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🍣 ④甲州街道を超えて六号通り商店街へ
シリーズの冒頭で述べたように、幡ヶ谷の商圏は甲州街道を挟んで主として「西原通り商店街」と「六号通り商店街」のふたつに分けることができる
もちろん、甲州街道沿いやそのふたつから離れた場所にも店舗は存在しているが、大まかに言うとその2つに集約されるという意味だ
とはいえ、僕は些末な枝葉の部分も追及してみたい年頃なので、甲州街道沿いもちょっと歩いてみた。というのは……
西原通り側から見た甲州街道の向こう側に、ちょっと気になる戦後型の看板建築の町並みがあったからだ
新しい甲州街道(国道20号線)は、当然戦後になってから敷設されているので、昭和初期の建造物などにまったく期待は持てないが、下高井戸には甲州街道から、ほんの数メートル奥に入った場所に出桁造り商家があったという事例もある(すでに解体済み)
甲州街道(国道20号線)と平行する京王沿線の商店街は、だいたいそうだが個人商店が主の商店街は駅と直角方向に発展し、ファミレスや大型店は街道沿いに発展する傾向がある
もちろんメインストリートが京王線と斜めに交差している下高井戸のような例外はあるが
幡ヶ谷の場合、西原通りから甲州街道を越えると最初に目についたのは、東京近郊ならどこにでもある「さぼてん」というトンカツのチェーン店であった
しかし、その後方に視線を送ると今どき珍しく個人経営の「かんべ書店」という袖看板が目に入ったので、書店好きとしては、そちらに行かざるを得まい
店頭に雑誌が並べられた見るからに昔ながらの町の書店といった佇まいにノスタルジーがこみ上げ、しばし呆然見とれていたらシャッターを押すタイミングがズレてしまった
僕の目論見では書店の店頭がすべて見えるアングルで撮影したつもりなのに、帰宅後に写真をチェックしたら書店ではなく、たまたま通りかかった運動部女子が主役になっていた
何度も書いているように、僕は現場ではモニターなど一切見ていないし、撮影した写真もほとんどチェックしないため、時おりこういった意図しない写真が撮れてしまうのが楽しい
「かんべ書店」の隣にもレトロな雰囲気を漂わせた「シロタ酒店」という酒屋があった
入り口の扉が半分閉ざされているが営業中で、カウンターには店のひとが座っていた。しかし店内はやけにガランとしており、あまりというか、ほとんど酒屋には見えなかった
では何を売っているのかというと、どうやらメインの商材は酒ではなくタバコのようで、他ではあまり見かけないような珍しい洋モクも並んでいる
あらためてファサードの看板を見るとすでに「酒」という文字はどこにもなく、ただ単に「tobacco」とだけ記されているので、どうやら実質は酒店という名前のタバコ屋になっているようだ
セブンイレブンの隣には「太呂八寿司」という渋い寿司屋があった
ところで寿司屋のウィンドウディスプレイには、なぜコケシや人形が並んでいるのだろうか?
やはり生物なので見本を並べる意味がないからだと思われるが、だったらショーウィンドウ的なものなど設けずともよいのに。と、思ってしまうけれど……
保冷ケースがなく白木のカウンターだけの店内に、メニューを見ると「時価」しかない高級寿司屋との差別化のためか?
どうでもいいけど天ぷら、鰻、寿司と、江戸時代には庶民が気軽につまんだ食べ物は、今や高級品になってしまい、僕のようにエンゲル係数を低く抑える派には無縁な食べ物になってしまった
ちなみに、由緒正しい江戸前の寿司は、現在も残る穴子寿司や、マグロのヅケのような何らかの仕事が為されたもので、酢飯に生魚をそのまま乗せたものはなかった
鰻が高級食材になったのは江戸中期以降に、関西から蒸してから焼く料理法が伝わってからで、それまでは安くて美味いが品のないスタミナ食品扱いであったことを知るひとは少ない
「太呂八寿司」の先も甲州街道沿いに店は並んでいたが、いかんせん建物は面白味の欠片もないビルばかりになってしまった
まあ、ここからさほど歩かない場所は、もう高層ビルが林立する新宿西口なのでやむを得ないが、散策としてはツマラナイので、いよいよこちら側のメイン商店街である「六号通り商店街」を散策する
その途中に、ちょっとよい雰囲気の路地があったから、あとでこちらも見てみよう……と、考えつつ「六号通り商店街」へ
ここで表記についての話をすると「六号通り商店街」はアーチには「り」を省略して「六号通商店街」になっているが、シリーズ冒頭で「六号通り商店街」と読み方に沿った表記で記したので、そのままこちらの表記を使用する
という、どうでもいい説明はともかくこちらの「六号通り商店街」は「西原通り商店街」と比べて道幅が狭い感じの通りで、フェラーリ・テスタロッサがすれ違うことはできないだろう
しかし、人通りは多くても廃業している店舗が目につき、なんとなく寂れた雰囲気だった「西原通り商店街」とは異なり、通りに入ったとたんにパワーを感じさせる賑わいを見せていた
昔ながらの洋品店があるかと思えば、タイ料理店、コジャレた洋食レストラン、ペットショップやブックオフなどが並び、廃業した商家をリノベーションした店舗が目についた「西原通り商店街」よりも現役の空気が濃厚に漂う
そして「西原通り商店街」では閉まっていた青果店は店を開いており、客足が途切れることなく賑わっていた
よく見ると「大関屋青果店」の2階には、あまり馴染みのないモンゴル料理店があった。おそらく東京は世界一◯◯料理店の多い町であろう。以前どこかでイスラエル料理店を見たことがある
という話はともかく「西原通り商店街」では、さすがに都心部近くなので通行人はたくさんいたが、誰もがただ「通行」しているだけで「買い物」をしに来ているような雰囲気を感じなかった
ところが、こちらの「六号通り商店街」のほうは、明らかに通行しているだけではなく、買い物なり飲食なり何かしらの目的を持ってひとが集まっているといった活気がひしひしと伝わってくる
ということで、次回はこの賑やかな「六号通り商店街」を散策してみよう
†PIAS†
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