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🐸 ⑦東京の至宝・野方文化マーケット壱 

 

 

 

 

 

さて今回の記事から、いよいよメインターゲットである都内に残った貴重な文化遺産である「野方文化マーケット」を紹介してゆくのだが……

 

ここで、面倒ではあるが今回使用する「マーケット」という語句と、世間一般で使用しているマーケットとの違いを説明しておきたい。まずここで言うマーケットは「スーパーマーケット」とは似て非なるものだというとだ

 

 

現在、一般的にはスーパーと略されている店舗形式は食料品雑貨その他一般商品を扱う「同一者の経営によるひとつの店舗」なのに対して、こちらのマーケットは、複数の経営者による小規模店舗の集合体、一種のコミュニティのことを指す

 

が、しかし、それでは雑居ビルのなかに複数の店舗が入っているマーケットもそうなのか? ということになってしまう

 

 

そこで、ビルのような建物ではない複数の小規模店舗が集まった回廊通路形式のものと定義したい

 

なぜ“回廊”なのかというと、ここで“道路”*も含めてしまうと、いわゆるアーケード商店街もこれに含まれてしまうからだ(*ただし短距離の私道は含まず)

 

 

アーケードも含めると横浜橋商店街や六角橋商店街から、武蔵小山の長大なアーケードまでこれに含まれてしまうことになり、まったく異なるニュアンスのものになってしまう

 

さてこれでマーケットの境界条件の提示を終えたので、さっそく「野方文化マーケット」を紹介しよう……と思ったが、ちょっと説明不足な点を補足しておく(←おいおい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずこのマーケット偉大なところは、もちろん廃業している店舗はあるが「現役」で営業していることであろう

 

 

インスタを見ていると廃墟と化した地方の巨大なマーケットを散見するが、こちらの物件には、そのような悲壮感はまるでなく、撮影しているあいだにも複数の客が訪れていた

 

このように現役を保っていられるのは、東京という“しがらみのない”バックグラウンドが前提にあり、なおかつニッチな需要も発生しえる膨大な人口あってのものだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

「野方文化マーケット」の建物は、ひとつの構造物ではなく、おそらく昭和30年代頃までに建造された複数の木造二階建てモルタル外壁の建物から構成されている

 

建物をまず「┌┐」のかたちに並べて、「┌┐」の真ん中に奥には突き抜けないかたちで「|」を配置。それに木製のトラス構造の柱を使用しタキロン波板の屋根で全蓋式にしたものだ

 

 

要するに複数の建物のあいだの細い私道に屋根を架けることにより、擬似的にひとつの構造物にしているわけである

 

わかりやすく言うと……

 

たとえばスーパーならば鮮魚コーナー、雑貨コーナー、惣菜コーナーなどに内容が分かれているが、マーケットは個人商店が、それぞれ鮮魚店、雑貨屋、惣菜屋を経営して屋根を架け通路を造ることでマーケットを構成しているわけだ

 

 

ようやく長い概要説明が終わったのでなかに入って……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という逸る気持ちにストップをかけるような、見るからに怪しい入り口である

 

ここは本当に日本なのか? オレはどこか知らないアジアの国に迷いこんでしまったのではないだろうな? と、一瞬、自分の立ち位置すら怪しくなる異国情緒たっぷりの入り口だ

 

 

 

 

 

 

 

 

内部に足を踏み入れるとさほど薄暗い印象はなく、照明だけではなし得ないどこか優しい、居心地のよい明かりに驚く

 

これは全蓋式とはいえ、ブリキなどの金属類の屋根ではなく透過性のあるタキロン波板を使用することで、ほどよい光が差し込むという、マーケットに特有の雰囲気である

 

 

 

 

 

 

 

 

見た感じ現役で営業している店は半分もないが、それでも店にも明かりが点るだけで、廃業した店舗の放つネガティブさを見事に中和していた

 

 

 

 

 

 

 

 

入ってすぐの右手には袖看板にローマ字で「ギフトショップ オタフク」と記され、通路には怪しげな鳥のオブジェが置かれている

 

袖看板には、かわいいんだか、かわいくないんだか微妙な動物のイラストが描かれており、脱力感を覚える

 

 

廃業していると思われる左手の建物を見ると、昭和30年代頃の主力であった木造二階建てモルタル外壁の建物だということがわかった

 

興味深いのは、建物の集合体全体に屋根が架けられ物理的に雨の対策は必要ないはずなのに、きちんと「戸袋」が設けられていることであろう

 

 

これは、この物件を構成する建物を、全蓋式という理由で特別な造りにするよりも、あえてこのような普通の建物にすることによって、大工に面倒な注文をしなくても済む。という一種のコストダウンではないかと考えられる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突き当たった曲がり角には店先のハンガーラックに、おびただしい数のTシャツを並べた店があった

 

 

 

 

 

 

 

 

並んでいるTシャツを見ると明らかに若者向けのテイストで、地方の寂れた町によくあるジジババ向け洋品店ではなく古着屋だということがわかる

 

この物件の怪しげな雰囲気は、どう考えてもサブカルチャーとは強い親和性があるので、これはまさにどハマりのテナントと言ってよいだろう

 

 

先ほどの「ギフトショップ オタフク」にも明らかにサブカル臭が漂っていたので、このふたつの店舗だけではなく、他にも古書店、雑貨屋、占い系の店などアンダーグラウンド感のあるサブカル系の店舗を集めたら、かなりの集客力を望めるのではないか?

 

少しでも考える頭があれば誰でもその程度のことは思い付くのに、何故か空き店舗は放置されている雰囲気なのが解せなかった

 

 

というのもこの施設に都なり区なりが助成金を出して、そういったサブカル的な店をやってみたい、あるいはやっている有志を募り集結して、ひとつのムーブメントを起こす可能性を秘めているからだ

 

--と、思うのだが、土建屋が潤うだけのくそクダラナイ無意味な再開発や道路拡幅に出す予算はあっても、そういった文化の育成には出し渋るような行政だから、アジア諸国にすら追い抜かれてしまったことに気がつかないような、無能な政治には何も期待が持てない

 

 

 

 

 

 

 

 

などと妄想の翼を拡げていたら、次の曲がり角に古着屋の屋号が、逆さ吊りにされた全裸の男の描かれた派手なオレンジの垂れ幕とともに、目に飛び込んできた

 

その屋号は「吊り橋ピュン」…………うーん、謎!

 

 

よく見ると裸で逆さ吊りにされた男の見えてはいけない部分に「反響御礼」という札が貼られているセンスは、なかなか鋭い

 

と、最後はちょっと横道に逸れたが、次回はさらに横道に逸れて記事の冒頭で述べた「マーケット」形式の商店街について、もう少し深掘りしてみたい

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

†PIAS†

 

 

 

 

 

 

 

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