定年の人に会ひたる冬至かな/高橋順子

                           
冬至。昼の時間が最も短い日。一年を一日に例えるならば、冬至はたそがれ時ということになる。そんな日に偶然にも、定年を迎えた人に会った。定年もまた、人生のたそがれ時には違いない。その暗合に、作者は人生的な感慨を覚えている。そして、作者の感慨は、読者の心の内に余韻となって共鳴していくだろう。さりげないけれど、内実は鋭い句だ。作者は詩人で、俳句もよくする(俳号は泣魚)。『博奕好き』(1998)所収。(清水哲男)
・増殖する俳句歳時記より転載




冬至/とうじ
仲冬
 

冬至餅/冬至南瓜
一陽来復
 
二十四節の一つで
太陽が最も南行し、
一年中で昼が最も
短く、夜が長い日。
十二月二十二日頃
にあたる。無病息
災を祈って柚子風
呂に入ったり、粥
や南瓜を食したり
する。


待たらんに行ばや我も冬至の日
支考 「文星観」
冬至より来るもいまだ雪の空
北枝 「柞原」
門前の小家も遊ぶ冬至かな
凡兆 「猿蓑」
貧乏な儒者訪ひ来る冬至かな
蕪村 「落日庵句集」
禅院の子菓子貰ふ冬至かな
召波 「春泥発句集」
鶯のうしろ影見し冬至かな
凡菫 「井華集」
日本の冬至も梅の咲きにけり 
一茶 「七番日記」
上加茂へふと参りたき冬至かな
蒼? 「蒼?翁発句」
・きごさいより転載





クロッキー⑦


年寄りの何して遊ぶ冬至の夜

母も吾も南瓜きらひの冬至かな

物陰に猫の尾うごく冬至かな

老妻を米借りにやる冬至かな

病院の庭に柚子落つ冬至かな

七病の身を湯に浸ける冬至かな




冬至で一句どうぞ。