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🌼 ⑧消えた出桁造り商家と廃業したスコブル社
タイトルバック写真は猫のイラストがかわいいので何気なく撮影した「きものや ネコヤナギ」という店の看板だが、僕がなんとなく撮影していたら隣にいたＭちゃんが唐突に
「あっ、この猫のイラストヒゲがないですよ！」
と、鋭いツッコミを入れた。僕は見過ごしていたが、その鋭い指摘には頷くしかなかった
という前おきはともかく……
西荻窪は隣の吉祥寺と同じように取材の対象にすることよりも「日常」として訪れる機会のほうが多く、下手するとブログ用の写真など１枚も撮らないことすらある
これがもっと日常的に訪れている下北沢や高円寺、三軒茶屋などは、むしろ撮影などしないことのほうが多いぐらいだ
前回も触れたが、久しぶりに「取材対象」として訪れた西荻窪の町に感じたのは、記憶にあった風景と齟齬をきたしていることであった
そういった齟齬の原因は、上の写真を見ていただけば一目瞭然なように「更地」の増加であろう
たとえば、このやけにデコボコしたモルタル葺きの看板建築の横の更地にはかつて……
「バッグショップ セノオ」という、にしおぎ南銀座会で２棟めの出桁造り商家があったが、90年近い年月にわたりこの一角の風景を担ってきた建物を取り壊して、何か有意義なことに使うならまだしも更地ではまさに無駄死にであろう
日本の現状は川越や鎌倉のように、それによって観光資源になっているなどの特別な理由がないかぎり、どんな貴重な建物も保護の対象として検討もせず無意味に破壊している
などと、またしても怒りを覚えていると路傍にやけに目につくピンク色の花を見つけ、刺々しくなった気持ちが和らいだ
とはいえ、こんな目立つ色合いの植物が在来種とは思えず、おそらく野良化した観葉植物であろう
野良化した観葉植物のすぐ先でにしおぎ南銀座会の通りは井の頭通りにぶつかって終わった
以前は井の頭通り沿いにも……
（2018年11月撮影）
けっこう古い建物が残っていたが、大通り沿いだけに徐々に都市化の波が押し寄せ、ほとんどの建物が建て替えられてしまった
ちなみに、この通りを十数分ほど都心方面に向かったところには、戦前物件の物置小屋と出桁造り商家が残っているが、暑いのでスルーした
にしおぎ南銀座会の通りのすぐ裏を、駅前から続く通りが平行しており、そちらの通りにも比較的古い建物が残っているので、その裏道（西荻窪駅南通り）を使って駅前に戻ることにする
じつは、その通りに曲がってすぐのところにブックカフェがあったので、その店で休憩を取ろうと目論んでいたのに、事前にストリートビューでたしかめてみたところ廃業してしまっていた
おそらく昭和30年代頃の建造だと思われる渋い看板建築があった
店先にはまるで大きな鳥籠のような不思議なケージが置かれていて、何かと思ってよく見ると観葉植物を植えた鉢がディスプレイされていた
現役なのか廃業しているのか微妙なモルタル物件
よく見ると真新しい「YKK AP」という袖看板が出ているので、おそらく窓やサッシなどを扱う工務店のような店であろう
僕のようなクラシックモーターサイクルが好きなものにとって「AP」といえばブレーキで知られるロッキード社を想起するが、今はブレンボ社に買収されAPレーシングという社名に変わっている
こちらの通りはにしおぎ南銀座とは異なり戦後になってから敷設されたようで、戦前物件は見当たらないけれど高い建物が皆無なため昭和中期頃の風景を、よくとどめていた
なんだか目がチカチカしそうな派手なタイル張りの「中華料理 八龍」という店があった
出前用のカブが２台もあるので、おそらく繁盛している店なのだろう
やけに目立つ店構えなので「あっ、この店は前回の散策のときにも撮影したな」と、一瞬で記憶がよみがえった。たしか輸入雑貨とアンティークの店のはずだ
以前、何度か本を買ったことがある「スコブル社」という古書店は、何年も前に廃業したまま放置されている
屋号の「スコブル」は、もちろん宮武外骨から取ったのだろう。こんなマニアックな人物に由来する店名をつけるぐらいだから、サブカルチャー系に強い店で廃業が惜しまれる
ということで今回はタイトルに偽りなし。古書店の話をしたところで……続く
†PIAS†
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