こういう話題には触れないつもりだったのですが、
JASRACさんが何言ってるんだか
ちょっと分かりません
どなたか日本語に翻訳して下さい。
【自力で翻訳してみた大雑把なまとめ】
1.音楽教室では 生徒=公衆 なので
曲を弾いた講師に著作権使用料が発生する
2.それは教室を運営する法人がまとめて支払わなければならない
3.その場合 JASRAC管理曲が何回使われたかは重要視されない
4.何故ならば 現在 包括契約の話しか見当たらないから
……ごめんなさいどの部分を切ってみても
アバンギャルド過ぎてやっぱり分かりません。
だから、きっと翻訳のほうが間違っているのでしょう。
御指摘頂ければ幸いです。
「指導と演奏は別物である」
「教育の場からまで徴収すれば音楽という文化が潰える」
という話は、既に2日の時点で語り尽くされていることでしょう。
今更語られるべきですらない共通認識が
改めて語られなければならない状況は尋常ではありません。
が、JASRACはかねがね
オリジナリティ溢れる日本語解釈によって
そういった共通認識を覆してきた超越者的存在です。
JASRACが主張する「生徒=不特定多数=著作権法上の“公衆”」は、
勿論この判決を援用していると思われます。
この点を含めてJASRACと争っていたダンス教室の最高裁上告は
棄却されたので、判断が確定しています。
これを踏まえると、仮に音楽教室の件が裁判になったとしても、
1.と2.について認められてしまう可能性があります。
しかし今回、音楽教室にて
市販CDではなく、講師が演奏する曲です。
音楽教室のレッスン中に
講師が“演奏”と言えるほどまるまる1曲弾いて聴かせる、
などという奇行は見聞きしたことがありません。
仮に1節2節弾いたとしても、あくまでも“指導”であって、
主体は生徒です。
などということも一般常識というか共通認識というか
今更語るべき事柄ではない気がするのですが、
超越者のアクロバティック日本語解釈では
この行為が「著作権法第22条の演奏権に該当」してしまいます。
******************************
「だったら著作権料のかからない曲でレッスンすればいい」
というコメントをネット上で数多く見かけましたが、
残念ながら、JASRACの方針は包括契約のようです。
著作権料を払う、と聞くと
「1曲使ったら1曲分の使用料を払う」という当たり前の方式、
“曲別許諾”を思い浮かべるかもしれません。
が、“包括許諾”は「一定額を払えば何曲でも使い放題」方式です。
ライブハウスでバンドがコピー曲を演奏しても
バンドに使用料の請求が行かないのは、
そのライブハウスがJASRACと契約していれば
まとめて払ってくれているからです。
※だからといって、ライブハウスのコピーバンドなら何でもセーフかというと違います。
サポメンを確保出来なかったからといってバックでCD音源などを無断使用してしまうと、
JASRACとか無関係に、著作隣接権の侵害になります。
あと、ライブハウスはライブハウスでJASRACとの闘争の歴史があるので、
一概に「ライブハウスの支払いシステムは素晴らしい」と言えるわけではありません。
どのニュースを見ても
「著作権使用料を年間受講料収入の2.5%とする案」
としか分からないので、普通に考えて、
包括契約案しか公表されていないのでしょう。
使い放題で一定額 = 使わなくても一定額 なので、
極端な話、「1曲たりともJASRAC管理曲を使用しなかった」としても
「運営法人は受講料収入の2.5%を払わなければならない」という
アルティメット日本語解釈も生じます。
「そんなの習ってないし希望もしてないから受講料据え置きにして」
という個別対応が理想ですが、現実的には不可能と思われます。
業務用通信カラオケであれば、
1曲ごとの分配額が算出されて権利者に分配されます。
前述のダンス教室やライブハウスの例でも、
包括許諾か曲別許諾を選ぶことになっています。
テレビやラジオでさえ、包括契約での使用料は放送利益の1.5%です
(衛生放送はチャンネルによってパーセンテージが異なります)。
でありながら、音楽教室には何故いきなり2.5%?
包括許諾以外での徴収、つまり曲別許諾の案は提示されたのか?
包括契約の場合の、2.5%という大きな数字はどこから出てきたのか?
発表以降、今までずっとそのソースを探し回っていたのですが、
見つかりませんでした。
******************************
「音楽教室はクラシック指導が多いから大丈夫」
というコメントもネット上で数多く見かけましたが、
クラシックならば全部セーフというわけではありません。
例えば、ピアノから音楽を始めたかたにはお馴染みであろう全音の、
難易度別の楽譜(画像上)と1曲ずつの楽譜(画像下)
(ハムスターが齧った跡がありますがお気になさらず)、


このシリーズにもJASRAC管理下の曲は存在します。
例えば、ギロックは1993年没であり、死後50年を経過していません。
305曲がJASRACに登録されています。
クラシックを体系的に習得するに当たって、
そういう曲を除外してカリキュラムを組むのは困難です。
日本は現在、ベルヌ条約で定められた著作権保護期間のうち
最も短い50年(映画は70年)を採用していますが、
今後の方針は70年への延長なので、著作権トラブルは増えそうです。
※この件に関連して、JASRACのデータベースを使う時によくあるうっかりミスに、
「外国人の氏名をカタカナや略称で検索してしまう」があります。
外国人名の多くは
名(ファーストネーム・ギブンネーム) → ミドルネーム → 姓(ラストネーム・ファミリーネーム)
の順に書きますが、“権利者”や“著作者”は
姓 → 名 → あればミドルネーム
の順に記載されています(“アーティスト名”はこの限りではありません)。
これは別にJASRACがややこしくしているわけではなく、
氏名をデータベースにする時にはこうなります。
例えば、英検を外国人が受けても、合格証の氏名はこの順です。
論文ならば、世界共通で「姓,名.」表記になります。
“作品タイトル”だと、原題でも邦題でも検索可能なようです。
日本人の氏名であれば、どの部分で検索しても大丈夫なようです。
「ウィリアム」「ジョン」「トーマス」といったメジャーな名も、カタカナで検索出来ます。
しかし、上記の例で言えば、「ギロック」と入力してもHITしません。
「William L. Gillock」の完全一致や「ギロック・ウィリアム」も不可です。
「Gillock William Lawson」の完全一致か、そのいずれかの部分一致で調べなければなりません。
「クラプトン」って入れたらちゃんと「CLAPTON」が出てくるのに何故だ。
そして、推奨環境で氏名を正しく入力したとしても、
“権利者名”なら表示されるのに“アーティスト名”にすると表示されないとか、その逆とか、
検索洩れが生じることも稀にあります。
こういうのを調べなければならない状況になったかたは大変かとは思いますが、
「JASRACのデータベースに無かったから大丈夫」と安心していると
更に大変なことになる場合があるので、
あらゆる角度から入念に試行してみて下さい1回でHITすればラッキーです。
また、コースによっては、
ピアノの教室であっても声楽等の教本が併用されることもあります。
画像は、実際に使われたことがある中声用の定番。

基礎しか習わないことだってありますよね。
今回
スケール、カデンツ、形式や構造、ハ音記号等特殊な楽譜の書き方、
等、音楽理論みっしりな教本が使われます。
曲の一部分だけが参考として載っている場合も、理論のみの場合も、
法人独自編集のテキストの場合も、市販の教本の場合もあります。
ドラム等、初心者の比率が高い教室も曲を使わない場合があります。
ドラム特有の楽譜の読み方や基本の叩き方踏み方の指導のみで
1回のレッスンが終了することもしばしばです。
※いえ個人レッスン枠であれば
「どうしても○日間でこの曲を叩けるようにならなきゃいけないんです!」という
文化祭直前崖っぷち初心者が涙目で駈け込んできた際に
持ち込み楽譜を教える(=何が何でも詰め込む)ことも無いわけではないのですが。
で、気になったのが、基礎教本の扱いです。

画面右が著作権ばりばりなのは、まぁ恐らく誰の眼にも明らかです。
画面左だと、表紙だけでは一見分かりませんが、曲が載っています。
これを教材にしたとして、曲を教えなかった場合、
それを証明する方法はあるのでしょうか。
そして、JASRACは、そういう本を
理論のみの本と区別して把握出来るのでしょうか。
また、一節のみ抜粋掲載されている曲での指導は、
何も弾かなかった日の指導とどうやって区別するのでしょうか。
要するに、9,000ヶ所に及ぶ教室の、
コースや講師によってまちまちな教材の中から、
曲別許諾無しに「JASRAC管理の曲がいつどこで何回使われたか」をどうやって把握するのでしょうか。
そもそも、揉めまくる元凶になる包括契約を
どうして最初に提案したのでしょうか。
******************************
過去に包括契約が問題視された点といえば、大まかに分けると
「各権利者に正しく分配されているのか?」と
「独占禁止法違反ではないのか?」の2点でした。
包括契約に関する訴訟の有名どころといえば、
(1)元爆風スランプ・ファンキー末吉氏 VS JASRAC 第一審・第二審
でしょう。
末吉氏が仰っているのは、
「店舗面積だけで計算する包括契約では
著作者への分配が正確に行われない
っていうか実際行われていない」(意訳)です。
どの曲が何回使われたのか分からない使い放題方式で
各権利者に使用料を分配するには、サンプリングを使います。
例えば、テレビ・ラジオならば、
13週のうちの1週分の全曲報告をサンプルとして全体を推定します。
曲別許諾も併用していて精度は高いといいます。
といっても、「分配の精度が高い」ことと「分配が正確である」ことは、
権利という場では全くの別物です。
包括契約のメリットは、
事業者とJASRACがラクであるという点だけであって、
権利の分配に統計学をあてがうことにそもそも無理があります。
正確な分配であるならば、
ある日1回だけ流された曲にも
著作権料が支払われなければなりませんが、
サンプリングではそれら全てを網羅することは出来ません。
そして、JASRAC以外の著作権管理曲は
ラクじゃないので放送されなくなり、
包括契約方式は独占禁止法に違反すると見做されました。
※現在はNHK・民放キー局・FM局を中心に全曲報告が開始されています(と発表されています)。
なので、
(2)イーライセンス VS JASRAC+公正取引委員会
では、最高裁にて上告が棄却され、
「他事業者の参入を排除している」とした一審が確定しました。
……のですが、棄却を受けたJASRACの同日付の声明は、
現在も公式サイトの“プレスリリース”で読めます。
以下、結びの一節です。
「私的独占(独占禁止法3条違反)に該当するものではないことを
引き続き主張してまいります。」
えっ ちょっ 待っ
いえ……うん……そりゃ、ここは表現の自由の国ですとも。
法に抵触しない限り、何を言っても自由ですとも。
それに、実際には
放送局と著作権管理事業者の五者協議はちゃんと進んでて、
そんな場でまで“主張”し続けてるわけじゃないのは分かってますとも。
とはいえ。
最高裁で敗訴した側が、
遺憾・残念などの“感想”を述べるのは
よく見かけるし心情も理解出来ますが、
法的に確定した内容に相反する“主張”を
大きな法人が公式に掲載するという
日本の司法制度に真っ向から挑んだフロンティアスピリットは
初めて見た気がします。
******************************
“公衆”に聴かせる場合でも、
演奏者が無報酬であれば著作権法には触れません。
演奏家は演奏で報酬を得ますが、
音楽教室の講師は指導で報酬を得ています。
「曲は生徒が習得する教材であり、
講師がそれを“聴かせること”ではなく“教えること”で報酬を得ている、と解釈すればいいんじゃないか」
というコメントも、ネット上には数多くあります。
全く以ってその通りだと思いますっていうか
それ以外の解釈をしたことがありません。
が、超越者のダイナミック日本語解釈では、例えばダンスの指導だと
ダンスを教授する際に不可欠な著作物の演奏(=CD再生)は、
直接ダンス教室の営利に結びつく利用形態である
→ 著作物の演奏によって営利が発生している
という正反対の意味になります。
とかいう以前に、超越者の日本語解釈レボリューションによって、
ボランティアの演奏にも著作権料が請求されています。
●無料公演を自治体が主催 → オーケストラに依頼 → 請求されない
●無料公演をオーケストラが主催 → 請求される
この違いは、無料公演といえども
オーケストラ名義であれば楽団員に給与が支払われるから
だそうですが、
オーケストラがやっていることは全く同じ奉仕活動です。
確かに、名義が変われば法の適用が変わることはままあります。
従って、
オーケストラは慈善団体ではない
→ ボランティアも宣伝の一環である
→ 給与が発生している
と考えることは可能です。
可能「ではある」のですが、
着眼点がアグレッシブ過ぎて思いつきもしませんでした。
******************************
分配先が分からない、ということに関連して、
最後に一つ、前々から気になっていたことを。
使用料の支払いが発生しないケースや
手続き自体が不要なケースについて、
JASRACのサイトには明記されています。
……が、昔から、ネット上には
パブリックドメインの曲、
JASRAC以外の管理事業者に委託している曲、
またはどこにも委託していない曲、等に
「著作権使用料を支払わされた」というコメントが散見します。
それらの多くは、
「支払いが生じるか確認された」調査段階の話(もあるけど)ではなく、
「不要な申告を要求された」「支払わされた」と断言しています。
1,000年前の曲に著作権使用料の申告を求めた事例は別として、
殆どが匿名の書き込みなので、
個々のケースについての真偽のほどは分かりかねますが、
普通に犯罪被害ですよね?(刑法第246条)
未遂でも犯罪ですよね?(刑法第250条)
もしも、Aさんのところに
JASRACを名乗る人の訪問または電話があり、
AさんがJASRAC管理の曲を一切使用しておらず
従って手続き自体が不要であることを論理的に説明した、
にもかかわらず
「支払わされた」「支払わされそうになった」状況まで至ったならば、
仮にも法治国家で知的財産権を守るという崇高な理念の下膨大な著作物を預かっておられるプロが善良な市民の権利や財産を脅かす犯罪行為を働くはずがない万が一それが末端の独断であったとしても分配先が存在しないような徴収を組織的に黙認などなさるはずがないと考えればああそっかなるほどコイツなりすまし詐欺だという結論に至りそのような悪質な事例が1件でも実在したとすれば一般的な組織の対応としては「当社の名を騙った詐欺に御注意下さい」のようなアナウンスを行うがJASRAC様はたまたま公式には言及しておられないだけで深く憂慮しておられるに違いないのでJASRAC様の御不安を払拭して差し上げるためにもAさん御自身の権利を守るためにも他の被害者を出さないためにもその場で直ちに通報すべきであると思いますあーもー通報する前に言質取ろうと思いながら喋ってたら突然逃げたアイツ今思い出しても腹立つわ但し詐欺の立件は犯罪の中でもとりわけ難しくいつ・どこで・何を・どのように騙し取られたか・相手に騙す意思と言動があったか・それによってAさんにどんな錯誤が起きて被害に遭ったかがはっきり分かる証拠が必要になりますしお金を取り返すためには別途民事訴訟も起こす必要があるので物証は一つでも多く押さえておくべきですあと被害届は一度取り下げたらもう一度同じ内容では出せないので相手に丸め込まれないようにお気をつけ下さい。
******************************
話が逸れました。
伝統工芸でもない限り、独占・寡占市場が健全とは思えません。
かつて独占事業だった三公社五現業は、
ほぼ解体されて平べったく地均しされました。
今は事実上独占を誇っている業種でも、
国鉄や電電や専売公社のように
「うわー懐かしー昔そういうのもあったねー」
「何それ知らない」
と言われる日が来る可能性もゼロではありません。
最後になりましたが、
教わる、教える、営む、音楽教室に関わる全てのかたがたに
深く敬意を表します。
昔たくさんの音を与えて下さった音楽教室に
何の恩返しも出来ない身ではありますが、
心より応援しております。