はじめまして。「宇宙に缶詰」の作者の肥田知浩です。今回、僕の書いた戯曲をピッコロ劇団さんに上演していただくことになりまして、大変嬉しく思っております。

 

「宇宙に缶詰」は、特にテーマなどをもうけずに書き始めた戯曲でした。戯曲を書くというと、まずテーマだとか、ストーリーだとか、プロットだとか、結末だとかをある程度固めて、あらかじめ作っておいた設計図にそって書いて行くものだと思う人もいるかもしれません。が、僕の戯曲の書き方はそうじゃなくて、事前にテーマだのストーリーだのを決めずに、まず最初のセリフとか、場面とかを書いてみて、それから、そのあとにどんなセリフがきたら、どんな場面がきたらおもしろいかな、と考えて、一日一日、ちょっとずつ書き足して行く、というのが僕の戯曲の書き方です。今回の「宇宙に缶詰」では、まず最初に缶詰を宇宙船に見立てて遊んでいる少年、というイメージが僕の頭にやって来ました。この少年から始まって、一行ずつセリフを積み上げていってできたのが「宇宙に缶詰」です。

現代社会の生きづらさとか、日本に漂う閉塞感とか、差別とか、貧困とか、戦争とか、演劇がテーマにするものはいろいろあるけど、僕が書きたいことはもっと別のことでした。僕が書きたかったのは、もっと個人的なものごとです。社会の側が用意してくれるテーマじゃなくて、自分の個人的な関心とか興味とか、時間とか死に対する疑問とか、子ども時代の思い出とか、好きなマンガの忘れられない場面とか、好きな食べ物とか、好きな歌とか、僕が僕の中で大切に思ってるものごとから出発して、それらをどこまでも積み上げて行き、そのまま最後まで突っ走って書き上げた戯曲が「宇宙に缶詰」です。僕が社会人としてではなく、個人としておもしろいと思うこと、一人の人間として生きる上で大事だと思うこと、そんなことを詰め込んだ戯曲です。

 

稽古場の空気はとても楽しそうでした。「おもしろいものが今まさに出来上がりつつあるぞ」みたいな興奮を感じました。演出のサリngさんとピッコロ劇団のみなさんは、僕が考えていた以上にこの戯曲のおもしろさを引き出してくれて、僕が思ってもみなかったおもしろ場面がゴロゴロと出現して、作者の想像をはるかに超えた演劇作品が出来上がりつつあります。これはちょっと、かなりすごい作品になるのじゃないか、これを見逃す手はないんじゃないか、と個人的には思います。

 

いよいよ今週末が本番です。みんなで楽しんで作ったこのものすごい作品を観客のみなさんと共有できるのが今から待ち遠しいです。一緒に楽しんでいただければとても嬉しく思います。ご来場お待ちしております!