4/13 Music bar SORa、羽地直子(vo、p)ライブ。数曲に参加のゲストは大山大吾郎(カホン)。

 

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 なんばSORaは羽地直子さんお気に入りのホームグラウンド。素朴なごつい木のテーブル、カウンターに囲まれた空間はアーリー アメリカンな世界観。ガンボやキャットフィッシュフライなど本格的なアメリカ南部のソウルフードも提供され、ブルースやゴスペルが似合いそうな雰囲気がいっぱい。羽地さんはイギリス留学時代に音楽の道を志され、現地でゴスペルチームに参加されたそうです。声量や美声などはもちろん、英語の有名曲のカバーもさすがのものがあり、一聴して「只者じゃない!」と感じさせてくれる凄さがあります。多くのアーチストのカバーで聴き慣れているはずの有名曲が、羽地さんの見事な歌によってまた、その深い魅力を輝かせるー 毎回そんな体験を与えてくれる羽地さんライブです。「実力派ボーカル」という言葉、安易に使いたくないのですが羽地さんを紹介する文章ではよく見かけるのも納得です。


 さて、本日のライブは羽地さんのオリジナルの中でも、今までちらっとしか演らなかった曲をあえて一気にやろう!という怒涛のオリジナル披露ライブ。渾身のピアノ伴奏にも迫力のある“初恋“、突き刺さる様な鋭いブルース風ボイスの三拍子曲“ジキルとハイド“、思い切りのいい転調が仕掛けられていて疾走感がたまらない“ワンダフル ワールド“、アンセムを思わせる様な清らかな“美しい人“とどれもPOPSの枠の中で、それぞれに全く異なる趣向が活かされていてとても楽しく、また印象深く聴かせて頂きました。自分の手くせや得意分野で曲作りをするのではなく、様々な音楽的素養が無理なく落とし込まれてる!と興味つきないステージ。実は、抜群に歌唱力のある羽地さんなので「自分でピアノを弾かず誰かに伴奏してもらってもいいのに」と僕個人は少々意地悪な印象も持った事もありました。ところが、こうして羽地さんのオリジナルを聴いていると工夫を盛り込んだピアノ伴奏も実に効果的で、ピアノを弾く/ 聴かせてくれる楽しさがいっぱい。「やはり羽地さんとピアノは切り離せない」と反省。例えば「キャロル キングが演じるオリジナルはピアノなしでは考えられない」 ー 今は羽地さんにも同じ印象を抱いており、今日のオリジナル曲たちもまた是非聴かせていただきたいです。

 「深い川にかかるかすかな細い一本道、それを渡るかどうかを決めるのは誰でもない、君なんだと思う」とは“ワンダフル ワールド”の一節(←僕の聞き覚えなので少し間違ってるかも?)ですが、自身の心の弱さや迷いなども含めて身近な情景を正直に見つめる視線から、一歩進んで奥深い確かな優しさへと導いてくれる、羽地さん作の歌詞にはそんな言葉が込められていて胸にグッと来ます。今日のライブ、2ndのいいタイミングで歌ってくれたシングルリリース曲“純愛”もまた、失恋ソングなのに終わってしまった恋愛体験をしっかりと前向きにとらえて心に留めようとする歌。泣かされそうになる歌詞とノリがよくってすごくカッコいいメロディに夢中になって、何度でも聴き返したくなる様な充実作です。純愛って何だか説明できますか?なかなか難しいのに、この曲は純愛という言葉を全く使わずして「ああこれが純愛だ!」と納得させてくれて、爽やかな感動に包まれます。

 

 

 2ndステージではJazzスタンダードも歌われ、“What a diffarence a Day Made”はダイナ ワシントン以来のスローバラードスタイル。恥じらいの様な慎ましさに始まり、自分の感情の起伏を力強く歌いあげるに至る様はまさしく恋の始まりの歓喜そのもの。ミュージカル「The Greatest Showman」のクライマックス曲 “This is me”はやはり大曲で、まるでミュージカル スターの様な声量で堂々とした歌唱を披露。ピアノを弾きながらこんなに力強く歌える人、ちょっといないと思います。というか、そもそも弾き語りの人がこんな曲演るでしょうか?羽地さん曰く「ミュージカルの映画を見て感動したから」とのきっかけだそうですが。ゲストの大山大吾郎さんのカホンも想定越えの高速連打を交えて絶妙に絡み、歌とピアノとカホンという最小の編成にもかかわらず演じられるクライマックスには息を呑む感動を与えてもらえました。羽地さんのオリジナル曲だけでも充分聴きごたえがあるのですが、それだけでは収まり切らない歌唱力をこれらのカバー曲で見せつけてもらえました。

 

 

 

 とは言え、羽地さんの歌はショーの中の声量パフォーマンスとは別物。声量やシャウト、声色やフェイク、得意な一音だけ強調などの小技にはあまり頼らずクセのない声で原曲メロディを大切に、真っ直ぐ歌っていくスタイルだと思います。その意味で、アメリカならDonny Hathaway、日本なら吉田美和などはきっと羽地さんもリスペクトされてるのでは。クセのない声とはつまり、キラキラの美声やバリバリの響きまくり、ではなくて一見地味に見えるかもしれませんが、羽地さんの場合は「耳触りのいいかすかなハスキーさがあって、それなのに伸びやかでよく響く声で音程もすごく正確」と三つの武器を兼ね備えてるとしか思えません。何より各フレーズの中での音のつながりのきれいな事!そうやって歌っていって曲の盛り上がるところでようやくチラっとシャウトなどの小技を入れてくる ー それが結果として効き目抜群の構成になっています。そんな「地味にすごい」羽地さんのライブに度々通う内に気がついたのですが、ここに集うファンは僕を含め熱心な羽地さんフリーク。僕はこんなに長文を綴ってしまいましたが、満席のお客さんの感想でいちばん耳にするのは「凄い」の一言です。知名度を超える実力ゆえに知る人ぞ知る、などとも言われがちな羽地さんですが、僕たちファンにとってちょっと特別な存在です。素晴らしいライブをありがとうございました。