横顔の記憶ぞ慥か賀状書く/谷口小糸

                           
賀状の友が、年々減っていく。「今年こそは会いたいもの」と書きながら、十年くらいはすぐに経ってしまう。ましてや遠い地にある幼いときの友人ともなると「うつし身の逢ふ日なからむ賀状書く」(渡辺千枝子)という心持ち。面ざしの記憶も薄れがちだが、作者にははっきりと横顔だけはよみがえってくる。その昔、正対して顔を見られなかった初恋のひとでもあろうか。年賀状を書いていると、実にいろいろな過去が顔をあらわす。「慥か」は「たしか」。(清水哲男)


年賀状/ねんがじょう/ねんがじやう
新年

賀状/年始状/賀表/年賀郵便/年賀電報/年賀はがき/賀状配達

年賀を表するためにやりとりするはがきや手紙のこと。年末の期限までに出せば、元旦にいっせいに配達される。
(きごさい)




数知れぬ賀状羽ばたく初御空

うずたかき賀状の山を母数ゆ

賀状くるほどの来しかた我に無く

今年からヤツの賀状はもう来ない

只一言無事と記せし賀状書く

積み上げてなんの縁ぞ年賀状

新なる知己へ嬉しき賀状書く

わが背く家兄より来し年賀状

面影は少女のひとへ賀状書く




どなた様も年賀状で一句どうぞ。