フィクション、2幕の2回め
今回はいきなりスタートです。
で前回は↓
BGMスタート。
できましたら、聴きながら読んでください。
この曲、多分テーマ…なのかも。
j.d.souther you are only lonely
真夜中の海。
波間に浮かぶ月に向かって、ボクたちは歩いた。
けど、歩いても、決して月まで、たどり着けない。
月は、距離を縮めてくれない。
「ねぇ、アイダ君。もういいよ、このへんで。
月までは、無理みたい」
ヒロキたちの声はもう聞こえない。
ずいぶんと歩いてしまった。
「うん…。
聞きたいコトがある。
あのさ、大事そうに抱えてるのなんだ?
ユキちゃん、何をもってるの?」
「アレ、アイダ君、知ってたの?」
「そりゃ、わかるよ、
しっかりと大事そうに、もってるんだもん」
「アハハハ、ばれてたか。
隠してたんだけどさ」
隠せてなんかまったくない。
Tシャツの下が
しっかりと膨らんでたじゃん。
そして、宝物みたいに、しっかりと。
「まぁ、いいよ。教えてあげる。
ワインの瓶」
「そんなモンどうするの」
「うん、
中に手紙が入ってる。
海に向かって投げる。
そしたら、ドンブラコ、ドンブラコ、この瓶は旅をする。
そして、遠い遠い、アメリカまでたどりつく。
たどり着いてさ、
誰かに拾われたら、
アタシの願いがかなう」
「なに、お伽噺みたいなコト、言ってんのさ」
「アハハハハ…」
「子どもみたいなヤツだな」
「悪かったな、アイダ~、オマエに言われる筋合いはないぞ」
ユキちゃんは、
ちょっと怒ったように、
おどけて、乱暴にそう言いはなった。
「手紙入ってるのか」
「うん」
「何書いたの?
願いって何?」
「うん…」
「アメリカ人、読めるのか?」
「うん、読めないと思う。日本語で書いた」
「じゃあさ、意味ないじゃん」
「うん、でも、いいの、読めない方がいい。
恥かしいこと書いちゃった」
そう言って、ユキちゃんは、黙っちゃった。
どうしちゃったんだろう、ボクは。
なんか、ユキちゃんがまぶしい。
青い月がユキちゃんを照らす。
「何書いたんだか、教えてくれない」
知りたかった。
「やだ。ナイショ」
世界は波の音だけ。
「アイダ君さ、投げてくれない、この瓶。
アイダ君が、投げたらさ、
きっと
きっと、
アメリカに着くような気がする」
「何書いたんだか、教えてくれたら、投げてもいい」
「あ~、アイダ~、
なんだぁ、オマエ、交換条件を出すかぁ…。
まぁ、いいか…。
でも、なんか、恥かしいな。
でも、いいよ。
教えてあげる。
また、大切な人に会えますようにって…」
「あっ、ユキちゃん、失恋でもしたか?
で、また、その彼に会いたいって…」
ボクは嫉妬してるなぁ…。
多分。
いや、きっと。
誰だ、大切な人って。
ボクは、哀しくなった。
真夜中の月、
なぁ、月よ、かなえてくれ。
狼男が羨ましい。
でも、ボクは、
絶対に、狼男になれない。
「こら、アイダぁ~、茶化すなぁ~。
だから、だからさ、アイダぁ~。
オマエはダメなんだ。
鈍感、このヤロー。
やっぱり、アイダは、鈍感なヤツだ」
ユキちゃんは、
またまた、乱暴な口調でそう言うと、
どういう訳か、だまってしまった。
なんとなく、バツが悪くて…。
彼女が大切そうに抱えてた瓶を、
ボクは乱暴に剥ぎ取り、
「わかった。投げる」
コルクの栓は、うん、ダイジョブ。
これなら、海の波にもまれても、外れないだろう。
思い切り、
海に向かって投げた。
瓶と一緒に大切なモノを、
ボクは投げてしまった気がした。
投げずに自分でしっかり、もってればな…。
でも、投げちゃった。
〔to be continued〕



