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👞 ハインリッヒ・ディンケラッカーを逝く 後編

 

 

 

 

 

 

 

なんだかんだと慌ただしく過ごしているうちに、今年もあとわずかになってしまった

 

まだ部屋の片付けはしていないし、断捨離しようと思っていた靴も選別して床にゴロゴロと転がったままだ。そして、今年はもう買い物はやめよう

 

 

――と、固く決心していたのに、これ以上増やしてどうするんだアホウ。などと、自責の念にとらわれつつ、またしても靴を購入してしまう体たらくである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渋谷界隈の古着屋を定期巡回したが、幸運にもほしいアイテムには出合わず、出費がなくて胸を撫でおろす。原宿の古着屋もチェックして、いつもならそのまま下北沢あたりに移動するのだが、裏渋方面の古着屋を久しぶりに回った

 

僕が中学の頃の渋谷は、とても魅力的な町であったが、渋カジなる田舎者どもの流行が席巻して以降、どんどん品がなくなり、それと並行するようにワクワクするような店もなくなってしまった

 

 

今では昔の渋谷の雰囲気を残すのは、奥渋と言われるエリアだけになった。この界隈は、109や公園通りのように観光客でごった返すこともなく、落ち着いて歩くことができる

 

 

という前おきは、本編の内容とは関係ない

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、レギュラーばかりが並ぶ某大型古着屋で、素晴らしく状態のよい(ほぼデッドストック)アポロ(旧ハインリッヒ・ディンケラッカー。上の写真手前の靴)を掘り出したことを書いた

 

購入した値段は、諭吉で余裕でお釣りがくるあり得ない金額で、このように、相場よりも一桁少ない価格で購入できることを、個人的にファンタジスタと呼んでいる

 

 

一桁とまではゆかないが、例えば相場が4万の古着を、1万円ぐらいで購入した場合、これはミラクルと呼んでいる

 

さて、写真の手前ではなく、奥に置いてあるまるで恐竜戦車のような超イカツイ靴も、ほぼ同時期に諭吉以下で購入するファンタジスタが起こった。名付けてダブルファンタジスタである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外羽根の4アイレット(ヒモを通す穴が4つ)というカジュアルな印象のこの靴。靴好きなら一目でハインリッヒ・ディンケラッカーだとわかる特徴的なスタイルである

 

底をグッドイヤーではなく、通常、機械縫いするノルウェージャン製法を手縫いで仕上げたノルベジェーゼ製法を、さらに複雑怪奇にしたツォプナート(弁髪縫い)と呼ばれる、縫い糸を革でくるんだ極太糸で三編みしながら、底を縫いつけている特殊な製法が使われている

 

 

この複雑怪奇な底付けは、物理的に考えてノルベジェーゼよりも強度が増すとは思えず、おそらく装飾的な意味合いが強いものと考えられる

 

これと似たような底付けはクラシコがブームだった、ひと昔前のイタリア靴に多く見られた

 

ステファノ・ブランキーニや、シルバノ・ラッタンジ、ストール・マンテラッシもこんな感じの靴を造っていた記憶がある。イタリアではスターニョなどと呼ばれていたが、流行り廃りの激しいイタリアでは、すっかり見なくなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在のディンケラッカーは、2本の革ヒモを編みながら、真ん中に極太の麻糸を編みこむ仕上げ方をしているが、こちらは、三編みの3本すべて(真ん中は麻糸を着色したのか?)が革ヒモで編まれているのが、ど迫力の要因であろう

 

ブランキーニやマンテラッシだって、こんな迫力はなかったぞ

 

 

このモデルは、ブダ(buda)というモデルによく似ているが、アイレットが4つなので、そこも現行モデルとは異なっている

 

 

とにかくこの弁髪縫いは、コバがあり得ないぐらい自己主張するため、明らかに普通の靴には見えず、やはり恐竜戦車のような異様なインパクトがある

 

 

 

 

 

 

 

 

踵の部分も三編みされており、360度グッドイヤーならぬ360度弁髪縫いなので、後ろから見ても圧倒的な存在感を放っている

 

前回の記事で紹介した靴は、ディンケラッカーネームではなく、旧いブランドネームのアポロであったが、こちらの靴もディンケラッカーネームではない

 

 

インソールに記されていたブランドネームは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「LLOYD」ロイドであった

 

ロイドは、ドイツを中心に展開している靴屋で、こちらも前回の記事で引き合いにだしたサラマンダーと同様に大手の靴屋であるが、販売している靴の多くが、安物のどうでもよい靴だ

 

しかしサラマンダーと同様に、昔の高級ラインは、けっこう気合いが入っていて、こちらはプレミアと呼ばれる最高級グレードの靴で、アポロ(ハインリッヒ・ディンケラッカー)がOEM生産していたようだ

 

 

ややこしいのは、ロイド名義でアポロが製作したと思われる靴も、このようなプレミアラインだけではなく、グッドイヤーの靴に、チェーンステッチを飾りで入れただけのものなど、いろいろなパターンが見られることだ

 

 

こちらの靴はプレミアラインを謳うだけあって、見ただけで弁髪縫いだとわかる。迫力は現在のディンケラッカーより上かもしれない

 

革は、残念ながらカールフロイデンベルグの黒ボックスカーフではなく、細かいさざ波のような模様が型押しされたカーフだ。しかしさすがに高級ラインだけあって、やけに柔らかいから、上等な革を使用しているようだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところで先日、浦和方面に出掛けたので、ついでに東浦和駅から見沼通舟堀とは反対側にあるトレファクとセカストを見に行った

 

2軒のリサイクルショップは、駅前から真横に延びる道沿いにある。駅前通りは、いかにも新しく敷設したような広い通りだが、このように2軒の古民家があることから、古道を無理やり拡げたものだろう

 

 

ついでに浦和駅のセカストまで回ったのに、とくにほしいものはなく、手ぶらで町をあとにした

 

このようにリサイクル、古着屋巡りは、99パーセント徒労に終わるので、今回のように、2回もファンタジスタが起こるのは珍しい例といえるだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

すっかり再開発された浦和駅から旧中山道に向かうと、新しいビルに混ざり、この下着靴下専門店「フランス屋」だけが残っており、いつもまじまじと眺めてしまうのは僕だけではあるまい

 

 

ということで、年末も(どうせ休みもないし)古着屋とかリサイクルショップを回って獲物を探す日々である

 

 

 

 

 

 

 

†PIAS†

 

 

 

 

 

 

 

 

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