魔法の呪文をふりかけて…ポンポコ コンコン -14ページ目
どもです。kiriです。
フィクション、2幕の2回め
今回はいきなりスタートです。

で前回は↓



BGMスタート。
できましたら、聴きながら読んでください。
この曲、多分テーマ…なのかも。

j.d.souther you are only lonely


真夜中の海。
波間に浮かぶ月に向かって、ボクたちは歩いた。
けど、歩いても、決して月まで、たどり着けない。
月は、距離を縮めてくれない。

「ねぇ、アイダ君。もういいよ、このへんで。
月までは、無理みたい」

ヒロキたちの声はもう聞こえない。
ずいぶんと歩いてしまった。

「うん…。

聞きたいコトがある。
あのさ、大事そうに抱えてるのなんだ?
ユキちゃん、何をもってるの?」

「アレ、アイダ君、知ってたの?」

「そりゃ、わかるよ、
しっかりと大事そうに、もってるんだもん」

「アハハハ、ばれてたか。
隠してたんだけどさ」

隠せてなんかまったくない。
Tシャツの下が
しっかりと膨らんでたじゃん。
そして、宝物みたいに、しっかりと。

「まぁ、いいよ。教えてあげる。
ワインの瓶」

「そんなモンどうするの」

「うん、
中に手紙が入ってる。
海に向かって投げる。
そしたら、ドンブラコ、ドンブラコ、この瓶は旅をする。
そして、遠い遠い、アメリカまでたどりつく。
たどり着いてさ、
誰かに拾われたら、
アタシの願いがかなう」

「なに、お伽噺みたいなコト、言ってんのさ」
「アハハハハ…」
「子どもみたいなヤツだな」

「悪かったな、アイダ~、オマエに言われる筋合いはないぞ」

ユキちゃんは、
ちょっと怒ったように、
おどけて、乱暴にそう言いはなった。

「手紙入ってるのか」
「うん」
「何書いたの?
願いって何?」
「うん…」

「アメリカ人、読めるのか?」
「うん、読めないと思う。日本語で書いた」
「じゃあさ、意味ないじゃん」

「うん、でも、いいの、読めない方がいい。
恥かしいこと書いちゃった」

そう言って、ユキちゃんは、黙っちゃった。

どうしちゃったんだろう、ボクは。
なんか、ユキちゃんがまぶしい。
青い月がユキちゃんを照らす。

「何書いたんだか、教えてくれない」

知りたかった。

「やだ。ナイショ」

世界は波の音だけ。

「アイダ君さ、投げてくれない、この瓶。
アイダ君が、投げたらさ、
きっと
きっと、
アメリカに着くような気がする」

「何書いたんだか、教えてくれたら、投げてもいい」

「あ~、アイダ~、
なんだぁ、オマエ、交換条件を出すかぁ…。

まぁ、いいか…。
でも、なんか、恥かしいな。
でも、いいよ。
教えてあげる。

また、大切な人に会えますようにって…」

「あっ、ユキちゃん、失恋でもしたか?
で、また、その彼に会いたいって…」

ボクは嫉妬してるなぁ…。
多分。
いや、きっと。
誰だ、大切な人って。

ボクは、哀しくなった。

真夜中の月、
なぁ、月よ、かなえてくれ。
狼男が羨ましい。
でも、ボクは、
絶対に、狼男になれない。

「こら、アイダぁ~、茶化すなぁ~。
だから、だからさ、アイダぁ~。
オマエはダメなんだ。

鈍感、このヤロー。
やっぱり、アイダは、鈍感なヤツだ」

ユキちゃんは、
またまた、乱暴な口調でそう言うと、
どういう訳か、だまってしまった。
なんとなく、バツが悪くて…。

彼女が大切そうに抱えてた瓶を、
ボクは乱暴に剥ぎ取り、

「わかった。投げる」

コルクの栓は、うん、ダイジョブ。
これなら、海の波にもまれても、外れないだろう。

思い切り、
海に向かって投げた。
瓶と一緒に大切なモノを、
ボクは投げてしまった気がした。
投げずに自分でしっかり、もってればな…。

でも、投げちゃった。

〔to be continued〕

どもです。kiriです。

さぁ、改めてのアップ。
コメント欄で
続きを読みたい、とのコメント。
嬉しかったなぁ。

多分、それから8か月後の話になるのかと。

ヘタクソなフィクションですが
前回のブログの続きです。

よろしかった読んでいただけると嬉しいです。

━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─

今夜は、遠い遠い日の話…。

その前にさ…、ちょっとした秘密をばらす。

ナイショなんだけど、さ。
実はさ、オイラ、
超能力者なんだ。

つい先日、オイラは魔女に会った。
その魔女は、決して恐くなく
チャーミングな女性だったんだけど、さ。

で、
オイラは、
その日から超能力者になっちまった。

シー。
聞こえたらまずい。
バレたら、狙われる。

えっ、誰にかって?

もちろん
世界征服をたくらむ組織にさ。
超能力者は、
あまりこの世に存在しないから、
彼らは、なんとしても、超能力者を手に入れたくて仕方がない。

ヤバイ、ヤバイ。

と、
今日は、
チトさ、オイラをやめて、ボクで書かせてもらおうと思う。

えっ、似合ってないって?
そんなコト言うなって。
オイラにだってさ、そんな日々があった。
ホントだぞ。

で、BGM。
今回は悩んだ。
ワンパターンだけど、オイラは、これにしようと思う。

よかったら、聴きながらお読みください。
トップローダー ダンシング イン ザ ムーンライト



あの遠い日は秋。
秋から冬に移行する時期に、チョットだけ顔を見せる穏やかな日々。

ボクらは
サイコーに自由だった。
ホントに…
自由だった。

あの街にあったヒロキのお店。
路上の、フェルト布の上の小さなアクセサリーショップ。

22時半。
バイト帰りに、よってみた。

「やぁ、アイちゃん。
今夜、ミンナで、海へ行くからイッショに行かないか」

そして、23時、彼は店をたたみ
ボクらは、海へと向かった。
ヒロキのオンボロワゴンで…ミンナで。

「今日は誰が、隠れる」
「ジャンケンだぞ」
「恨みっこなしなぁ」

「ジャンケンポン!」
「アハハハ、一発で決まったジャン」

「ちぇ~、アタシかぁ…」

ユキちゃんだった。
あっけなく決まった。

今となれば、もうすでに時効の話。
4人がけの後部座席に5人。
定員オーバー。
1人だけ、足元に丸くなり隠れる。
外から見えないように。

「今日はアイダ君ントコ…」
その日、彼女は、
どういうわけか、ボクを選び、
ボクの目の前で丸まって、

「ネコだぞぉ~」
おどけて見せた。

ネコより全然かわいい、ボクは、あのとき、そう思った。
言葉になんて、もちろん、出せなかったけど、
でも、心からそう思った。

「ユキちゃん、まだ、速いよ。
ヒロキがさ、隠れろって言ってからでいいよ」

「そうなの、速かったのかな」
それから、ユキちゃんは
ボクの顔をみて、笑った。

若かったよな、あの頃、
今思い出す、チョット痛みをもって。

疲れなんて知らなかったし…。

真夜中から朝まで…
朝日が昇るまで
浜辺で、
仲間たちと、酒を飲み、騒ぎ、たわいのない話をする。

ホント、困った日々だった。
でも、自由だった。

あのころの、ボクらの名誉のために余計なコトだけど、
書いておく。
帰りの運転は、
酒を全然飲まない、イワちゃんがした。
余計なコトだけどさ、ホント。

湘南の海。
みんなのマトメ役だったジュンの温厚な笑顔。
「さぁ、焚き火しようか」
懐かしいよ、ヤツは、優しいヤツだった。
ジュンの笑顔。サイコーだった。

それからボクたちは、砂浜の一角を陣取って、
酒を飲みはじめた。
ヒロキのギターであの頃流行っていた歌を大声で歌った。

波の音を聴きながら…
空には、青い月。

酔ってほてった頬に、
海からの風が気持ちいい。

ふと、気づくとユキちゃんが、トナリにいた。
耳元で、小さな声で、
「ねぇ、アイダ君、
ちょっと、アタシにつきあって…。
波打ち際に行こうよ」

そう囁いた。

「うん…」

けど、ミンナ、盛り上がってるのに、
2人だけで、行きづらい…。

「ちょっと、波と戦ってくるよ。
悪い、ちょっとだけ、行ってくる。
おい、ユキちゃん、チト、つきあえ」

ボクはそう、なるべくさりげなく、仲間たちに告げると、
ユキちゃんと2人、波打ち際を目指した。

「ねぇ、ちょっと遠いけど、あそこまで行こうよ」

ユキちゃんは、月明かりの海を指差した。

空には、青い月。
歩くほど、仲間たちの声は、遠くに
そうミンナの、笑い声が聞こえて…
そして波の音だけ。

歩いても、歩いても、
ユキちゃんが指差した月明かりの海は逃げていく。

あの遠い日は秋。
秋から冬に移行する時期に、チョットだけ顔を見せる穏やかな日々。

ボクらは…
サイコーに自由だった。
ホントに自由だった。

でも、自由な日々、そんな日々は長く続かない。
かりそめ。

たとえ、かりそめであっても、輝いてた日々。

〔to be continue〕

ここまで、読んでいただき
ありがとうございます。
どもです。Kiriです。

どうしたことか
9回めまで来ちゃった。
書いてるうちに、
ダンダンダン
長くなり
でもって、
ダンダン段々と
照れくさくなってきた。

行くぞぉ~、最終回。
照れくささ、MAXのまま。

↓こちらから続いてます。





いつものように
音楽、聴きながら、お読みいただけると嬉しいです。

と、オイラが、読ませてもらってるブログの大切な仲間の
弟さんが、コロナになっちゃったみたいだ。
メッセでエールを送ったんだけど
メールバックとか気を使わないでほしい。
オイラのコトなんか、気にしないで
自分の時間、大切に使ってほしい。
心から思います。

さぁ、BGMスタート。
本来なら、
山下達郎の「クリスマスイブ」なんだろうけど
まぁ、いいや。

j.d.souther you're only lonely


ホームから2階の改札口に階段をのぼる。
さぁ、どっちに降りようか。
南口に行くか、北口に行くか。

北口は、アパートへ。
南口は、遠回りになるけど、コンビニがある。

傘、買うか。

ポケットに手を入れ、財布に触れる。
触れた瞬間、すぐにわかった。
明日の交通費…。
危ないな。

選択枝はない。
北口だ。

北口へ降りる階段を下りた。
そして、屋根がある北口の出口で立ち止まった。

終電、案外、人がいるな。
傘をさして、颯爽と歩きだす人たち。
カバンを頭にかざし、雨の中を急ぎ足で立ち去る人たち。
様々だ。

どうしようか。
考えてるうちに、取り残された。
しばらくすると、階段を下りてくる足音。

「悪いねぇ。時間なんで、シャッターを閉めるよ。
まだ、そこで、雨宿りしてていいから」
駅員さんに声をかけられた。

「ありがとうございます」

シャッターがおり、ホンの少し突き出た屋根の下。
小さな小さなスペースにボクは立って雨を見ていた。
雨に手をかざす。

冷て。

これは、明日の朝には、雪になるかもしれない。

左前にある小さな神社が目に入った。
今日は、厄日だなぁ。

バイトで、ヘトヘトに疲れ
ユキちゃんを自分勝手に待って…
最後は冷たい雨に降られて。
そして今夜はあまり眠れない。

このくらいの雨なら
多分、コートが濡れるだけだ。
きっと下まで、雨は沁みてこない。

行こうか。

その前に、神社に行って手を合わそう。
真夜中だけど、かまいやしない。
鈴を鳴らさなければ。

冷たい雨…。

ボクは誰もいない神社に入り手を合わす。
明日は、ついてますように。

それから、歩きだす。
冷たいなぁ。
顔に、雨が落ちる。
容赦ない。
ボクはポケットに手を突っ込み
ゆっくりと歩き始めた。

このくらいの雨、なんてことない。
そうだ、胸を張って歩こう。

冷たい雨の中、
アパートまで歩いた。
何も胸を張らなくてもいいのかな、
猫背気味のほうが濡れないかも。
そんなコトを考えながら。

明日の朝には、きっと雪になってるにちがいない。



あの頃…
雨が降っても、傘をささないで平気だった。
びしょ濡れ、流石に冬はきつかったけど。
よく雨の中、傘もささずに、歩いたっけ。

そして、あてもなく
人を待った記憶。
バカなコトと言えば、バカなコトなんだけど。
ストーカーに近いのかも、そうも思うけど。

ボクがこれまで生きてきて
たった2回だけ。

1回めは、この日のユキちゃん。

それから…
2回めも、ユキちゃん。
彼女が卒業する日だった。

絶対に来ないというのはわかってたんだけど
ボクは、どうしても、待ちたかった。
来るかもしれない。

ないな、それは、絶対に。
わかってた。
でも、待ちたかった。

遠い遠い、輝いてた日々。
ユキちゃんはもういない。
そして、ボクも変わってしまった。

〔end〕

━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─

「ニッポンで一番冷たい雨の歌」
そうタイトルをつけ、
山下達郎のクリスマスイブに落とそうと思って書き始めたんだけど
風呂敷を広げすぎちゃった。

まとめが、どうしても
うまく落ちない。
どうしよう。思い切り悩んだ。

そうか、物語みたいなの、やっちゃうか。
目先を変えて。

で、物語みたいなのを書き始めた。
そして、書いてるうちに気づいた。

これって、去年、ブログに載せた
「あの夜の彼女の瓶は、海の涙となって」
のプロローグになるじゃんて…。

去年、読んでいただいた方もたくさんおられると思います。

が…
改めて、再掲載しようと考えてます。

それにしても、物語みたいなモノ、書くってのはホント、大変だ。
小説家って、すごいと思う。

━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─

明日は
穏やかな日が世界にやってきますように。

祈り tanuki & kitsune project featuring reiko tajima
photo by Sara


この音楽のお問い合わせは、t&k社 合田まで

2349aidaaidaaida@gmail.com

どもです。Kiriです。

さぁ、続き物。
8回めとなりました。
ここまで、読んでいただきありがとうです。

コメントも、いただき、嬉しいです。
で、コメントバックを書くとき
どうしても、次の展開を書きたくなっちゃう衝動と戦ってます。
ついつい、書きたくなってしまう。
書いちゃったら、大変だモンなぁ。

と、しつこいけど、また、書いちゃいます。
フィクション。
ハクションじゃなく、フィクション。
大きな声で言おうっと。
ヤベ、完璧なオヤジギャグ。
アハハハ、それって身の丈なんだけど
絶対やりたくないオイラ…。

で、いつものように前回。


さぁ、今回も行ってみよう。
よろしかったらBGMを聴きながらどぞ、です。

vonda shepard  i only want to be with you


駅の時計の針は
短い方も、長い方も
両方ともテッペンを超えた。
0:05。
終電まで後、30分か。

まちがえたかな。
地下だった。

ボクは寒い方を選んだ。
ユキちゃんは、暖かそうな地下を選んだ。
そうだよなぁ、たいていの人はそうするよな。
完璧にまちがえた。
そう思ったとたん、急激に寒さを感じた。

ブルルルル。
寒む。

立ち上がり、ちょっと体を動かした。

人の流れをみた。
心なしか、流れが速くなってるように感じた。

金曜日の夜。
明日、休みの人、多いんだろうけど
この時間になると、ミナ、足が速くなるのかもしれない。
気持ちがせかされて、家へと急ぐのかな。

無敵な酔っ払い。
フラフラとマイペース。
やっぱり、彼らは超越してる。

そろそろ、ボクも動こうか。
でも、もし、ユキちゃんがその後、来ちゃったら…。
ボクは、動けなかった。

終電まで粘ろう。
多分、空振りだろうけど。

明日、速いんだったよなぁ。
家に着く時間を想定して
指を折ってみた。

眠れるのは、これだけ。
まぁ、なんとか、なるだろう。

酔っ払いの不幸を超越しちゃった大きな笑い声。
幸せなんだろうな、酔っ払い。
羨ましい。

そろそろ、タイムリミット。

行くかぁ。
そうするしかないだろ。

改札を抜け、
後ろ髪を思い切り引かれながら
終電の一番後ろの車両に乗る。
窓から、ホームを歩く人を見る。

いないかな。ユキちゃん。
ふっ。
いるはずないよな。
それでも、ボクは目で歩く人を追った。



やがて、静かに電車が走り出す。
窓から、街の灯りが見える。

残念。
まちがえたな。

またまたひとりごと。
ホントに今日はひとりごとばかり言ってる。

電車の窓に何かがあたり
形を変え、下に流れ落ちてく。

雨だ。

ひとつ。
また、ひとつ。
また、ひとつ。

間隔が狭まっていき、窓を雨のしずくが覆いつくした。
しずくが流れ落ちる。
街の灯りがゆがんでみえる。
ボクは、その光景を眺めた。

ふっ。
運命、そんなモンなかった。

カバンを確認した。
いつも、入れてあるトコロに、折り畳みの傘は…

ない。
入ってない。
やっちまったな。

やがて、電車はボクの駅に到着する。
ドアが開く。
冷たそうな雨の音が大きくなった。


あの日から
あれから、何年も
たくさんの時が過ぎてしまった。
今もボクはひとり、歩いている。

ユキちゃんの笑顔。
しっかり憶えてる。
そして、ユキちゃんの電話の声。

「鈍感なアイダくんは、いますか」

ユキちゃん、素敵だったな。
サイコーに。
友だちにまでは、なれたのかな。
恋人未満は、絶対だった。

もし、どこかで
ちょこっとだけ、
もしさ、神様がいたら
そして、味方してくれたら


哀しくなるから、考えるのは…

よそう。

〔to be continued〕

追記
〔to be continued〕を書き忘れていました。
続きます。

━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─

明日を祈ります。
人を殺戮すること
踏みにじることだけは
ありませんように。

でも、それって、むつかしいかな。
とにかく、祈ります。

人は大切な存在です。

祈り tanuki & kitsune project featuring reiko tajima
photo by Sara


どもです。Kiriです。

さぁ、今回も行ってみよう。
続きです。

よろしかったら…
前回はヴィアーレにアップしてます。
こちらを先に、読んでいただいたら嬉しいです。
無理のないところで…。





さぁ、フィクション、行くぜ~。
で、で、だ。
オイラは、文章のために
お助け音楽をつける。
聴きながら読んでいただくと
オイラは、ほっとします。

文章だけじゃ、自信がまるでないんだよなぁ。
よろしくです。

改札前のシーンは、エリックカルメンに任せようと思う。

raspberries nobody knows


駅の時計は21:30

たくさんの人が改札へと向かう。
連れだって歩いてる人たちは
楽しそうだ。
笑いながら歩いてる。
とくに、カップル。

羨ましいなぁ。
心から思う。

そして
独りで、歩いてる人たち。

疲れた顔。
思いつめた顔。
なんでもないポーカーフェイス。
世の不幸をすべて背負ったような深刻な顔。
歩きながら、ため息をついてる。

やっと
ニコニコ笑いながら、歩いてきた女性。
いいことがあったにちがいない。

圧倒的に、せつない顔をした人たちが多い。

酔っ払い。
彼らは世の中の不幸を
お酒の力を借りて、超越しちゃってるよな、気がする。
そう、哀しさを忘れるために
お酒を飲むんじゃないかな。

会社員は、会社の愚痴を言うために飲むって
聞いたことがある。
それはそれで、哀しい。

こんな時間に、壁にもたれてるボク。
ひとり、ポツンと。
多分、幸せには、見えないだろうな。

駅の時計は22時を少し超える。
寒む。
息が白い。

来ないな。

まずいコトに気づく。
ユキちゃんは、ヒロキのところへ寄り道をする。

「さっきまで、アイちゃんがいたんだけど
明日、速いみたいで、帰っちゃったよ。
ユキちゃん、残念だったな」

ヒロキの声が聞こえるようだ。
ユキちゃんは、残念そうな表情をしたんだろうか。

ってコトは
ボクがここにいて、ユキちゃんとあったら…。
ユキちゃんは、不思議に思うにちがいない。
帰ったはずのボクがここにいる。
それは、変だ。

もしかすると…
ボクは、ストーカーって思われちゃうかも。
それは、まずい。
最低だ。
言い訳を考えないと。



22:52。もうすぐ11時。
寒む、サイコーに寒む。

来ない。来ない。
地下だったかな。
まちがえたかも。

「シッシュー」

閉店したデパートのシャッターの前で
ヒロキと同じように
いつも椅子に座って詩集を売ってる女性の声が聞こえる。
元気なその声も
なんとなく遠くで霞んで聞こえる。

彼女と話したことは何度かあるんだけど
まだ、読んだ事はない。
彼女は、一体どんな詩を書いてるんだろうか。
読んでみたいなと、思った。

きっと、哀しさをつづっているような気がする。

ユキちゃん。
改札は地下だったかな。
ボクはまちがえたかもしれない。

疲れはピーク。
ボクは壁から
ずり落ちて
ストンと、腰を降ろす。
そして膝をかかえ、またまたひとりごと。
「寒む」
今日は、ホント、ひとりごとが多い。

━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─

明日の世界が
平和でありますように。

祈り tanuki & kitsune project featuring reiko tajima
photo by Sara