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👼 ⑥雨ざらしの給湯器と天使が吹く管楽器 

 

 

 

 

 

京王新線の幡ヶ谷駅は地下化されているため甲州街道(国道20号線)の真下に位置している

 

駅を出て玉川上水方面に向かう通りが「西原通り商店街」で、そこは新宿西口の高層ビル街を抜けてすぐの場所にあるとは思えないような、昭和の雰囲気を濃厚に残す少し寂れた雰囲気の商店街であった

 

 

一方、その正反対の方向に伸びているのが「六号通り商店街」で、こちらの商店街には寂れた雰囲気などは欠片もない繁華街に近い賑やかな商店街だ。したがって、こちらの商店街が幡ヶ谷のメインストリートと言ってもよいだろう

 

ところが、その賑やかな「六号通り商店街」も水道道路を越えたとたんに、通行人の数は激減して、寂れた雰囲気に変わった

 

 

 

 

 

 

 

 

戦後型の看板建築が主とはいえ現代的な空気を感じさせたそれまでの「六号通り商店街」とは一転して、水道道路から先は「西原通り商店街」と同じような寂れた気配が漂っていた

 

とはいえ、銀行の支店などもあるし店舗密度は、先ほどまでの「六号通り商店街」と比べてさほど下がっているわけではないから、寂れた雰囲気に変わってしまった要因は、まず間違いなく僕が唱える……

 

「広い道路は町を分断して結果として滅ぼす」が、またしても実証されてしまったということになる

 

 

などと、複雑な気分になっていると、目の覚めるような好みの物件が!

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらの物件は、感覚がちょっと斜め上に突き抜けているファサードの看板の色彩感覚が素晴らしい。こんな色の組み合わせは、凡人のセンスからは絶対に出てこない

 

また、このヘタクソと紙一重のバランスを保ったレタリングのフォントが、なんとも言えない深い味わいを醸し出している

 

 

僕は作為的に作られたレトロ感というのが嫌いだ。そこには「どう? かわいいでしょ」という媚びた心が透けて見えるからだ。こういった感覚というものを他者に伝えるのは難しいが、わかるひとにはわかると思う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとなくアンバランスな建物の佇まいもよいし、廃墟寸前のヤレた雰囲気もよい。細部のムダに凝ったディテールにもぐっと来るものがある

 

だが、何よりも僕を惹き付けたのは、商品サンプルと袖看板を兼ねたような錆びついた給湯器のディスプレイであろう

 

 

これを見て、真っ先に連想したのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が「amazarashi」にハマるきっかけとなったこちらのPVのアニメである

 

ロックを聴きはじめてもはやウン十年。たいていの音楽はちょっと耳にすれば「ああ、あの路線にあの感じのアレンジね」と、最後まで聴かなくてもだいたい見当がついてしまう

 

 

つまり、新鮮な驚きとか感動をロックに対して覚えなくなって久しかった僕の脳天にamazarashiは、ガツンと激しい一撃を加えてくれた

 

常々、僕はロックの歌詞などは、どうでもいいと思っているが、この曲の

 

「あの時と同じ膝をかかえて 部屋から青い空を見上げて」「背の高い夏草でかくれんぼ 鬼は迫り来る時間の流れ」「もしも今日があの日の続きなら 僕らの冒険を続けなくちゃ」なんて歌詞は、そう書けるものではない

 

amazarashiの歌詞の世界は綺麗事の愛や友情、上っ面だけの励ましが溢れ辟易とするちまたの音楽とは明らかに隔絶しており、絶望の縁まで追い詰められた者の切実さが伝わってくるかのようだ

 

 

という話はともかく……

 

気になるのは、この廃業して十年ぐらい経っていそうなこの店が、果たしていつ頃まで現役で営業してたのか、ということであろう

 

 

そこで、いつもの過去のストリートビューを見てみると意外な事実が判明した

 

 

 

 

 

 

 

 

とっくの昔に廃業しているものと思っていた「村田工業所」は、驚いたことに2022年までシャッターが開いていたのだ

 

ということは、廃業した(Googleマップに記載なし)のは、ごく最近のことだったわけだ。“ひとは見かけによらない”という慣用句があるが、どうやら建物も見かけによらないようだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

商店街をさらにすすむと土蔵造りの建物があって、一瞬テンションがMAXに跳ね上がるが、視界に入った0.3秒後には……

 

「これは土蔵造りを模した戦後に建てられた物件だな」

 

という結論を導き出していた

 

しかし建物の建造年代の件はともかく店自体は、れっきとした昭和初期に創業された「ふるや 古賀音(こがね)庵」という老舗の和菓子屋なので、海鼠壁の土蔵造り商家を模す資格は十分あるだろう(もっともそんな資格があるかどうかは知らないが)

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらはその向かい側の路地にあった「・・・」という、店の看板なのか路上アートなのか判断がつきかねる不思議な店(?)である

 

 

そういえばシガーロスに( )というタイトルのアルバムがあったが、そのアルバムは架空の言語で歌われているため歌詞に意味はない

 

昔フランスにマグマというカルトなプログレバンドがあったが、彼らもロックのリズムにノリにくいフランス語を捨てて、コバイヤ語という言語を勝手に創造して(もちろん独自の文法もある)歌っていたけれど、その独特の語感がおもしろく後年、日本で高円寺百景というフォロワーバンドを生み出した

 

 

あれっ、話が横道に逸れたぞ。ということで元に戻す

 

よく見ると「・・・」の下に虫眼鏡で見ないと読めないような小さな字で「ten ten ten」と記されているからには、おそらく「てんてんてん」という店なのだろうが、それがどのような業態なのかを示すヒントはどこにもなかった

 

 

またしても余談になるが、この「…」というものは三点リーダーと呼ばれており、文章でこれを示すとき「…」というのは間違いで「……」と、二度繰り返すのが正しい

 

嘘だと思ったら近くにある文庫本なり、何なりを開いてもらえば「…」ではなく、もれなく「……」になってることがわかるだろう

 

 

よく見ると店の入り口の前に停められているママチャリのカゴが、店の壁面と同じ色調のピンクで塗られているところに、尋常ではないこだわりを感じさせる

 

 

 

 

 

 

 

 

これは別の路地にあった「笹舟」という和食料理屋(たぶん)だが、間仕切りのパネルを並べたような外装が、なんともユニークなデザインである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらのモルタル物件は、昭和30年代に考えられたような当時の“最先端”なデザインが素晴らしい

 

ファサードに◯と「加」という文字が記されているので、加藤さんが経営する店とか、あるいは加賀屋とかいう屋号の店だったのだろうか?

 

 

どうでもいいけど撮影していたらちょっとロックテイストのカッコいいスタイルの女性が通りかかる写真が撮れたが、これは狙ったわけではなく偶然である

 

 

こちらの物件も例によって……

 

 

 

 

 

 

 

 

過去のビューを確認してみると2014年までは「染と帯 加一屋」という染め物兼太物の和服関連の店だったようだ

 

加賀屋という説は、当たらずとも遠からずだったわけだ。さすがオレ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その先で「六号通り商店街」は、けっこうな急斜面の六号坂という下り坂になった。急坂にある商店街というのは、なかなか風情があるものだ

 

この坂道は、まず間違いなくこの先を流れていた神田川の支流、和泉川が造りだした河岸段丘であろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

坂道を下りきったところを、比較的広い通りが横切っており「六号通り商店街」は、ここでひと区切りついているような雰囲気であった

 

信号の脇には天使のトランペットという名のついている花が植えられており、なんとなく夏の到来を想わせた

 

 

商店街の坂道は、この先を流れていた和泉川が造りだした河岸段丘なので、暗渠好きとしては、由来となった川跡ぐらいは見に行ってみよう

 

と、考えていたが目の前に興味津々な物件が目に入り、すっかり気持ちを持っていかれた。その物件とは……

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

†PIAS†

 

 

 

 

 

 

 

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