5/23 梅田Always にて 「ホジェリオ ソウザ 日本公演ツアー 2026/大阪公演」。ブラジルから来られたショーロの大家 Rogério Souza(7弦g)を迎える日本の名手は 澤田直之(バンドリン)、満島貴子(fl)、山田やーそ裕(7弦g)、長岡敬二郎(perc)、Cheiquinha (vo)。

 今回のライブは18世紀中頃の誕生期から現代に至るまでのショーロの歴史を辿る、という意欲的なテーマでした。クラシックの演奏会の様に客席にはプログラムが配付され、ショーロの歴史とそれに沿った演奏曲目をわかりやすく紹介。僕の様なショーロ初心者も大いに興味そそられ、楽しめました。

 

  

 

 1stステージは ショーロ第1期、すなわち『1850年頃のリオに始まるショーロ誕生期』。ヨーロッパ風の上品な節回しを感じさせながらも、腰に来るアフリカ由来のリズムの面白みもいっぱい。旋律の凝り様もアンサンブルの緻密さもあって縦にも横にもチマチマとすごく音が多い感じがするのですが、不思議にぶつからず、延々と聴き続けたい心地よさが醸し出され、そしてやはりリズムの円滑さに誘われます。

 

 

 今日はこんな上品な心地良さに包まれて進んでいくのかな、と僕は思ってしまいましたが、2ndステージ『第2期:エルネスト ナザレー、ピシンギーニャたちによるスタイルの確立』の曲を聴くと、スタイル確立どころかその洗練ぶりに驚かされます。第1期では ポルカやワルツといったヨーロッパの民族性を活かした音楽と比較してショーロの個性をひも解きたい、と僕はそんな印象でしたが、曲調といいアレンジといい作家性の高い新鮮なアイデアの世界が広がりました。その意味で「ショーロはブラジルのジャズ」とよく言われるのもなるほど、と実感。ショーロも即興演奏が颯爽と挿入されるのですが、ジャズは主にソリストのための音楽なのに対して、ショーロはアンサンブルが主役の音楽になっているところに魅力があると思いました。ジャズはトランペットを筆頭に管楽器がフロントになりますが、ショーロのフルートはソロで映えるだけでなく、バックのハモリを担当したりもしてアンサンブルの一員みたいでもあります。あえて言えば、音の高さと硬質さで真っ先に耳に届くバンドリンがいちばん目立つ楽器にも思われ、澤田さんの澄んだ音色と美しいピッチから目が(耳が)離せませんでした。

 

  

 

 とそこへ訪れた第3期は『バンドリンの巨匠- ジャコー ド バンドリン』。但し、バンドリンの巨匠であるだけでなく作編曲家としてもショーロの発展に大いに貢献されたとの事。今日聴いてみるとなるほど、第2部よりさらにモダン、クールな凄みのアレンジ。意識を集中して聴き込みたい音楽です。ジャコー氏は1940年代に登場され、1967年に名盤「Vibraçoes」をリリース。ショーロ最重要作のひとつとしていまだに影響力を発揮しているーとプログラムの紹介文から知りました。Jazzで言えばまさしくパーカーからコルトレーンまでの時代にあたり、ちょっと強引かもしれませんがブラジル インスト界にもそんな黄金期が訪れていた、と想像してしまいました。

 

  

 

 4thステージは第1〜3期の時代の名曲から歌入りの人気曲をチョイス、華やかなステージに。Cheiquinhaさんは伸びやかなお声にちょっと古風なビブラートも加えられ、暖かく歌いあげられました。すると満島さんのフルートも古風なビブラートで応え、絶妙の雰囲気作り。満島さんは各時代の曲調によりキレキレだったり優しくポルタメントしたりと繊細な音使いを披露され、おかげで僕はJazzではややマイナーなフルートがなぜブラジルでは大人気なのか、しかとワカラせいただきました。

 今日なんと言っても豪華なのは Rogério、やーそ 両氏の7弦ギター 2挺編成。ギターを2挺と数えていいのかよくわかりませんが、クラシックの様に同楽器を重ねる豊かな響きでもあります。そしてまた高低に分かれて旋律のアイデア応酬、と大いに楽しませていただきました。Rogérioさんは指輪状に親指にはめるピックでソロも弾かれ、ストレートによく届く響きが印象的でした。

 

 

 5thステージは現代のショーロ。トム ジョビンやRogérioさんら本日のバンドメンバーのオリジナルの曲も演奏。パウリーニョ ダ ヴィオラ の曲は最早Jazzフュージョンみたいな複雑高速アンサンブル!ショーロは今も現代的に進化して世界各地に広がっていま す。

 アンコールでCheiquinhaさん再登場、"Carinhoso" の第1フレーズ「Meu coração ….」が歌われた途端に僕を含めて客席から歓声があがりました。結局僕が知っている曲はこれだけだったのですが、Rogérioさんのオリジナルが気に入ってしまい、会場で買ったRogérioさん のCD(何が入ってるのかまだわかってないのですが)を帰宅後に聴くのがまた楽しみでもあります。

 重くならず、でもとても正確にリズムを鼓舞するパンデイロに魅せられ、終演後に長岡さんのもとにかけ寄ったところ「フォホーのリズムを演じた曲もある」と教わりました。

 

 今回のライブは時代を追って楽曲を聴かせて頂き、この決して熱くも軽くもなり過ぎず、ナチュラルな賑やかさを装いつつも豊かな創意に溢れる音楽 ー ショーロの進化に触れる最高の機会になりました。