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🏢 ③高層マンションに埋もれた古民家を見る  

 

 

 

 

 

草加駅を降りて旧日光街道へ。はじめは駅から見て右側、新しい県道と合流して、すぐに消滅する方面を見たが、味わい深い看板建築と老舗っぽい旅館のほかは、とくに見るべきものがなかった

 

いったん駅方面に戻り今度は左側、つまり江戸とは反対方面に曲がると、いきなり素晴らしい出桁造りの商家を見つけてテンションが上がる

 

 

――が、その出桁造り商家の周囲は、再開発が迫っているのか、学校がふたつぐらい入りそうな広大な更地、そして周囲を圧迫するような高層マンションが、古民家を圧し潰すかのように聳えていた

 

古民家から日光街道を少し行ったところには、半分もじゃハウスと化した「アウトレット&ブティック じだいや」という看板建築の廃屋があった

 

 

その看板建築は、見るからに戦後の建物だったので、もじゃハウス化していなかったら、さほど注目するほどの建物ではなかったのだが、隣が更地になっていたので、何気なく建物の横側に目を向けると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これには思わず「おおっ」と唸ってしまった

 

おそらく古民家に関心がないひとにとっては、単なる蔦に覆われたもじゃハウスに過ぎないであろう

 

 

しかし、注目すべきはそこではない。この建物、ありがちな戦後型の看板建築のくせに、昔の街道によくある鰻の寝床の地割のまま、奥に向かって異常に細長い建物だったのだ

 

建物が新しくされると、それにともなって、この地割は細かく分割されてしまうのが普通なのに、この建物は通常の建物なら、優に3軒は入るであろう土地に、隙間なく建てられている

 

 

残念ながら廃屋化しているので確かめようがないが、このアウトレット&ブティックは、けっこう広大な売り場面積だったのではないだろうか?

 

いずれにせよ、この光景は隣の建物が取り壊されて更地になるという、現代社会の宿病のおかげで見ることができた「瓢箪から駒」(あれっ、ちょっと間違ってる?)のような風景であろう

 

 

などと、マニアックなところに感心しながら、この建物の横にある日光街道と交差している細い道が妙に気になってしまい、気まぐれでその脇道を曲がってみた

 

 

すると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時おり自分の古民家散策に対する嗅覚の鋭さに驚くことがある。気まぐれに曲がった通り(葛西通りという名前らしい)が、だだっ広い県道と交差しているところに、こんな素敵な古民家が!

 

出桁造りのように重厚ではないが、この建物は屋根や各部の造り、とくに建物の後ろ側が片流れのようになっていることから、戦前物件だと思われる

 

 

日光街道と平行している県道は、最初からまったく眼中になかったのに、こんな建物があるとは油断できない。おそらく昔からある通りを、近代になってから、拡幅したのがこの県道なのだろう

 

しかし、喜んでばかりもいられないのは、この古民家もカメラを引いてロングで撮影すると

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらも前回の出桁造り商家と同様に、巨大なマンションが圧迫するように迫っていた

 

しかし、こんなところに戦前物件があるなら、ほかにもきっとあるに違いない。と、一瞬思ったが、そう思ったのは本当に一瞬だけである

 

 

なぜかというと、この建物のある交差点から、視線を右に向けたとたんに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな素晴らしい古民家が目に入ってきたからだ

 

武州には珍しい入母屋造りの屋根の古民家に、看板建築がくっついている僕が「小川町スタイル」と勝手に呼んでいる様式の物件である

 

 

よく見ると看板建築の看板の部分が、モルタルが重かったのか、U字を描くように、真ん中が歪んでしまっている。屋号などは一切なく、こちらの物件も廃業してしまっているようだ

 

しかし、建物に荒廃した雰囲気は感じられず、かつての店舗の前には丹精こめたと思われる鉢植えが並んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

よく観察するとズラリと並べられたサボテンが、向かって右から左に高い順に並んでいるのが微笑ましい

 

入り口のガラス戸は木製のままだし、ダークブラウンに塗装された渋い雨戸は、現役で営業していたころからのものだろう。それにしても、どんな商売をしていたのだろうか

 

 

しかし、この建物も出桁造り商家や先ほどの古民家と同じように、背後には高層マンションが迫っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ざっと県道を見渡すと、少なくとも視界に入る範囲内には特選物件などはなさそうなので、県道を見るのはこれぐらい(こちらまで見ている時間的な余裕はない)にして、日光街道に戻ることにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、それまでは寂れてガランとした雰囲気だった日光街道も、なにやら商店街のような町並みにかわり、賑やかとは言いがたいが、寂れてもいない微妙な感じになってきた

 

草加駅から右側に曲がったところには、リノベーションされた古民家カフェのような店があったが、こちらに並んでいるのは、いかにも昔から続く店のような青果店や釣具屋などだ

 

 

赤に黒の印象的な軒先テントの店は、テントの左側には和菓子屋の「栄泉堂」とあるのに、右側にはフランス菓子「ハニー」と、ダブルネームで屋号が記されていた

 

 

「はて、なぜこのあたりは、さっきより商店街っぽさが増したのだろう?」

 

 

という素朴な疑問は、次の風景を見たとたんに解消した

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから見えたのは、なんてことはない駅前に聳えていた丸井とイトーヨーカ堂のツインビルではないか

 

つまり、ようやく駅前の近くに戻ったということに過ぎなかったわけだ

 

 

それにしても、気になるのは前回の出桁造り商家の横と同じように、こちらも日光街道に面しているメインストリートなのに、またしても広大な更地が広がっていることだろう

 

こちらは更地にしたのはよいが、跡地がそのまま駐車場として放置されてしまっていることで、まるでバブル期に徹底的に破壊されたあげく、バブルが弾けて放置された、昔の東京でよく見かけた無惨な風景のようだ

 

 

デベロッパーといったような無責任な連中は、目先の利益にはハゲタカのように群がるくせに、いったんケチがつくと、さんざん町を破壊したあげく、なんの責任も取らずにバックレるのが得意技なので、この更地にもそのような経緯があったのだろうか

 

鰻の寝床のようなこの特徴的な跡地のかたちから見て、おそらくこの場所にも、かつては何らかの老舗があったように思われる

 

 

 

ということで、次回は草加駅の裏あたりの日光街道を散策する

 

 

 

 

 

 

 

†PIAS†

 

 

 

 

 

 

 

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