
交通事故に巻き込まれたらしい」

「えっ、それで、
それで、ユキちゃんは、どう?」

「うん…。
あのな…」

ヒロキは怒ったような顔をした。

「ダメだった…らしい」

いったい何を言っているんだろう、ヒロキは。
ボクには、理解できなかった。

ダメだった…。
どういうこと?

徐々に意味が、頭の中で形になっていく。

うそだろ。
ユキちゃんが、交通事故にあった。
そして…。

ヒロキの辛そうな表情。
何も言わない。
ホントにそうなのか。
うそだろ。

ボクは信じたくなかった。
信じない、絶対に、信じない。
信じない。
そんなコトがあるはずがない。

ヒロキから、その話を聞いたあと、
ボクはどうしたのか、まるで、憶えていない。



約束した卒業式の日、
ボクはユキちゃんの学校に行ってみた。
校門の前で、ボクは、彼女を待つ。

卒業式が終わったみたいだ。
たくさんの人たちが
校門から出てくる。

幸せそうな顔
幸せそうな顔
幸せそうな顔、顔、顔…。

でも、その中に
ユキちゃんを見つけることはできなかった。

校門から出てくる人数がまばらになっていき
ついに途絶えた。

最後にユキちゃんが
ひとりで出てくるかもしれない。
そう、笑いながら…。

胸が痛い。
そんなコト、ありえない。
それでも、離れられなかった。

なぁ、ユキちゃん
母さんのこと
1人にしないつもりだったんじゃないのか。

なぁ、ユキちゃん
大切な人には、会えてないんだろ
…まだ。

月明かりの下
海に飲まれた瓶のことが頭をよぎった。
あの瓶は、海を越え、アメリカに行き、
そして、何が書いてあるのか決して理解できない人に拾われなくてはならない。
そうすれば、ユキちゃんの願いがかなう。
大切な人に会える。

それは
ボクでは
決して
ないんだけど…

そこで、ふと思った。
もしかすると、大切な人って…。

でも…

そんなコトは、どうでもいい。
ユキちゃんはもういない。

「ねぇ
また、会えるよね」
ユキちゃんの声が聞こえた気がした。

鼻の奥がツンとなった。
ボクは、駅へと歩き出す。
もうすぐ、冬は終わる。

〔to be continued〕

まだ、終わらないのです。
続きます。
最後までお読みいただけると嬉しいです。

こんばんは、kiriです。

さぁ、続き物、3回め。
この話、実は去年、アップしてるんだけど
読み直すと、粗かった。
なので、さっきまで、
必死に書き直してた。

さぁ、フィクションです。
行きます。

前回の話は、こちらからどうぞ。



でもって、BGM スタート

suzy bogguss  someday soon


ヒロキの車で、みんなで海に行ったのは秋。
まだ夏の匂いは少しだけ残ってた。
季節は、移ろっていく。

冷たい風が吹き始め
街は、灰色に姿を変えていく。

学校の授業はほどほどに。
ボクは、あいかわらず、バイトに追われていた。
バイトから戻り
部屋の鍵を開けてるとき
電話が鳴りだした。
慌てた。
急いで部屋に入り電話に出た。

「鈍感なアイダくんは、いますかぁ」

明るく、とぼけた声がした。

「はい」
慌てていたので、思わず、答えてしまった。

「おお、ハイだってさ…アハハハ
アタシよ、アタシ、ハハハハ、
アタシのこと、誰だかわかる」

声を聴けばもちろん解る。
でも予想してなかったので
ボクはすぐ反応できなかった。

「あぁ、わかんないンだ。
やっぱりアイダくんは鈍感だぁ。
自分で、今、しっかりと返事したぞぉ…。
鈍感なアイダくんって言ったら、ハイって、言ったぞぉ」

そこを突いてくるのか…。

「わかってるよ、もちろん。
もちろんさ。
ユキちゃんだろ」

今夜のユキちゃん、やたらテンションが高い。

「ユキちゃんさ、酔ってんだろ。
なんか、呂律が回ってないかも」

「うん…。
呂律回ってないか。
ちょっと、酔ってるかも」

ちょっとじゃないと思う。

「なんか、素直だな。
どした、どした。
で、誰と飲んでんだ」

素直なユキちゃんは、かわいい。
素直じゃなくてもなんだけど。
そして、やっぱり気になる。
誰と飲んでるんだろ。

「今ね、職場の同僚と飲んでる。
でね、つまんないんだ。
それで、ちょっと抜けて
アイダくんに電話した」

「え~、職場の同僚って?
いつ就職したんだよ、ユキちゃん。
で、いいのか、戻らなくて?」

「いいよ、いいよ、全然問題ないよ。
ミンナ、酔ってるんだ。
私1人、いなくなっても、わかんないよ、きっと。
トイレ行ってくるっていって、外へ出てきた」

電話の後ろに街の喧騒が聞こえた。
ユキちゃん、魅力的だモンなぁ。
なかなか戻らないって
気にしてるヤツが間違いなくいるにちがいない。

まぁ、いい。
それから、ボクは、彼女の事情を聞きだした。

ユキちゃんは、来年卒業。
イメージと違って以外と真面目なんだなぁ。
単位は、ほとんど去年のうちに取ってしまったらしい。
ボクとまるでちがう。

彼女は
故郷のとある会社に就職が決まった。
今、その会社で、
先行してバイトしてるらしい。

「ユキちゃん、いなかに帰っちゃうのか?」

「うん、母1人子1人だから…。
母さんのこと、ほっとけないよ」

「そうか…」

季節は移ろっていく。

ユキちゃんの自由な季節は、そろそろ終わりを迎える。
ボクは、そのことをしっかりと理解してる。

ユキちゃんより、ボクは1つ年下。
一足先に、彼女が、社会へと出ていく。

「ねぇ~。アイダくん、何しんみりしてんのさ。
卒業式は、アタシ、出るよ。
そのときはさ、東京に行く。

また、会おうね。
ね、ね、アイダくん…」

「解った。
絶対にそうしような…」

「うん、絶対に、絶対に
そうしよう」

それから、ボクたちは、なぜか黙ってしまった。
ユキちゃんの鼻をすする音。
ユキちゃんの街はここより寒いんだろうか。

「アイダくん、ゴメン。
最後の100円玉。
そろそろ切れちゃうかも。

ねぇ
また、会えるよね」

受話器の向こうから頼りない声。

「うん」

「またね。ねっ」

「また…」

プツッ
ツー ツー ツー

ボクは、しばらく、信号音を聞いていた。
人は、ずっと同じ場所にいられない。
さびしかった。

冬が終わるころ…
また、ユキちゃんと会う。
でも
その日は、
来ることはなかった。

〔to be continued〕



平和な日が世界にもどりますように。

祈り tanuki & kitsune project featuring reiko tajima
photo by Sara



どもです。kiriです。
フィクション、2幕の2回め
今回はいきなりスタートです。

で前回は↓



BGMスタート。
できましたら、聴きながら読んでください。
この曲、多分テーマ…なのかも。

j.d.souther you are only lonely


真夜中の海。
波間に浮かぶ月に向かって、ボクたちは歩いた。
けど、歩いても、決して月まで、たどり着けない。
月は、距離を縮めてくれない。

「ねぇ、アイダ君。もういいよ、このへんで。
月までは、無理みたい」

ヒロキたちの声はもう聞こえない。
ずいぶんと歩いてしまった。

「うん…。

聞きたいコトがある。
あのさ、大事そうに抱えてるのなんだ?
ユキちゃん、何をもってるの?」

「アレ、アイダ君、知ってたの?」

「そりゃ、わかるよ、
しっかりと大事そうに、もってるんだもん」

「アハハハ、ばれてたか。
隠してたんだけどさ」

隠せてなんかまったくない。
Tシャツの下が
しっかりと膨らんでたじゃん。
そして、宝物みたいに、しっかりと。

「まぁ、いいよ。教えてあげる。
ワインの瓶」

「そんなモンどうするの」

「うん、
中に手紙が入ってる。
海に向かって投げる。
そしたら、ドンブラコ、ドンブラコ、この瓶は旅をする。
そして、遠い遠い、アメリカまでたどりつく。
たどり着いてさ、
誰かに拾われたら、
アタシの願いがかなう」

「なに、お伽噺みたいなコト、言ってんのさ」
「アハハハハ…」
「子どもみたいなヤツだな」

「悪かったな、アイダ~、オマエに言われる筋合いはないぞ」

ユキちゃんは、
ちょっと怒ったように、
おどけて、乱暴にそう言いはなった。

「手紙入ってるのか」
「うん」
「何書いたの?
願いって何?」
「うん…」

「アメリカ人、読めるのか?」
「うん、読めないと思う。日本語で書いた」
「じゃあさ、意味ないじゃん」

「うん、でも、いいの、読めない方がいい。
恥かしいこと書いちゃった」

そう言って、ユキちゃんは、黙っちゃった。

どうしちゃったんだろう、ボクは。
なんか、ユキちゃんがまぶしい。
青い月がユキちゃんを照らす。

「何書いたんだか、教えてくれない」

知りたかった。

「やだ。ナイショ」

世界は波の音だけ。

「アイダ君さ、投げてくれない、この瓶。
アイダ君が、投げたらさ、
きっと
きっと、
アメリカに着くような気がする」

「何書いたんだか、教えてくれたら、投げてもいい」

「あ~、アイダ~、
なんだぁ、オマエ、交換条件を出すかぁ…。

まぁ、いいか…。
でも、なんか、恥かしいな。
でも、いいよ。
教えてあげる。

また、大切な人に会えますようにって…」

「あっ、ユキちゃん、失恋でもしたか?
で、また、その彼に会いたいって…」

ボクは嫉妬してるなぁ…。
多分。
いや、きっと。
誰だ、大切な人って。

ボクは、哀しくなった。

真夜中の月、
なぁ、月よ、かなえてくれ。
狼男が羨ましい。
でも、ボクは、
絶対に、狼男になれない。

「こら、アイダぁ~、茶化すなぁ~。
だから、だからさ、アイダぁ~。
オマエはダメなんだ。

鈍感、このヤロー。
やっぱり、アイダは、鈍感なヤツだ」

ユキちゃんは、
またまた、乱暴な口調でそう言うと、
どういう訳か、だまってしまった。
なんとなく、バツが悪くて…。

彼女が大切そうに抱えてた瓶を、
ボクは乱暴に剥ぎ取り、

「わかった。投げる」

コルクの栓は、うん、ダイジョブ。
これなら、海の波にもまれても、外れないだろう。

思い切り、
海に向かって投げた。
瓶と一緒に大切なモノを、
ボクは投げてしまった気がした。
投げずに自分でしっかり、もってればな…。

でも、投げちゃった。

〔to be continued〕