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🍎 ③消えてしまった「印刷」「○○オ」を嘆く
前回の記事で3棟の銅板葺き看板建築(元、を含む)を紹介したが、この四面道の界隈は東京の下町とまではゆかなくとも戦前物件の宝庫だということがおわかりいただけたと思う
とはいえ「八丁通り商店会」という商店街のプレートが撤去されていたことからわかるように、商店街としては衰退しており、したがってこのあたりに残る戦前物件は徐々に減少し続け、このままではいずれ消滅してしまうだろう
この界隈は学生時代から知っているし過去に何度か取材しているが、その頃見た素晴らしい建物のいくつかは、すでにこの世に存在しておらず、くっそ馬鹿ばかしいマンションなどに建て替えられてしまっていた
などと悲観的な気分になっていたら、どす黒く変色したネズミ色の渋い片流れの看板建築があった
この物件は、初めて見たときに「グッと」きた記憶が残っているが、どうもそのときに受けた印象とは何かが違っている
なにぶん曖昧な記憶なので、隣が更地にされていることもあり、どこが違っているのかは、まったく思いいたらず現地を後にしたが、気になったので帰宅後に以前(2018年5月)に取材したとき撮影した写真を見てみると……
あー、なるほど! と、思わず膝を打った。そう、初めて見たときに「グッと」きたのは、ファサードにインパクト抜群の「印刷」という立体的な文字が記されていたからなのだ
ところが6年の月日が経過して、その「印刷」の文字が消失してしまい、記憶にあった建物の印象と齟齬を来していたわけである
それにしても、これだけインパクトのある燻し銀の看板建築は、下町でもあまり見かけないレベルの物件なので、願わくばいつまでも残しておいてほしい建物と言えよう
ちなみ隣にあった「美和美容院」が解体されてしまったのは昨年のことのようだ
こちらは青梅街道を挟んだ反対側にあった「神田時計店」というタイル張りの看板建築である
建物自体はスクエアな形状から戦後型の看板建築だと類推できるが、店舗部分の後方に無理やりな物干し台や、平屋の部分がくっついているという戦前型の様式を踏襲しているところが興味深い
かと思うと……
通りを挟んだ斜め向かい側には、同じようなタイル張りの看板建築があったけれど……
こちらは主屋のぶっとい破風から戦前物件だと思われるのに、戦後になってから「神田時計店」のような看板建築部分を増築したようである
その先にも現役で営業している戦前型看板建築が残っている
と、思ったら……
建物上部のクレハロンテントが消失していて、昔のファサードが見えてしまっているのは以前からだが、シャッターには廃業物件にハイエナのように群がる政党のポスターが
そして軒先クレハロンテントに記されていた「フレッシュ ヒロオ」の文字の一部が抜け落ちて「オ」だけになってしまっていた
これが現役で営業していた頃の姿だ。フレッシュの文字を裏切ることなく新鮮そうな果物が並んでいる
青梅街道をさらに西荻窪方面にすすむと新しい建物にされてしまった昔からの蕎麦屋があり、その先には店先にジャングルのように植物が並べられた店がある
そして、その隣にあるのが……
コジャレた書店にリノベーションされた変形凸型の銅板葺き看板建築である。そう、またしても銅板葺き看板建築!
これだけ銅板葺きを含めた看板建築が残っているのは、都内では台東区の東上野から小島にかけての一帯と、この四面道だけであろう
といっても前述したように年々その数は減少しており、危機的な状況にあると言っても過言ではない
ということで、次回はこちらの変形凸型の銅板葺き看板建築「本屋 title」を中心に紹介しよう
続く
†PIAS†
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