2月28日、Masumi(vo)、大岸康雄(g)のブラジル音楽ユニット/エスペランサ に幸枝(fl)がゲスト参加のライブ。今回のタイトルは「カンドンブレの夜 vol.4」。

 

 会場のクラベリトはアコースティックなギター好きの集まるお店。康雄さんもこの日はピックアップではなく、ギターのボディーにマイク密接で音を拾う完全生音。豊かな倍音を伴って奏でるキレのいいリズムはデリシャス、と言いたい心地よさです。ギター、フルート、ボーカルのソロ交歓が見事な“イパネマの娘”、華麗なメロディが展開するパウリーニョ ダ ヴィオラ作のサンバ、とブラジル音楽ならではのサクサク、ぐいぐいと流れていくグループ感が活かされて楽しませて頂きました。中でも“Para Fugir da Saudade (サウダージから逃れるために)“は三者息ぴったりの快演。

 

  

 

 

 

 今日のテーマ 「カンドンプレ」はブラジルの民間信仰、八百万の神にささげる切なる祈りの歌。土着の節回しで歌われ、どこか日本の民謡にも近い雰囲気も感じられてすんなりとその一途な世界に誘われます。ブラジル音楽のマーチ風のリズム(March マルシャ)で伴奏される曲もあり、サンバとは違って1拍ずつ跳ねる様な明確なノリ。シンプルなメロディの“O Vent (風/ドリバル カイミ)”から、メドレーで“Canto de Iemanja (女神イエマンジャの歌/バーデン・パウエル)”の高低飛躍するクセ強い音程が現れる場面は鳥肌もの。これを難なく繋ぐMasumiさんの澄んだ美声に聞き惚れました。

 

  康雄さん作曲、幸枝さん作詞のオリジナル“月のサンバ”も同じくマルシャにのって演じられましたが、こちらはカンドンブレの深淵な祈りの雰囲気とは一転、一緒に軽く鼻歌を口ずさみたくなる様なウキウキ気分。幸枝さんがフルートからタンボリンに、康雄さんがギターからカバキーニョに持ち替えての“Tristeza pe no chao (悲しみを踏みしめて)”ではその鉄弦がマルシャのリズムを鋭く刻み、この一曲だけで異国のバーに来てる様な!カッコ良さでした。

 

 

  ボーカルなしでフルートがメインの曲でも幸枝さんの作り出す情景は素晴らしく、ジョビン作のショーロ“Estrada Branca (白い道)”はぬくもりのある音色を重ねて優しく心を満たしてくれます。康雄さん作のフルートとギターのためのインスト曲“古き市場のワルツ“はのろのろとしたショーロで重く始まり、インテンポの中間部が挿入されて高まるパッション ーでもやはり夢から覚めてまたゆったりに戻り、と言わばそんなストーリーすら感じさせる充実展開。“Berinbau/バーデン パウエル”はボーカルのバックに絡む印象的なアレンジから技巧を凝らしたフルートソロへ。僕からは待ってました!の拍手を送らせて頂きました。

 

 音楽用語やたら多用の感想文になってしまいましたが、これはブラジル音楽の豊かさと、それにチャレンジし続けるエスペランサの貪欲さゆえ。エスペランサ ファンが必ず聴きたがる“Romaria (巡礼)”はいかなる音楽的知識も必要なく、聴けばその哀感と安らぎに胸打たれる、と僕は保証します。でもこれはジャンルで言えば やはりブラジル版カントリー、セルタネージョ。

 音楽の聴き方は様々ですが、例えばクラシックのコンサートで長い組曲を一気に聴くのも良し。でも、近年その機会が失われがちで気になるのは、ラジオの番組で数名の語り手が談笑したり、曲紹介したりを挟みながら、でもしっかり印象に残る話題も音楽も聴かせてくれる…というスタイル。エスペランサ ライブにはそれにも似た、気軽に引き込まれる楽しさがあります。笑いにも肥えた康雄さんのトークはいつの間にか音楽やブラジル文化の紹介にもなり、Masumi さん作の日本語歌詞は曲の意味を伝えてくれたり、抱腹絶倒のそら耳バージョンだったり、と予測不可能? 演奏の充実ぶりに加え、度々エスペランサ ライブに行きたくなる秘密はその辺にもありそうです。