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旧甲州街道は、京王線の調布駅のワンブロック北をとおっている。したがって、調布駅の近くにはパルコがあったりして賑やかな繁華街である
しかし西にしばらく行って、前回の記事に掲載した魔改造古民家がある交差点を境目に、それまでの賑やかな様子から一変して、風景は、いかにも寂れた風情にかわる
前回掲載した物件と旧甲州街道をはさんだ斜め向かい側には
このような土蔵造りの商家が残っている。オレンジ色の軒先テントには「教科書 金星堂」と記されているので、教科書の専門店のようだ
それにしても、こちらの建物も魔改造されてしまっているので、横から見ないと古民家にはまったく見えない。おそらく隣が更地ではなかったらこの建物が土蔵造りであることは、わからないであろう
この金星堂の向かい側には、以前から気になっていた建物がある
このどう見ても昭和初期ごろ造られたような窓のない重厚な建物だ
向かって右側の建物にはシャッターがあるので、なんとなく以前は店舗だったような雰囲気だが、左側の建物は、開口部が一切なく不気味な雰囲気を醸しだしていた
そして、ふたつの建物のあいだには、鉄製のクラシカルなアーチ型の扉があり、まるで刑務所のような厳重なたたずまいである
この建物がある一角は、広範囲にわたってひとつの施設のようで、てっきり寺院だと思ってGoogleマップを見ると、そこにはなにも記されていなかった
まさか怪しい団体の施設、もしくは企業の秘密研究所のようなものじゃないだろうな。と、横はどうなっているのか見にゆくと……
個人宅にしては、あまりにも厳重な門で固く閉ざされていた
門柱を見ると、ますます宗教団体を彷彿とさせるワラビかゼンマイのような怪しいデザインなので、よもや個人宅ということはあるまい。ということは、やはり宗教関係なのか?
と、どうでもいいことで頭を悩ませていたら、このゼンマイのような門柱のある建物の向かい側には
こんなおもむきのある平屋の古民家が建っていた
どう見ても無住に見えるので、最初は廃屋かと思ったらGoogleマップによると小島町会館と出ていた。なるほど町内会の建物なら無住に見えて当たり前だろう
小島町といえば、前回の記事の最後に掲載した魔改造古民家の真横が、甲州道中小島一里塚があった場所である
怪しい建物の隣は、いたって普通の「黒田建材」という店だった
比較的新しい建物なのに「凸型看板建築」なのが偉い
土蔵を備えた古民家があった
その土蔵の脇には「パールライス本社工場」の看板が掲げられていた。へえ、パールライスって、こんなところにあったのか。でも案内に記されているのが矢印だけで、よく国道沿いなどで見かける
「→この先1.5キロ」のような具体的な指示がないのがちょっと不思議
このあたりは、それまでの賑やかな街道沿いの雰囲気から、寂れた旧道そのものの風景で、昔は農村地帯だったことが想像しやすい。どちらかと言えば僕はこの寂れた景色のほうが落ち着く
それでも、ところどころに古そうな商家があるのが、いかにも旧道っぽい雰囲気を盛り上げる
この「島田園芸店」などは、比較的新しい戦後型の看板建築なのに、わざわざ擬石風のファサードにしてあり、まるで戦前型看板建築へのオマージュのようだ
見るからに古そうな住宅があった。この赤い塗装のトタン屋根は、武州の古民家の典型的なパターンである
この赤い屋根の古民家の先で、旧甲州街道は鶴川街道と交差していた
鶴川街道は、川崎や町田では僕もよく利用する道であるが、都内だとこんな場所をとおっていたのか。と、ひとつ賢くなった気分を味わう
この街道は、かなり道幅が拡げられてしまっているので、古民家などは残っているわけないよな。とは思うが、念のため見に行ってみたら……
思わず「おおっ!」と感嘆するような見事な平屋の看板建築が残っていた
うーん、素晴らしい。木製のドアといい、錆びて塗装が剥げ落ちたスカイブルーの看板といい、文句のつけどころがない物件だ
看板の文字は、ほとんど風化しておまけに錆びついているので、目を凝らして見ても、なんとなく「大友○○店」としか判読できなかった
このあと西調布まで行くつもりだったが、あたりはすっかり暗くなってしまったので、繁華街の調布駅付近とは異なり、おそらく暗くて撮影不能と判断し、来た道を引き返すことにした
パルコにさしかかったときには、すっかり夜のとばりが降りていた
この少し先の右側には……
こんな味わい深い看板建築の「名糖牛乳」の販売店があった
ということで、次回はこのシリーズ最終回。夜の旧甲州街道の写真と、前回の記事で言及した「調布百店街」のイルミネーションを見にゆく
続く
†PIAS†
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