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🥟 地上げされた町並みと向かいの古書店
巣鴨駅から「巣鴨地蔵通り商店街」を抜けて都電荒川線の庚申塚の電停を過ぎると、商店街の名称は「庚申塚商栄会」に変わる
そして名称だけではなく商店街の雰囲気も、それまでの……
観光地的な繁華街→よくある普通の商店街→ちょっと寂れた商店街と、徐々にフェードアウトしてゆくように町並みの印象も地味になってゆく
ーーが、僕のような昔ながらの商店街の雰囲気が大好きな変わり者にとっては、ここからが散策の本番と言っても過言ではない
現代的で賑やかな商店街などは、わざわざ訪れなくても近所にいくらでもあるからだ
さっそく昔は、どこの町にもあったような軒先の日除けテントのストライプがいい感じの戦後型看板建築の果物屋があった
果物などは今どきの主婦ならスーパーで済ませてしまうだろうけど、こういった専門店で買うとミカンひとつとっても、なんとなく安心感がある
もっとも、僕は果物も野菜もあんまり食べない肉食人種なので、果物屋には用事がないが
ファサードの看板の影に、ほとんど隠れて見えないが黄色く塗られたトタンの雨戸が渋い「有限会社 タニシマ」というガス機器を扱う店は、この日は休みのようだが現役のはずだ
じつは、この場所を見て、タニシマは残っていたのに、見たかった隣の物件が跡形もなく消えて、どうでもいいマンションになっていてガッカリした
僕の勝手な都合では、このタニシマの隣には……
(2017年撮影)
こんな素敵なスクラッチタイル張りのRC構造の古い建物があるはずだったのだ
いつ頃まで残っていたのか過去のストリートビューで確認してみると、2020年頃に解体されてしまったようだが、ひとつ意外なことがわかった
ビューでキャプチャした画像を詳細に観察すると……
てっきり僕はスクラッチタイルだと思いこんでいたが、よく見るとスクラッチタイルのように釘で引っ掻いたような模様の表面ではなく、布目タイルのような少し輪郭のハッキリしない模様のタイルだったのだ
これなどは人間は自分の都合のいいように、勝手に記憶を操作してしまうという一例であろう
そして、もうひとつショックだったのは、僕の記憶のなかでは看板建築がズラリと並んでいるはずだった向かい側の町並みが……
アルミ板張りのようなメタリックな看板建築の電気店を除いて、周囲のすべての建物が解体されて、無惨な更地にされてしまっていたことであろう
「GORILLAチェーン 西巣鴨店」という、ヘンテコな屋号の電気店の左側は、右側と違って単なる更地ではなくコインパーキングにされていた
おそらくこれは、マンションにでもするつもりで地上げしたが、電気店が立ち退かないので、やむを得ずコインパーキングにしたのではないだろうか?
しかし、このまま電気店が立ち退きを拒否し続けると、先ほど「巣鴨地蔵通り商店街」で見かけた布団屋のように、この看板建築を取り囲むように、ファッキンなマンションが建てられてしまうかもしれない
この電気店の周囲に、かつてどのような看板建築が建っていたのか、こちらも過去のビュー(2010年)でたしかめてみると
かつてこの場所には、こんな素敵な看板建築の町並みがあったことが判明した
意外だったのは僕が以前散策した2017年当時は、有名な行列店「ファイト餃子」は、すでに「巣鴨地蔵通り商店街」の裏手に移転していて、ここには他の店があったことだろう
今回は散策したのが、もうすぐ夕食という時間帯に差し掛かっていたから、おそらく行列が出来ているものと思われるため「ファイト餃子」で夕食を食べるという予定にはしなかった
という、僕の夕食の都合はともかく、この電気店の少し先にもうひとつ無事な姿を確認しておきたかった物件がある
よかった。こちらは無事に残っていた
それがこちらの「かすみ書店」という、昔は中央線のどの駅で降りても必ず1軒ぐらいはあった昔ながらの雰囲気をとどめた町の古書店である
1990年代以降、ブックオフの台頭によって専門的な書籍を扱うような店を除いて、こうした町の古書店は次々と淘汰されてしまい、ほとんど壊滅してしまった
そんな状況のなか、こうした昔ながらの店構えの古書店は今や絶滅危惧種となり、ほとんど見かけなくなってしまった
かつては高円寺などは古着屋の町ではなく、20軒ぐらい古書店がある町だったことを知っているのは、かなりレベルの高い古書マニアであろう
現在、僕が最寄駅にしている南武線の武蔵新城駅も僕が高校生の頃は、5軒の古書店があったが、今ではブックオフ1軒しかなく「古書店」は壊滅した
余談だが、その当時の武蔵新城には、グループサウンズの異端児、伝説のロックバンド、ジャックスの早川義夫が経営する「早川書店」という、超マニアックな新刊書店もあった
「早川書店」は、町の本屋のくせに現状手に入る岩波文庫がすべて揃っていたり、普通の書店では扱わない自主出版のようなマイナーな書籍も並んでいて、平積みの書籍にはすべて店主の書評が細かい文字で記されたポップが立っていて、その熱意に圧倒されたものだ
という、どうでもいい話はともかく、以前から気になっていたのが「かすみ書店」の一角に、まるで寄生するように「ブティック BELL」という黄色い軒先テントがあることだろう
このテントは、僕が初めて「かすみ書店」を見て感動した学生時代にもあったのかどうか、その記憶は完全に抜け落ちてしまっているが、少なくとも2016年に見たときは、ずいぶん以前に廃業してしまっているような雰囲気であった
そこで、またしても過去のビューを駆使してみたが、もっとも古い2010年の段階で、すでに現状と変わらずこんな感じで、いったいいつ頃まで営業していたのだろう
ということで、寂れた雰囲気の商店街に変わって僕の筆も熱を帯びてきた。というのは何度も書いているように、今回の散策はここから先が本当のクライマックスだからだ
続く
†PIAS†
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