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🌿 ⑫もじゃ多肉植物ハウスと2階のトマソン
しもふり銀座商店街は川跡らしく蛇行しながら、先にすすむにしたがい染井、西ヶ原と名称を変えて延々と2キロあまりも続いていたが、都電荒川線の滝野川一丁目電停方面からの道と丁字路で交わったあたりで終わる
しかし、その丁字路を左に曲がった先にもわずかに店舗が残っていた
こちらは前回の記事の半分を使って鎮魂歌(レクイエム)を捧げた「山新豆腐店」の現在の姿である
過去のストリートビューを見ていたら、元気に働く夫婦の姿が残っていて
不覚にも泣いた。ビューを見て泣いたのは日本広しといえども僕ぐらいだろう
この店で買い物をしたこともなければ、この夫婦と言葉も交わしたこともない。ただ通りすがりに会釈しただけの、たったそれだけの関係なのに、何故こんなにも心を揺さぶられたのか自分でもよくわからない
願わくは、この仲のよさげな夫婦の老後に、幸多からんことを祈らずにはいられない
ついでに並びにあった瓢箪や丸い不思議な窓のようなものがあった不思議な物件の過去を、ビューで探っていたら曲がり角にある廃業してしまった「魚末」、「山新豆腐店」の斜め向かい側に残っている……
こちらの「きそば 巴屋」も、かなり不可解な物件であることが判明した
この蕎麦屋は前回の散策のときも閉まっていただけではなく、なんとなく煤けた佇まい、そして、蕎麦屋につきものの道具類などが一切見当たらず僕は廃業しているものと判断していた
というのも、近所にある普通の蕎麦屋の外観を思い浮かべてほしい。そこにはたいてい何かの容器や干されたザルや手拭い、バケツ、貼り紙やポスター、出前に使うスーパーカブ、あるいは植木鉢など、何らかの活動の痕跡が認められるはずだ
ところがこの店には、そのような生活感が一切ないのだ
そのわりにGoogleマップには記載があるし、さらにビューのどの映像も店は閉まっていたが、店の横には出前用のバイクが置かれ、それは明らかに放置されているのではなく、ザルが干されていたり、コンビニ袋でカバーされていたりと、使われている形跡が見受けられる
ということは、店舗の営業時間は短いけれど出前に対応していて現在も営業しているという可能性が考えられる。しかし、口コミなどの情報は一切なく、営業しているんだか廃業しているんだか、さっぱりわからなかった
もちろん、いつものようにGoogle検索をかけたが「食べログ」「そばデータベース」に店の記載はあるものの口コミはおろか営業形態すらわかならい始末であった
その少し先には「焼き鳥 鳥徳」、隣に「中華 わらく」という、いかにも老舗といった佇まいの町中華の店があった
こちらは、どのサイトやブログを見ても評判がよく町中華の名店とのことなので、情報が一切ない「巴屋」との落差に戸惑う
ちなみに、この場所で30年ぐらいやっていそうな老舗にしか見えないが、前回、散策したときにはまだ「家庭料理 ゑちご」という店だったので、まだ開店してから7年経っていないことになる
ではいったい、いつからここで営業しているのか調べようとして、ストリートビューを見ると2018年からまったく更新されておらず、しかも、またしても映像空白地帯で、この店の周辺の映像が存在していなかった
Android版のストリートビューには、このような通行不可状態な場所が多く、今回も数ヶ所で先にすすめなくなっていた
そのわりにゼンリンとの関係を切ってから面白味がなくなり、以前は鳥越おかず横丁のカエルの置物に「カエル大明神」というタグがあったりと楽しめたのに、そういったユーモアもなくなってしまった
そういえば堀切菖蒲園の商店街にある「旧・山添由次郎」という謎のタグは残っているが、ビューでその前を通過すると首都高の上に飛ばされる愉快なバグは修正されていた。そのくせ真っ直ぐすすめないエラーは直っていないのはどういうわけだ
という話はともかく結局、食べログのレビューから地元民のものを探して読んだところ、まだ開店してから4年ぐらいしか経っていないことがわかった
店主は手作り餃子の店で10年ほど修行した本格派で、安くて美味しい店という評判ばかりであった
こちらは前回の散策でも、無駄にたくさん撮影してしまった町工場のような建物の廃墟である
過去のビューを見ると前回の散策時はおろか、2010年の段階ですでにこの状態で、少なくとも14年ほど放置されているわりに、驚くほど建物の状態がよく、さほど劣化が見られないところが不可解だ
建物の2階の窓には、窓全体を覆ってしまう青いビニールのテント状の日除けがあるのが印象的である
このヘンテコな日除けは、他の町でも見たことがあるが「ここまで徹底的に日光を避けるのなら窓なんて作らなければいいのに」と、つい思ってしまう
しかし、放置年数のわりに劣化が少ないとはいえ、前回僕が散策したときにはまだ無事だった
道路に面した側のテントは消失していた。念のため確認してみたが、前回僕が撮影した写真には、まだ無事なテントの姿が写されていた
しかし、それよりも驚いたのはベランダに植えられていたものと考えられる多肉植物が、まるで建物を飲み込もうとするかのように、不気味にベランダを埋め尽くして、さらにその勢力を伸ばしていたことであろう
3枚前の写真のベランダをよく見ると、背筋が凍りつき鳥肌が立つような恐ろしいものが写っている
えっ、よくわからない? では拡大した写真を貼る
どうやらベランダの上に置かれたテーブル状の少し高いところの鉢植えの多肉植物が、そこから外に飛び出して14年ものあいだ枯れずに勢力を拡大し続け、あるいは日光を求めてベランダを占拠した挙げ句、さらに外界に飛び出そうとしていた
多肉植物が、この勢いのまま侵略を続けたら、そのうちこの建物は「もじゃ多肉植物ハウス」になってしまうにちがいない(それはそれで、ちょっと見てみたい)
そのすぐ先には、またしても町工場のような建物があった。こちらの建物は2階がアパートだったような雰囲気である
ところで、この建物、通りに面した部分の2階部分を見上げると
絵に描いたような見事なトマソンが! さすがに外側にドアノブはついていないが、どう見てもドアにしか見えないものが2階の壁面に、しれっと造られていた
昔はここに外付けの階段でもあったのだろうか?
「もじゃ多肉植物ハウス」の先で通りは、谷田川の支流が造り出したのではないかと思われる河岸段丘の上り坂にさしかかり、そこから先は完全に住宅街になってしまったので、引き返して都電荒川線の滝野川一丁目電停に向かうことにした
ちなみに谷田川は、僕がリトルシガーを一服したタバコ屋の角を左に曲がった先、巣鴨駅近くにある染井霊園あたりに、かつて存在した池が源流になっているそうだ
そして滝野川一丁目の電停の先、頭上を通る首都高速中央環状線がかぶさる明治通りを越えた先にあるのが、ゴール地点に設定した王子駅である
†PIAS†
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