残像なお増殖止まず開戦日/的野雄

                           
12月8日(1941年・日本時間)は大東亜戦争(当時の日本政府による呼び方)の開戦日。「ああ」と感慨を抱くのは、既に物心のついていた七十代半ば以降の人たちだろう。私はまだ三歳だったので、何も覚えてはいない。この日から、日本は、いや世界は、泥沼の道に入った。作者の脳裏に去来する「残像」はどんなものなのだろうか。むろん、一言では尽くせまい。大きく変わった身内の運命。知り合いの人の運命。なによりも口惜しいのは、戦争さえなければ死ななくてもよかった人たちの死である。若く元気だった人たちの顔が、いまでも目に浮かぶ。同時に、当時の暮らしぶりや山川の風景、そしてその後の自身を含めて翻弄されつづけた生活のありようなど。残像はとめどなく明滅し、止むことがない。言っても甲斐なきことなどは承知でも、なおこう詠まずにはいられない作者の気持ちが、私などにはよくわかる。現在沖縄基地問題をめぐって、鳩山政権が苦しがっているようだ。しかし、そんな苦しみは、あの日を生身で体験した人々のそれに比べれば屁みたいなものである。たとえ無責任なマスコミに八方美人的と言われようとも、問題解決を焦ることはない。じっくりと腰をすえて、百年の大計を練るべきである。『円宙』(2009)所収。(清水哲男)
増殖する俳句歳時記
http://www.longtail.co.jp/~fmmitaka/kigo.html
より。


十二月八日/じゅうにがつようか/じふにぐわつやうか

仲冬 開戦日

太平洋戦争開戦日。「ワレ奇襲ニ成功セリ」との大本営発表があった日。

きごさい
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クロッキー

気が付けばいつもきなうが開戦日

少年のピアスきらきら開戦日

開戦日おかわり無しと祖父宜す

十二月八日不幸の種子蒔かれ

十二月八日の次はレノンの日

十二月八日のグラス酒苦し

開戦日火薬のにほふ日本海

十二月八日の男子皆勃起




十二月八日、開戦日で一句どうぞ。