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🚧 ③錆び看板建築の裏側に隠された廃墟に驚く 

 

 

 

 

 

京王線の代田橋駅を北口に出ると駅前にはいきなり昭和の風情を色濃く残した一角があった

 

その一角は「マルヤス玩具店」という1960年代で時を止めたかのような看板建築のオモチャ屋のところで終わっていた

 

 

この一角を含む「代田橋商栄会」という商店街は、ごく小さな規模で「マルヤス玩具店」から30メートルもゆくと甲州街道(国道20号線)に突き当たって終わる

 

当初の予定では甲州街道を越えたあとは、右手にある沖縄タウンのほうに向かうつもりでいたのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

前回の記事の最後に写真を掲載したこちらの戦後型の看板建築を目にしたとたんに、僕の超高性能古民家レーダーが反応し「こっちに行くんだ」という指令を発した

 

このような場合、メインではない場所から見るというセオリーもあることだし、素直に直感に従い看板建築のほうに足を向けるが……

 

 

この古民家レーダーが早くも高性能を発揮してしまい、連載3回目にして早くも最初のクライマックスをもたらす

 

 

 

 

 

 

 

 

戦後型の看板建築とはいえ、けっこう古い物件のようで建物の各部には、それなりに年期が入っている

 

 

アルミサッシの簡素な入り口の前には、お約束の路地裏プランター(といっても路地裏ではないが)が並んでいた

 

プランターは丁寧に世話しているようには見えず、かといって枯れ果ててもいないという微妙な感じのため、廃業してはいても住居としては現役に見える

 

 

ーーが、しかし話の核心はそこではなく戦後型看板建築の隣の物件を目にした瞬間、僕の古民家レーダーがゲゲゲの鬼太郎の妖怪アンテナに匹敵する高性能であることが証明されたことだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

この風景を目にした瞬間、思わず「うおっ、マジか!?」

 

と、心の叫びが起きるような見事な錆び錆び物件。しかもそれが2棟並んでいるではないか!

 

 

建物の2階を見上げるとブリキの雨戸は固く閉ざされており、シャッターには醜い落書きをされていることから、いや、このパーフェクトな錆び錆び具合から見ても廃業していることは確実だろう

 

こんな見事な錆び錆び物件の隣にAEONの「まいばすけっと」があるあたりが、東京という町の奥深さを無言で物語っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

向かって右側の看板建築は建物の横部分が前掲の戦後型看板建築と同様のサイディングボードで補修されていることから、比較的最近まで現役だったようだが、今は荒廃した気配が伝わってくるのみだ

 

一方、左側の建物は二軒長屋の造りだったようだが、向かって右の店舗の軒先クレハロンテントは消滅して骨組みだけになっており、しかもその骨組みが真っ赤に錆びついていることから、ずいぶん長いあいだ放置されているように見受けられた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よく見ると錆びついてしまっているのは、僕の大好物の煉瓦風に造られたブリキ板であることがわかるが、この建物を魅力的にしているのは、屋根の上から蔦が蔓延ってクォーターもじゃハウス化していたことだろう

 

錆びついて蔦に覆いかぶされてしまっている古民家の隣が真新しい「まいばすけっと」というのも風景のディープさ加減を増幅させている

 

 

上に掲載した写真が、斜め下側からの苦しいアングルばかりなのは国道20号線が都内の幹線道路なため、交通量が激しく歩道から外に出ることができなかったからだ

 

時間をかけてタイミングを窺えばあるいは撮影できた可能性もあるが、この季節は街路樹の葉っぱが生い茂っており、いずれにせよロクな写真が撮れないと判断したため正面からの画像は過去のストリートビューからキャプチャしたものを貼っておく

 

 

 

 

 

 

 

 

これは樹木を剪定した状態で見た同じ建物の画像で、この画像を見ると向かって左側の看板建築が「大衆食堂」だったことがわかる

 

そして左側の看板建築の一部分剥がれたブリキ板の下の横組みの板や、右側の建物が入母屋屋根であることなどから、おそらく昭和初期頃の建造物なのではないかと類推できる

 

 

ところで、この廃業して放置されている2棟の看板建築には、とても気になる一角があった

 

 

 

 

 

 

 

 

それが2棟の建物のあいだの細い隙間である

 

よく見ると単なる隙間ではなく建物が建っている場所は国道より土地が若干低く、降りるための階段が設えられている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この不可解な隙間に入ると、まるで薄暗い暗渠のような湿った雰囲気が漂い建物から剥がれ落ちてしまったのか、ドクダミの傍らに真っ赤に錆びついたブリキ波板が落ちていた

 

 

こうした湿り気のある薄暗い場所では藪蚊の襲撃が予想されるが、この日も狂ったような酷暑のため藪蚊は発生しておらず、短パンなのにまったくの無事であった

 

例年なら藪蚊の猛攻に音を上げるような状況なのに、今年の異常な暑さのおかげでこの夏、被害に合ったのはほんの数回である

 

 

 

 

 

 

 

 

隙間から甲州街道を見るとこの隙間の薄暗い雰囲気をわかってもらえると思う

 

 

 

 

 

 

 

 

隙間の入り口にはカラーコーンが置かれていた(どかされていたが)が、奥のほうには「安全第一」と記されたバリケード状のものがあった

 

しかしトラ柄のバリケードは、完全に横にズラされてしまっており、ものの役には立っていない

 

 

これは立入禁止なのかどうなのか非常にグレーな領域であるが、コインパーキングなどと同様に通りに面したオープンな土地は、入ってほしくなければ封鎖せねばならないのがセオリーだ

 

したがって、封鎖されていないということはコンプライアンス的には問題はないはずだ

 

 

と、自分を納得させて隙間の奥を覗きこんでみたが……

 

コンプライアンス以前の問題で、その場所に足を踏み入れることが躊躇われるような怪しい気配が漂っており、その場に入ることはできなかった

 

 

いや、ハッキリ言ってしまうと“できなかった”のではなく“ビビった”のである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隙間の奥には若干開けた、といっても1.8メートル✕8メートルほどのわずかな土地があり、左手には陽の当たらない場所には相応しくない樹木が枝を広げ地面には、びっしりと雑草が繁茂していた

 

植物の奥には木製のサッシのままのモルタル外壁の古い建物がひっそりと建っている。窓は埃まみれになっており、放置されてから長い年月が経過しているようだ

 

 

看板建築の廃墟の奥に、さらなる廃墟があるなどとは思ってもいなかったため驚きと戸惑い、そして陰気に湿った空気に気圧され身体が固まる

 

薄暗くひっそりとしたこの場所には太陽の光も届かず、この日が猛烈な酷暑日だということなど忘れるような冷ややかな空気が流れており、久しぶりに背筋が寒くなるという経験を味わった

 

 

おそらく、このとき僕が感じた不気味な感触を、文章や写真で伝えるのは不可能だろう

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

†PIAS†

 

 

 

 

 

 

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