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🚢 ①駅から徒歩5分昭和な仲通り商店会
ようやく鬱陶しい緊急事態宣言が解除されたが、当ブログは、まったくもって時間軸から取り残されているのため、今回の記事も2月か、3月はじめあたりに取材したものである
もう、とっくに忘れているとは思うが、そのころ千葉県のリサイクルショップと古着屋を回るという散策をした。そのとき購入したのが、珍しいバーガンディーのカーフレザーのオールデンVチップだ
この靴は、いまいちな革が多いオールデンのカーフには珍しく、鏡面磨きをしなくても、最初から爪先部分に風景が写るぐらい良質な革を使用した、万にひとつのアタリ個体であった
という話はともかく、そのとき僕が魅せられたのは、オールデンのVチップばかりではなかった
店を回る効率から最後に回した船橋を訪れたとき、時間が余ったので、ほんの30分程度の短い時間、駅の周囲を散策しただけなのにも関わらず、複数の戦前物件を発見してしまい、靴を見つけたときよりも大幅にテンションが上がった
ごく短い時間、しかも駅周辺をちょっと探しただけで、これだけの収穫があったのだから、本腰を入れて回ればもっと見つかるにちがいない
ということで、古着屋巡りの翌週、さっそく船橋に向かった
船橋の駅は、海側に房総往還が通り宿場町(宿場女郎で知られていた)になっていたので、駅の宿場町側だけが商業地区として発展しており、その反対側が拓けたのは、ごく最近のことである
まずは前回の船橋訪問で見たなかで目立って派手だった、東京の墨東方面にも似た雰囲気の、仲通り商店会という飲み屋街に向かった
商店街は、JRの船橋駅から目と鼻の先にある京成船橋駅のすぐ近くにあったはずだ。どうでもいいけど、京成船橋は、こんな近くにあるのだから、とうしてJRの駅とくっつけなかったのが謎である
京成が開通した当時は、旧国鉄と仲が悪かったのだろうか? ちなみに、東急は国鉄とは犬猿の仲で、昭和のはじめごろ武蔵小杉では、東急と国鉄がどちらも譲らず線路が平面交差していたそうで、現在の過密ダイヤなら確実に大事故が起きるだろう
夜は怪しい魅力に満ちていた仲通り商店会は、駅からちかいため、ひと通りこそ頻繁であるが、歌舞伎町がそうであるように、昼間は白けたような空気が漂い、なんとなく精彩を欠き、あのとき見た活気が嘘のようだった
お気に入りのトンガリ物件も、夜に見たときのような魅力は感じられず、単なる角地のトンガった建物だった
どうやらこの町は、酔客が訪れるような時間にならないと本来の魅力を発揮しないようで、心なしか風景もくすんで見えるのは、気のせいばかりではないだろう
などと不遜なことを考えていたら、思わず「ごめんなさい」と、謝らざるを得ない素敵な物件に出くわした
夜に見たときには、単なる廃屋にしか見えなかった、色褪せた2階の軒先テントが素敵だったベージュの戦後型の看板建築は、驚いたことに現役の畳屋だった
しかも、近代的な装備を一切否定するかのような、まるで終戦直後から(見たことはないけど)そのまま。みたいな恐ろしくクラシカルなたたずまいである
トラディショナルな職種である畳屋は、総じて昔のままの雰囲気を残した店が多い傾向にあるが、このように平台が並ぶ店舗は、初めて見たかもしれない
江戸時代後期に発行された長谷川雪旦の名著「江戸名所図絵」には、当時のいろいろな店の様子が描かれているが、それはだいたいこのように、平台が並んだ構成のものが多い
余談だが時代劇なとで土間のような店舗に、テーブルと椅子を並べたような居酒屋が登場するが、当時は座敷に履き物を脱いで上がるのが正しい。幕末の姿のまま残っている飯能の武蔵野うどんの店は、まさにそんな造りだ
このクラシカルな「杉山畳店」の横には、見るからに暗渠といった雰囲気の路地があったので、裏側から撮影した。こちらから眺めても、じつによい雰囲気である
前回の船橋の記事でも書いたが、今でこそ飲み屋街になっているが、商店街の出口(でもなさそうだけど便宜的に)に近づくにつれて、飲み屋ではない一般的な商売の店が目立つ
このことから考察すると、ほとんど飲み屋になってしまったのは、けっこう最近のことなのかもしれない。それにしても、この狭くてゴチャゴチャした猥雑な雰囲気は、なんと心地よいのだろう
願わくばクソツマラナイ再開発などせず、このまま昭和の空気を残しておいて欲しいが、ここでもそれは叶わぬ夢であることを、このあと目の当たりにすることになる
仲通り商店会は、この廃業しているようにしか見えない店のある十字路から先は、急速に寂れてしまうが、ここを左、つまり船橋駅方面に戻る方向には店が続いているので、そちらに曲がる
このことは前回の散策でとった行動の再現で、なぜそのようなことをするかと言うと、もちろんそのとき発見した物件を見にゆくためである
前回の訪問では、けっこう遅い(夜の8時は過ぎていたような)時間なのに、まだ営業していた青果店は、この日も元気に商いをしていた
この青果店の並びには、戦後型の看板建築が並んでいるが、目当てはそんなありきたりな建物ではなく、斜め向かいにある……
前回の記事のとき、かなり反響があったこの物件である
夜に見ても際立った存在感の建物だったが、昼間に見てもやはりこの建物はインパクト抜群だった
周囲を大きなビルに囲まれた古民家は、まさに孤高の存在感を周囲に示している
前回見たときは、暗かったから判然としなかったが、こうして明るい時間にしげしげと観察してみると、まるで生活感がなく、どうやら廃業しているだけではなく、無住になってしまったのではないかと思われる
このように、正面から見ても横から見ても、屋根が△のかたち、つまり真上から見たら四角いかたちで、屋根の稜線が×の形状になる建築様式は、房総半島でよく見られるもので、方型(ほうぎょう)屋根と呼ばれている
この建築様式は、僕の地元である武蔵野方面ではまったく見かけないので、物珍しさからしばらく呆然と眺めてしまった
前回の散策では、この建物のあたりで引き返してしまったから、今回は時間もたっぷりあることだし、さらに先にすすんでみることにしたが、その決断が正しかったことは、すぐに証明されることになる
続く
†PIAS†
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