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🌊 ⑧かつての海岸はコンクリートの塊に
京成千葉線の横から房総往還に入ると、かつては賑やかな商店街だったような雰囲気が残っていたが、現在は東京郊外のどこにでもある町のような少し寂れた空気が漂っていた
しかし、そんじょそこらの商店街とは異なり、房総スタイルの二間半という間口の古い商家があちこちに残っており、かつては宿場町だった歴史の重さを感じさせる
商店街、というか宿場町には、駅から1キロ以上離れたあたりにまで房総スタイルの古い商家が見られることから、かなりの規模の町であったことが類推された
1・5キロほどすすむと、さすがに商店街的な雰囲気は希薄になり、ラスティカラーに塗装された金物屋のような雰囲気の看板建築のところに、再び「検見川商工振興会」のアーチがあった
ということは、商店街はここで終わりを告げるのだろう
ラスティカラーの看板建築の背後には、町並みにのし掛かるような威圧感で、東関東自動車道の防音壁が風景を圧迫していた
これが出来たおかげで首都圏の外側を結ぶアクセスは、飛躍的に向上したが、その代償として多くの自然や人びとの営みを失ったことを我々は心に刻まねばなるまい
ラスティカラーの大きな看板建築のところで、商店街はおろか町並み自体が完全に終わり、その先で東関東自動車道が房総往還に覆いかぶさっていた
そんな近代的な風景だが足元を見ると、それとは対照的な古い祠があった
まじまじと見たわけではないが、前掛けが見えたので地蔵が祀られているのだろうか。祠の横には屈曲した坂道があったが、かなり急な勾配らしく階段になっている
ちょっと登ってみたい誘惑に駈られたが、登ってもとくに何もなさそうだから、先を急ぐことにした
ちなみにこのあたりには、戦争遺産の検見川送信所跡の廃墟とか、清国最後の皇帝、溥儀の弟の邸宅とか、元千葉県庁庁舎など単発の見所が存在するが、いすれも房総往還から外れるため今回はスルーした
圧迫感しか感じないコンクリートの巨大な建造物の東関東自動車道の橋を抜けると、房総往還は……
それまで平行していた国道357号線、いや、この寸前で357号線は、国道14号線と合流しているので、正確には国道14号線に上書きされてしまっている、って、ややこしいんじゃいボケゴルァ!
あまりにもややこしすぎるため、Googleマップを開いて自分の立ち位置を見ても、すぐには理解できないややこしさ
これを読者諸兄に文章で伝えるのは、ほぼ不可能なため「ああ、なんだか無駄に面倒な構造なんだな」と、理解していただければ詳細は気にする必要はない
この場所を反対側から車で走ると最悪のややこしさで、じっくり地図を見てさえよくわからないのに、分岐点が国道357と国道14のどちらなのか、わざとわかりにくくしているような、嫌がらせとしか思えない変な構造になっている
これでは初めて通ったドライバーの多くが、見当違いの方向に行ってしまうのではないだろうか
僕が森田健作のように千葉県知事になったら、まず最初にすることは、このような道路の計画、設計、敷設に関わった責任者を残らず並べ「お前ら首だ!」と宣言するだろう
えっ、県知事に人事権はない? じゃあ、千葉の独裁者と言い直そう
という、どうでもいい話はともかく
せっかく風情があった房総往還は、この見るからに埋立て地といった人工的な風景のどこかに埋もれているため、やむを得ず国道の横の歩道を、仮想房総往還と設定して、まっすぐでツマラナイ道をしばらくすすんだ
しばらくゆくと◯◯医学生物学研究所という看板があり、謎の生命体の隠匿とか遺伝子操作によって怪物を生み出していそうだな……と、マンガもしくは映画、あるいはサスペンススリラー小説のような妄想が浮かんだ
その隣にある物件が家系ラーメンの店というのも、なかなかシュールな光景である
家系ラーメンを過ぎると、ベンツの並行輸入車の店があった
日本の成金はベンツが大好きだが、丸っこいデザインになってからのベンツは、かつての堅牢無比のあのメルセデスベンツではなく、単にカローラやサニー程度の原価の手抜き車に、ベンツのマークがついているだけなので、乗っているひとを見たら「ああ、あのひとは車がわかってないな」
と、断じてしまって問題はない。これはミニバンと称する手抜きの極致の車に、高い金を払って喜んで乗っているやつらと本質的に変わらない
というか、どうしてミニバンを乗ってるやつには、下手くそが多いんだろうか
などと、いつものように毒を吐いていたら、上書きされていた房総往還が、いきなり姿をあらわした
旧道といえば細い道というのは、ある程度約束事になっているが、これはまた極めて狭い路地で、おそらくこの道幅は江戸時代と変わっていないものと思われる
変わっているのは、江戸時代には建物なんかなかったであろう、こんな急で狭い路地の周りにも、びっしりと住宅が並んでいることだろう
坂道を下るとコンクリート三面護岸の見るからに都市型河川のおもむきの川が流れていた
周囲はすべて高いフェンスに覆われて、完全に社会から隔絶されてしまっているという、典型的な都市型河川の姿は、川というよりドブというニュアンスに近い
房総往還は、この川を越えて住宅街のなかに向かっていた
†PIAS†
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