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👞 ハインリッヒ・ディンケラッカー逝く 前編 

 

 

 

 

 

 

ファッキンクリスマス! (以下略)

 

いつものように新宿で乗り換えようとしたら、なぜかガード下に消防車が集結していた

 

このガード下で燃えそうなものは、おうちのない方々の家財道具ぐらいしか思い浮かばず、なんだなんだと思いつつも都会人のマナーとして、チラ見だけで通り過ぎてしまったから、いまだに消防車が集結していた理由は不明である

 

 

という話はどうでもよくて、新宿の西口を通過するとき、それが夕方ならば、最近この店に立ち寄り夕食を摂ることが多い

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴロゴロした角切りの牛丼が名物の「岡むら」だ

 

レビューを見ると、脂身や筋が多いから下等みたいな見当外れの意見なども見かけるが、これは元々そういったワイルドな牛丼なので個人的には、もっとスジ肉が入っていたほうがよいぐらいである

 

残念ながら都内に3店舗しか展開しておらず、近所で食べられないのが唯一の欠点で、もし最寄り駅にあったら週イチ以上で通ってしまいそうな店だ

 

 

その昔、うる星やつらというアニメに出てくるメガネ(声優は千葉繁)という濃いキャラが「我々は、安いから牛丼を食べるのではない。美味いから食べるのだ!」

 

と、主張するいかにも押井守らしいシーンがあり強く印象に残っているが、まさに至言といえよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえば、下北沢にあった激渋な中華料理店「来々軒」が廃業したあと、洒落たスイーツの店にリノベーションされていたが、先日とおりかかると、スイーツの店は潰れて来々軒の看板が復活していた

 

という話はともかく、ここ最近、高円寺や下北沢に老舗の古着屋が次々と大型店をオープンさせており、既存の大型古着屋チェーンの「KINJI」や、関西から進出してきた「西海岸」「ピグスティ」なども加わり大型古着屋戦争が勃発している

 

 

デザートスノー、スラット、ステップアヘッドの多店舗化など、従来からあった普通の古着屋も、これに加わり、古着ブームが到来したかのようだ

 

もちろん、こうした大型店は、レギュラーと呼ばれるベール買いの安い古着を大量に並べるという商売のため、僕のように古着は2周半ぐらいしてしまった古強者の目にかなうヴィンテージなどはほとんどない

 

 

――と、言いたいところだが、これにはひとつ盲点があるのだ

 

一般的な古着マニアというのは、ヴィンテージのスニーカーに関しては、いっぱしの知識を有する場合が多いが、こと本格靴に関してはドシロウトばかりなので、貴重なヴィンテージだとは気がつかずアホみたいな安値で売っていたりすることがある

 

もちろん、逆もしかりで、ゴミのような物件を、パラブーツだったり、オールデンやチャーチだったりするだけで、アホみたいな高値をつけている。という、しょーもないパターンもあるが

 

リサイクル系はこのパターンが多く、ポンコツのパラブーツが3万数千円とか、ゴミみたいなオールデンが2万とか、デッドでもないチャーチが3万数千円など、あり得ないプライスをつけていたりするのを、よく見かける

 

 

――で、今回は、その前者の例である

 

某大型古着屋をチェックしていたら、靴コーナーにヤバいオーラを放っている靴を発見した。こちとらシロウトではないので、ヤバい靴は、十メートル先からでも一目でわかる

 

その靴を手に取ってみると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明らかにタダ者ではない革の輝き。こんな見事な黒のカーフは、今どきジョンロブやエドワード・グリーンでも見たことがない

 

なでなでするように子細に観察してみると、この粒が立ったような、そして、その粒のひとつひとつがキラキラと輝くような黒のカーフである。こんなオーラを放つ革は、この世にひとつしか存在しない

 

 

革フェチならもうおわかりだろう。そう、カールフロイデンベルグの黒ボックスカーフである

 

革だけではなく、靴の造りも高級感溢れる素晴らしいもので、外羽根フルブローグとサドルシューズを混ぜたようなデザインが珍しい

 

 

いったい、どこのファクトリーの靴だ? と、インソックを見ると

 

 

 

 

 

 

 

 

おおっ、アポロではないか! アポロと言えば靴マニアなら知らぬ者とてないハインリッヒ・ディンケラッカーの前身ブランドである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

横から見ても、後ろから見ても見事な吊り込みと細部の仕上げで、正直、革質も造りも現在のものより一段上のレベルだ

 

 

アポロのすべてが高級靴だと思って誤解しているひと(なかにはオクでバカな値段をつけていたり)がいるが、そうではなくアポロというのは、あくまでも大衆的な靴を大量生産していたファクトリーで、目も当てられない安っぽいセメント靴もよく見かける

 

そんなアポロのごく一部の高級ラインを製造していたハンガリーの工房を三代目の社長が独立させたのが、ハインリッヒ・ディンケラッカーなのだ

 

 

ディンケは、当初はサラマンダーというドイツや東欧などにある靴屋が販売していた。日本に入ったのは2000年前後のことで、松本市にある「ヤマザキ屋」という靴屋だけが、独占的に販売していた(現在、ヤマザキ屋は取り扱いをやめている)

 

余談だが、サラマンダーも昔の高級ラインは、驚くほど造りがよいが、1980年代以降は安物が多くなり、今ではスニーカーの会社になってしまった

 

 

このあたりの事情は、高級靴専業を除くヨーロッパの靴ファクトリーやショップに共通していて、オランダ王室御用達だったヴァンボンメルなども似たような経過をたどり、オランダで2番目に大きな靴会社に成長している

 

 

 

 

 

 

 

 

 

底の仕上げも、やり過ぎと言いたくなるほど念入りになされていた

 

靴底の様子から、試着か、履いたとしても1、2回といった感じで、あちこちに傷はあるが、削れた様子は一切なく踵のゴムも無傷、そしてアッパーに履きジワは見られない

 

 

つまり、この靴は、ハインリッヒ・ディンケラッカーが製作したアポロの高級ラインのほぼデッドストックというわけだ

 

購入した値段は靴マニアが耳にしたら、地団駄踏んで怒り狂うぐらいの安値なので公表は控えたい。ただ、ABC-MARTで売っているようなセメント靴より安かった(つまり数千円)。と、だけ言っておこう

 

 

まさに量販店の生み出したニッチなところを突いた掘り出し物であるが、古着ハンターの僕が掘り出したのは、この靴だけではなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

手前が今回のアポロ(旧ハインリッヒ・ディンケラッカー)。そして、奥に見えているまるで恐竜戦車のような化け物じみた靴が、掘り出したもう1足の靴である

 

次回は、こちらの物件の詳細をお届けしよう

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

†PIAS†

 

 

 

 

 

 

 

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