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🍻 ②タワーマンション銀座の場末町飲み屋街
武蔵小杉の町は、前回の川崎市中部の記事では完全にスルーしてしまった
武蔵小杉が元々どのような場所であったかは、前回の記事に書いたので省略するが、かつての武蔵小杉は、駅前付近に若干の店があるだけで「法政通り商店街」そして「サライ通り商店街」という、ごく小規模な商店街しかない
この近隣では隣の新丸子が、戦前は一種のリゾート地として温泉や三業地があり、現在は寂れてしまったが戦後からしばらくは、川崎市中部きっての賑やかな商店街であった
要するに武蔵小杉は、タワーマンションラッシュによって巨大なショッピングモールのグランツリーができたぐらいで、現在も商店街としてはごく狭い範囲内に店が固まっているだけという特殊な環境にあるわけだ
こちらが府中街道から「サライ通り商店街」が分岐している地点である
商店街自体は「孤独のグルメ」で取り上げられた料理屋などもあるが、さほど栄えているわけではなく、百メートルもゆくと住宅街に飲み込まれてしまう
こちらは二ヶ領用水の支流の脇にある看板建築のクリーニング店
以前はこの先に戦後型看板建築の古書店などもあったが、ずいぶん前に解体されて更地にされてしまい、現在は無意味なコインパーキングになっている
このクリーニング店の他には「サライ通り」に見るべきものはないから再び「渡来武」があった駅前に戻って、東横線のガード下を元住吉駅のほうにゆくと……
「スナック マキ」「BAR BUSU」など場末の町にありそうな屋号の飲み屋が並んでいた
タワマン銀座の武蔵小杉のイメージとは相容れないような垢抜けない飲み屋街に思われるが、むしろこちらが正しい姿と言えるだろう
以前は府中街道沿いに、このような飲み屋や飲食店が並んでいたが、前述したとおり府中街道の拡幅工事により、根こそぎ破壊されてしまい道路予定地になっている
2017年に撮影した、府中街道の町並みを、大型ショッピングモール・グランツリーの裏手から見た構図には、ブリキ波板の渋い看板建築が写っている
下の土蔵造りの建物は両国から移築した元相撲部屋の建物を利用した飲食店であるが、今は跡形もなく取り壊されて、どちらも存在していない
府中街道と綱島街道の交差点から丸子橋方面を見る。武蔵小杉駅は左手にある
この場所から東横線のガード下に戻って隣駅の元住吉方面のほう、先ほどの「スナック マキ」「BAR BUSU」の少し先に向かうと
大好物の錆び錆びブリキ波板のトンガリ物件があった。この造りは間違いなく町工場のたぐいであろう
前述したように武蔵小杉の周辺、とくに現在タワーマンションが並んでいるあたりは企業のグランドや東京機械などの工場があったような場所で、その裏手には南武線の隣駅、向川原方面に向かい新幹線のガード下までこのような町工場が蝟集していた
その町工場に埋もれるような路地裏アパートに住んでいた知人の部屋に遊びに行って帰るとき、まだ夜の7時半ぐらいなのに、薄暗い路地にはまったくひと通りもなく不気味な雰囲気だったことを覚えている
ーーとまあ、前座の武蔵小杉はこれぐらいにして、隣駅の元住吉に向かう
元住吉の商店街は圧倒的に西口が栄えており、前のシリーズで紹介したように、駅から1キロぐらい先のほうまで商店街が続いているが、東口の商店街は綱島街道までは賑やかだが、そこから先は寂れている印象が強い
綱島街道を越えると最初に目につくのは片流れの戦後型看板建築の「わいわい」という飲み屋が入居している物件であろう
しかし僕が注目するのは「わいわい」ではなく、その隣にある……
軒先のクレハロンテントが破れてしまい、下から「ジュエル靴クリーム」「ボックス靴店」という木製のファサードが見えている隣の店舗跡だ
「ジュエル靴クリーム」は、古い靴屋の看板などでよく見かけるが、現在も営業しており高品質な靴クリーム「ヴィオラ」などの製品で知られている
じつは以前、僕も使用したが高品質ゆえにケミカル成分は少なく天然成分がメインのようで、日本の湿度ではカビやすい。なので、大量の靴を所有するため、必然的に1足の靴の手入れ頻度が低くなる僕には向いていないことがわかった
逆に僕がメインで使っている靴クリームは、少ない頻度でもカビないように、あえて靴にはよくなさそうなケミカル成分が多い製品を使用している
つまりマメに手入れする前提ならばかなりオススメの製品である
「わいわい」の少し先には
ファサードのマテリアルに、まったく味わいのないサイディングボードを使用したこのような味気ない看板建築がある
古い建物を愛好する者が、この物件を初めて見たらまず間違いなくスルー決定であろう
ところがこの建物、以前は……
こんなファンタジスタな錆び錆びブリキ波板物件だったのだ
ところが、ある日通りかかると新しいテナントが入居したため、この錆び加減はマズイと思ったのか、真っ黒いサイディングボードで覆い隠してしまい、この奇跡的な錆びっぷりが見えなくなってしまっていて愕然とした
元住吉に行ったときはこの建物が見たいがために、わざわざ駅から遠いこんな場所に寄り道していたのに残念でならない
続く
†PIAS†
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