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🌓 年末年始・散財始末記その玖
さんざん連載してきたこのシリーズも、ようやくクライマックスを迎えた
このシリーズは、年末年始のセールをあてこみリサイクル店や古着屋を回って、古着や靴を購入するというのが究極の目的だったので、いよいよその結果を発表するわけだが、まず前回の記事に出てきた……
(写真は前回のものを再掲載)
この「東洋百貨店」の古着屋では……
このツーアイレットのカントリー風の1950年代イギリスの靴を購入
ジョンロブより1年早い1857年創業の「A・ジョーンズ&サン・ブーツメーカー」のものである
なぜ1950年代のものとわかるのかというと、この会社は1955年に、Church's(チャーチ)に買収されてしまい、社名が「ジョーンズ・ブーツメーカー」に、かわってしまうからだ
いろいろ検索してみても、この会社に関する情報はほとんどなく、日本で書かれた記事は、以前これと同じ靴を販売(24000円ぐらい)した水戸の古着屋の入荷情報と、それを購入したひとのブログ記事だけしかなかった
あとは海外の記事ばかりで、英語が苦手な僕がそれを苦心して読んだところ……
ふつうは、会社が買収されると買われたブランドは吸収合併されて、消滅してしまう場合がほとんどである
同じチャーチに買収されたアラン・マカフィーは、しばらく名前だけ残っていたが、ほどなく消滅してしまった
ところが、このジョーンズ・ブーツメーカーは、アランマカフィーのように、チャーチの1グレードにはならず、チャーチが以前に買収したチーニーと同じように、チャーチ資本のままブランドが残された
これもいろいろ検索したのだが、これとほとんど同じモデルも、しばらくは生産されたようで、ジョーンズ・ブーツメーカー名義の靴が、イーベイのオークションに1件だけ出ていた
ところが、その後チャーチはプラダに買収されてしまうのだから、運命の皮肉というしかない
チャーチがプラダに買収されたあとジョーンズ・ブーツメーカーは、プラダとは関係ない投資家が買収して、現在も存続し全英に20店舗ほど展開しているが、チャーチ買収以降は、このような高級靴ではなく、大衆的な製品ばかりのようだった
――と、またしても読者置いてきぼりの解説はともかく、さっさと次の戦利品にいこう
こちらは、シリーズの最初で説明した大手古着屋グループが新しくオープンさせた店である
大型の古着屋は、いわゆるレギュラーを主とした商品構成だが、こちらはアースカラーを基調としたモード的な服ばかりを集めた商品構成で、生き残りを模索しているようだ
しかし、そういったセレクトされた古着ばかりなので、値段はお高めである
一方、このようなセレクトされた古着屋を、下北沢で最初に展開したヘイトアシュベリーは、その逆に買い取り販売で安く古着を販売するニューヨークジョーという古着リサイクル店を展開した
ニューヨークジョーは、開店したばかりの頃は、信じられないヴィンテージが、あり得ない安い値段で入荷したので、こっそり同業者が「抜き」にくるほどの盛り上がりをみせた
しかし、そんなことは長く続かず、ここ最近はたまにヒットがあるぐらいだが、開店当初の盛り上がりを期待して、下北沢に来ると必ず立ち寄ることにしている
今回の訪問では……
棚の隅で、こんな靴を発見!
安っぽい靴が並ぶなかで、この靴だけが尋常ではないオーラを放っていたので手に取ると
これは1950年代後期から1960年代前期に造られたと思われるフリーマンのフルブローグである
まあ、この白いステッチと尋常ではない革の質(これに比べたら現行のエドワード・グリーンの革なんて……)だけで1970年代というのはあり得ず、靴の中底のブーツメーカーギルドという表記がそれを証明している
ところが、その表記がイレギュラーなことばかりで
ネットで検索しまくったが、これと同じ表記のものは発見できなかった
このブーツメーカーギルドという表記は、1940年代から1960年代まで使われていたもので、古いものにはits a free manと同時に記載されている例が多いことから、わりと後期の製品とわかる
しかし、この靴のように、ブーツメーカーギルドと、バイ・フリーマンのあいだにデイトナという謎の表記が入る例は、海外のサイトでも発見できず、まったく素性が掴めなかった
さらに不思議なのは、より消えやすい底には金文字がハッキリ残っているのに、サイズや製品番号などは一切なく、また本来ならブランドネームが入るはずの小窓には「TRIPLE A」と記されていることから、おそらく販売店の展示品だったものと類推される
前に履いていたヤツは、よほど靴の手入れが嫌いだったらしく、クリームを入れた形跡がなく、履きシワには数ヵ所クラックが入ってしまっており、シリコン系の接着剤で埋めて写真を撮影した
現状では補修跡が目につくので、これから2000番のサンドペーパーで目立たなくしなければ……
それにしても革の良さは尋常ではなく、グリセリンとホースオイルで保湿して、フェルトとストッキングで軽く磨いただけなのに、まるでハイシャインしたようにピカピカになってしまった
ちなみにお値段たったの3400円。これだから古着屋漁りはやめられない
いつもは入らない大型古着屋を念のため覗いてみると、低価格で床にゴロゴロ転がされていた安っぽい靴のなかに、1足だけ、やたらとカッコいい靴を見つけたので保護してみた
こちらも3200円と、失敗しても痛くない出費である
靴の中敷きを見るとヴァン・ボンメルと記されていた
さっそくググってみると、どうやら1734年創業という、ルドルフ・シェアと並ぶぐらい昔からあるオランダのファクトリーの靴のようだ
現在は、このような高級靴は製造しておらず若者向けのトンガリ靴やスニーカーなどを造っているが、会社は大成長してオランダで2番目に大きな靴会社になっている
こちらも捨て値で売っていたので、遠慮なく徹底的にケアした
風呂場でサドルソープでゴシゴシ洗い、スウェードクリームを塗りこんで、かわいたら金属ヤスリでゴリゴリ表面を整え補色する。すると……
あっという間に高級チャッカブーツの出来上がり
ケアした翌日一日履いてみたが、以前持っていたクロケのチャートシーが安物に感じる土踏まずをグッと掴まれるような素晴らしい履き心地で、手持ちのチャッカブーツではチャーチを凌ぎ、ハケットロンドン別注木型のクロケに匹敵する
さて、下北沢に行った次の夜勤明け、眠い目をこすりながら、前回の記事で修理屋にあずけて踵の修理を依頼していた靴を受け取りに
すっかり通い慣れた池袋へ
見よ、この自然な仕上がり。せっかくのVクリートはなくなってしまったが、これで滑って転ぶリスクは激減である
うむ。さすが1967年製造のフローシャイム・インペリアルのコードバン。余は満足じゃ
*追記
ネタバレになるので、前回の記事には掲載しなかった今日のスタイル
ヴィンテージのツイードジャケットに、1970年代のリーバイスの519、足元はG・ロッドソン。カバンはpokit、デンツのカーフレザーの手袋。イタリア製のシルクストール
手に持った袋には、靴が詰まっていて重たかった
†PIAS†
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