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🏠 ⑤煤けたモルタル物件と半もじゃハウス
かつては旧中山道の宿場町として栄えた板橋宿は、駅から隔絶している環境にも関わらず現在も賑やかな商店街として栄えている
これは非常に珍しいケースで、たいていは宿場町の基本的性格を保てず、たとえば八王子などは現在も栄えてはいるが、宿場町だった甲州街道はすっかり寂れてしまい、繁栄は郊外のハブステーションとしての意味合いに変わってしまっている
しかし、繁栄が続いている代償として、寂れてしまった埼玉県の宿場町などには古い商家が残ったが、現在の板橋宿にかつての面影を残した建物は「宮歯科医院」や「板五米店」などのわずかな物件が残るだけになってしまった
「板五米店」の先は仲宿でもっとも賑やかなエリアなので、老舗が残っていたとしても近代以降に建て替えられてしまっており、古い建物は見当たらなかった
といったシチュエーションが続いたが、しばらくゆくと唐突に……
煤けたように真っ黒く変色した元はベージュ色だったと思われるモルタル外壁の古い商家が!
かつては店舗だった部分はズラリと並んだ自販機でふさがれており、店の入り口のかわりに取ってつけたようなドアがつけられている
この物件は、僕が初めて旧中山道を記事にした2017年の段階で、すでにこのような姿にされてしまっていたので、どのような商売をしていたのかわからない
そこでいつものように過去のストリートビューを見てみると……
もっとも古い2009年の映像では木製の引戸が確認できるが、屋号を記した看板などは出ておらず、店舗はすでにほとんど自販機で埋もれており、商売をやめてしまっているような雰囲気であった
この廃物件のあたりから店舗の密度が少し下がり出し、中心街からは外れたような印象の風景に変わるが、その最大の原因は
このあたりから、旧中山道に入ってすぐの場所でウンザリしたようなマンションが再び目につきだすのだ
歩きながらふと右手の路地に視線を送ると何やら気になるものが目に入ったので、ちょっと路地裏に寄り道すると
大好物の平屋建ての看板建築があった。商家のように全面が開口部ではなく、入り口のドアがひとつ。それなのに建物にはズラリと並んだ窓……
この造りは元クリーニング店と見て間違いないだろう
もうひとつ気になったのは、ラッパのような黄色い花が悪目立ちしている住宅で、やけに葉っぱの密度が高い樹木と何故か屋根にだけ、やたらと蔦が蔓延って半もじゃハウス化している
建物自体はきれいに整備されているので現役だと思われるのに、もじゃ化の勢いが生々しく、まるで生き物のような存在感を放っていた
路地裏から再び旧中山道に戻ると、先ほどのような繁華街的な人出ではなくなったとはいえ、賑やかな商店街はまだ続いていた
古民家を模したような造りの「新月堂」という和菓子屋は、屋号の横にわざわざ「中山道板橋宿」と記されているので、おそらく老舗なのだろう
調べてみるとやはり昭和11年創業の老舗の和菓子屋で、すべて手作りの板橋最中が名物のようだ。僕は最中はさほど好きではないが、ホムペの写真を見るとここのはちょっと食べてみたくなった
前述したように、旧中山道の仲宿は現在も賑やかな商店街になっているため、老舗であっても新しく建て替えられてしまった物件が多い
以前の散策のときには、「リサイクルショップ クールドッグ」という戦前物件の看板建築付きの平入切妻の戦前物件の商家が残っていたが、久しぶりに訪れてみると、跡形もなく取り壊されツマラナイ建物に変わっていた
僕が撮影したアングルだと戦前物件かどうかわかりにくいので、いつものように過去のビューからキャプチャすると
飾りがついたぶっとい破風や建物の形状から見て、木造二階建て平入切妻の典型的な武州スタイルの商家であることがわかる
驚いたのは、その並びにも戦前~戦後間もなくといった感じの看板建築があったことだろう
僕は見た記憶がないからビューを年代ごとに検証してゆくと、残念なことに前回の散策の前月に、解体されていたことが判明した。つまり僕はわずか1ヶ月の差で見逃したわけだファッキン!
このように今の東京は、ちょっと油断すると知らないうちに古い建物が消えてしまうから困りものだ
そして、それに取って変わるように蔓延るのは……
このような邪魔っけなタワーマンションで、旧中山道は平行する国道方面から押し寄せる脅威に直面している
商店街の店舗密度が低下するのと引き換えに、新しいマンションが目に付きだすが、その1階にうちの近所にもある普段よく利用している「ライフ」というスーパーが入居していた
コスパ的に弁当は「OK」に負けるが「ライフ」のカレーパンは、スーパーマーケットのオリジナルとしては他の追随を許さない傑作で、よく購入している
ちなみに、写真には写っていないけれどライフの隣に建っているごく普通の建て売り住宅が、かつての板橋宿名主の飯田家の跡地であるが、現在その遺構は何も残っていない
などと、板橋宿の過去に想いを馳せていたら、ライフの横の道に気になるものが見えたので、またしても寄り道することにした
続く
†PIAS†
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