- 雷桜 (角川文庫)/宇江佐 真理
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「
なんか、かわいそうな物語だったなあ・・・。
こういうの、切ないっていうんだろうか?
切ないっていうか、かわいそう、不幸・・・?
本人たちやまわりのひとは、一生懸命生きてるんだけど。
江戸時代を舞台にしたお話。
解説には「美しい恋愛小説」と書かれていたが
たしかに美しいけど、恋愛小説ってほど恋愛恋愛してないと思う。
その部分に至るまでをしっかりと描いていて、大部分は複線。
でも、一気に読んでしまった。いい小説だと思う。
以下、ネタバレします。
政治に振り回され、庄屋に生まれて1才のときにさらわれて。
人が容易に暮らせない山でさらった者に育てられ、
14歳で庄屋に戻り、お殿様と恋に落ち、悲恋に終わるヒロイン、遊。
徳川家17男、4歳で母と離され城主となり「気の病」持ちで孤独な殿様。
遊に心を開き恋するも、紀州に婿入りするため遊と別れなければならなかった斉道。
お互い好きなのに、あんな別れ方して、誤解もとけないまま斉道死んじゃって、
遊は斉道の子ども身ごもって産むけど斉道はそれ知らないし。
知らせたら斉道の「置き土産」をとられちゃうから言えないし。
「山育ちで人並みの女じゃないから」側室になってって言われても断っちゃうし、
でもそれは遊が窮屈なお城の生活をしたくないからだとも思うけど。
斉道、遊に会えてやっと生き生きしだしたのに、
すぐに永遠のお別れで、
自分の子どもも一人も目にしないまま若くして死んじゃうし。
遊も斉道もなんか境遇かわいそう過ぎないかい?作者のひと。
もっとなんか本人たちに幸せを感じさせてあげられるようなことはできなかったのかい?作者のひと。
村や家の人が遊にきつく当たらないのが救いだよ。
実際ならかなりの差別対象になっていただろう。
「人並みの女」でないのだから。
自分で江戸時代を舞台にした小説を選んでおいてなんなんだが、
封建的・保守的すぎる空気が嫌だ。家とか跡継ぎとか。「人並みの女でない」とか。そんなのいいじゃないか別に。と反発したくなる。
その点、
遊の行動たち振る舞い物言いは、型破りで率直で気持がいい。
だけど、ずいぶんと安直なストレートさだなあ・・・。とも思う。
でも、山で育つとそんなもんなのかな?うーん。
斉道も、わかりやすい「複雑さ」で、いまいちなんだか、ふたりともキャラが「わかりやすい」。
まあー、でもいいのかなあ・・・?二人のことは、嫌いではない。
むしろ好き。
もうすこし二人が幸せな人生を送っていてくれたらなあ・・・。
でもなあ・・・。
遊は斉道にほのかに恋してたらやっちゃってデキちゃって、
それを喜んで産んで育てて斉道と生き写しのその子とともに
斉道との思い出の中に生きて40過ぎまで結婚しないでいるとか・・・、
そんなことって、なんか現実離れしすぎてる。
話が強引。
そんなこといったら、遊の兄が百姓から武士になるとか、そのへんもやや強引。
うーん。ファンタジー。
あと、意味がわからなかったのが、タイトルのキモであるだろう斉道のこの発言
「この桜は予と遊のようじゃのう」
雷でイチョウが折れた上に桜が芽を出し木になったもの「雷桜」を前にして斉道が言う。
どのへんが斉道と遊みたいなのか、ちょっとよくわからなかった。
でも、ものすごくわかったことは
斉道は遊のことを、心の底から愛しいとおもっていたことだろう。
遊は、まだ恋ってかんじの描写だったけど・・・。
恋な描写だったのに、愛を貫いちゃう描写が続くからなんか妙なかんじだったんだよな。
この小説、情景はキレイです。
自然の美しいイメージがすごく湧く。
この小説は映画にもなっていて、
主演が蒼井優だということで目に留まった作品。
映画観るお金ないから原作読むか・・・。と思って小説を読んだ。が、
映画はもっと恋愛恋愛したかんじみたいね。
ぱっと映像みたとき、蒼井優が野太い声だしててちょっと不快で
なんかやりすぎてたかんじだったんで、映画は観ない。
この原作は良かったと思う。ちょっと泣いちゃったし。
しつこいけど、もっと二人の人生が幸せなものだったらなあ・・・。
なんだかなあ~・・・・。
幸薄い。
潔さがいいのかもしれないけど、
もっと主役二人に幸せを感じさせてあげたくなった。
そのくらい、二人に感情移入してしまえる、素敵な小説です。