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👩 マーケット型有蓋式商店街・亀甲マーケット 

 

 

 

 

 

 

 

これらの絶滅が悲劇的であるゆえんは われわれの世界の一部が消えうせたというところにある

ロバート・シルヴァーバーグ

 

 

 

 

 

 

 

さて、この短いシリーズの最後を飾るのは、どちらもすでに解体されてしまい、もはや地上から永遠に消え去ってしまったリョコウバトやドードー鳥、あるいはタスマニアタイガーのような物件である

 

最初に紹介する物件は、かなり大規模な建造物だが僕が最初に取材した2017年当時で、すでにほとんどの店舗は廃業しており、居酒屋と洋品店が残るだけであった

 

 

内容的に言えば昔はどこにでもあったタイトルにある「マーケット型有蓋式商店街」のひとつに過ぎないけれど、圧倒的に個性的な外観により強いインパクトのある物件になっている

 

それが伝説の「亀甲マーケット」である

 

 

 

 

 

 

 

 

見よ! この美しい姿を

 

これを見て驚かない者など果たしているのだろうか。まるでヨーロッパの風景を見ているかのような多角形の屋根。しかも、それは錆びついたブリキ波板で構成されているのだ

 

屋根は壊れるたびにその都度修理されていたようで、場所によってマテリアルも違えば錆びていたり、塗装が日焼けしていたりと狙ってやっては決して生まれないナチュラルなパッチワーク模様になっている

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、画面の上を横切る広い通りは東芝の巨大な工場の前を横切っており、この通りを画面下方向に15分も歩くと国道1号線があり、その交差点をわたったところに「小向マーケット」「小向日用品売場」がある

 

つまり、東芝の巨大な工場を挟んで東西にカルトな(今となっては)マーケットが存在していたのだ。川崎恐るべし

 

 

それにしても、上空から見るとこの手のマーケットとしては異例に大きく周囲のマンションなどの倍ぐらいの敷地面積があるのが驚きだ

 

この建物のことを八角形と書いているブログがほとんどで、なんとなく僕もそう思っていたが、航空写真を見ると十角形であることがわかる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、この物件、周囲にはマンションやビルが建てこんでいるため、地上から見てもこのようなスーパーインパクトの建物だとは思えないし、入口はむしろ地味なので見落としてしまう可能性が高い

 

かくいう僕も鹿島田などは庭のようによく知っていると思っていた場所だが、ここにマーケットらしきものがあることは以前から認識していたのに、このようにインパクトのある物件だと気がついたのは、取材する少し前の話であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらも木製の柱によるトラス構造に、透過性の高いタキロン波板を使用するという、この手のマーケットでは定番の手法が取られており、内部は少し薄暗い優しい光線の具合である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして小向マーケットと同様に、廃業してしまった店舗の古い看板が朽ち果てながらも残っており、それがえもいわれぬ魅力となっている

 

薄暗い通路の真ん中に屹立しているのは大黒柱だはうか? だとすると、この柱の位置が中心点かもしれない

 

 

薄暗い訳は、この取材時に営業していたのはわずか2軒の店舗だけなので、その2軒の周囲の電灯以外はすでに外されてしまっていて、心地良い薄暗さではなく、おどろおどろしい不気味な気配が漂っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以前、この物件について図書館で調べたとき、営業していた昭和30年代当時の新聞かなにかの記事で、連日大繁盛で他の地域から視察にくるほどだったと記されていた

 

しかし、そんな繁栄を誇った亀甲マーケットも、この取材時はもはや廃墟寸前で、むしろまだ残っているテナントがあったことに驚いたものであった

 

 

こうした廃墟に近い廃れた物件を訪れるたびに、一度でいいからすべての店が営業していて買い物でごった返す姿を見てみたい。という見果てぬ夢を見てしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この段階で現役だった居酒屋と洋品店

 

洋品店の奥の帳場には品のよいご婦人がひっそりと座り、入口の横に古いマネキンが置かれていたのが深く印象に残っている

 

 

本来なら、このような場所にマネキンとくれば「不気味」というワードが浮かんでもおかしくはないし、それが当然なのだが、このときは何故か胸が締め付けられるような激しいノスタルジーに襲われた

 

ディスプレイされているファブリックは、1970年代からまったく変わっていないようなファンシーな柄で、一周してむしろ新鮮に思えるから不思議である

 

 

 

 

 

 

 

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さて、次はつい先日ついに解体されて更地にされてしまった、こちらも川崎市を代表するスーパーメジャー物件の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「昭和マーケット」である

 

こちらは、以前話に出した川崎市中部の住民は、間違っても足を踏み入れることのない川崎市の最南部、川崎大師よりさらに海寄りの商店街にあった

 

この周囲は空襲被害により灰塵に帰した川崎市には珍しく出桁造りの商家なども残っており、その無事な姿は昨年末に確認していたが、そのときは時間がなく、そこから歩いて5分程度の昭和マーケットを見にゆくことはなかった

 

 

まさか、それから1年も経たないうちに昭和マーケットが取り壊されてしまうなどとは夢にも思わず、そのとき足を伸ばさなかったことを後悔している

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらも最初に見に行ったときには、すでに1軒八百屋が営業しているだけで、かつては大混雑の賑わいだった周囲の商店街も、人通りはまばらで、滅びゆく町という印象であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

川崎市において、これほど昭和中期のマーケットが完全に残っている(いた)のは、小向マーケットとこの昭和マーケットだけである

 

川崎市には「日本民家園」という古民家の常設展示施設もあるし、東京には「東京たてもの園」という立派な施設があり、東京たてもの園のほうは、看板建築など昭和期の建物にちからを入れているはずなのに、このような本当の意味で庶民的な物件は皆無だ

 

 

こういった物件は次々と地上から消え去っているのにも関わらず、それを保護しようという自治体を見たことがない。そう遠くない未来、戦後間もない頃を舞台にした小説を読んだ僕らの子孫たちは

 

この小説に出てくる「バラック」っていうのが、よくわからないんだけど、なんだろう? などという話が冗談では済まない時代は、もうすぐそこまで来ているようだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「昭和マーケット」は、周囲の商店街も素晴らしくノスタルジックで、昭和中期で時間を止めたような風景をあちこちで見ることができるが、それらの建物が並ぶ風景を見られるのも、残念ながら今のうちかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらば亀甲マーケット、そして昭和マーケット R.I.P

 

 

 

 

 

 

†PIAS†

 

 

 

 

 

 

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