春泥に子等のちんぽこならびけり 茅舎


◆川端茅舎
かわばた ぼうしゃ

俳人。東京生。本名は信一。日本画家川端龍子の異母弟。岸田劉生に絵画を、高浜虚子に俳句を学ぶが、持病の脊椎カリエスのため画道を断念し句作に専心。絵画の観察眼と禅の精神性を土台とした「茅舎浄土」と称される独特の斬新な苦境を展開、『ホトトギス』の代表作家として活躍した。昭和16年(1941)歿、41才。
~美術人名辞典の解説より。


◆春泥/しゅんでい
三春

春の泥

春のぬかるみをい
う。早春には凍解
や雪解、雨などで
泥水が乾ききらず
に、泥濘が至ると
ころに見られる。
近代になって春独
特の季感を見出し、
好んで詠まれるよ
うになった。
~きごさいより。



◆例句

そこここに春泥のある後日談 中原道夫

春泥のふかき轍となり暮るる 金子麒麟草

春泥を来てかがむほど小さき墓 渡辺桂子

春泥を来て大いなる靴となり 上野 泰

春泥の足袋をはきかへ神の前 山本 まさ子

隕石の行方たどれば春泥や 小長井和子

春泥のそのごちやごちやを恋と呼ぶ 櫂 未知子

僧のあとから春泥のをんなたち 長谷川双魚 『ひとつとや』

春泥に処刑のやうな転びかた 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』

春泥の一歩身のうち紅絹の鳴る 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』

春泥の子の血吾が唇もて覆ふ 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』

春泥の子の血より哀しき色あるや 長谷川秋子 『菊凪ぎ』『鳩吹き』『長谷川秋子全句集』

春泥を體くねらせ女来る 上村占魚 『球磨』

春泥やのれんに染まる妓の名(鴨東宮川町) 『定本石橋秀野句文集』



春泥や貯金おろしてしまひたる 文挾夫佐恵

春泥の靴溢れをり珠算塾 塩田晴江

乳母車の車輪がつけて行く春泥 細見綾子

春泥を来てこの安く豊かなめし 平畑静塔

みちならぬ恋春泥を行く如し