****
片側アーケードのある大口の商店街のメインストリートから、あけぼの通り商店街に入ると、そこには錆びた商家が並ぶ僕の好みの雰囲気が漂っていった
廃業してしまった店もあるが、シャッター街にはなっておらず、残っている店舗は、どの店も元気に営業しているようだ
ところが、営業している店舗は通りの南側サイドに集中している感じで、北側に目を転じると、このような更地(駐車場)が……奥に聳えている大きな建物は、相鉄ローゼンである
この相鉄ローゼンから先は、それまでの賑やかな様子から一転して
なんとなく荒んだ雰囲気にかわってしまう。ズラリと並んだこの看板建築も……
定休日というより、やはり廃業してしまったようにしか見えない
それにしても、まともな軒先テントはひとつもなく、そのすべてが薄汚れてひしゃげてしまっているのが、見るからに廃屋のような雰囲気を強調していた
この看板建築の向かいには……
舗装されていない砂利道の細い路地と、戦後の生き残りのような平屋のバラック建築があった
屋根の上に、物干し台が備わっているのは、墨田区あたりでよく見かけたが、横浜ではかなりレアな仕様だろう
あけぼの通り商店街は、この信号のところで終わっているが、通りをわたった先から斜めに切れこんでいる道に続いており、そこは「ななしま通り」という商店街になっている
今回の散策も、いつものように必要最低限の下調べしかしておらず「ななしま通り」などという商店街があることは、この場所に来て初めて知ったので、わくわくしながら商店街に足を踏み入れると……
これが予想をはるかに上回る、まるで秘境のような場所だった
ななしま通り商店街には、戦後型の看板建築が並んでいたが、そのどれもが廃業してしまったような雰囲気で、緩やかに朽ち果てようとしていた
並んでいるといっても、それは言葉の綾で、ところどころが歯抜けになり、更地ではないところには、真新しい建物が建てられていた
しかし、注目すべきは、看板建築がある北側のサイドではなく裏側が下末吉台地の低い崖の下にある
この崖下の長屋風に並んだ建物群であろう
これも一種の看板建築だが、肝心のその看板が折れ曲がって屏風のようになっている
建物の横の車が停まっている空き地の奥には、低い丘陵に登るための階段があったので、その上からななしま通りを撮影した
画面左端の車の横に長屋風の建物がある。階段は、右側の建物に入るためのものだが、その肝心の建物は、とっくの昔に廃屋になっているようで、荒んだ気配を漂わせていた
この下末吉台地の途中にある荒んだ建物の向かい側に、さらに上に登るための階段は続いていたが……
階段の先は、完全に藪に飲み込まれてしまっており、どこにも行くことができなかった
よく見ると、階段の先には大谷石のしっかりした土台があることから、以前はなにか建物があったのか、それとも建物を建てようと思って階段と土台だけ造って放置されているのか、とにかく不思議な階段である
せっかく登ったのに、なんにもなかったので、先ほどの長屋風の建物を見てみよう
もはや、なんの店なのか、よくわからなくなっているが、Googleマップを開くと「小島精肉店 ななしま」という肉屋が入っているようだ
どうやらその小島精肉店は、営業しているようだが、その他の店は……
下末吉台地に生えている葛が、建物の上部にまで伸びてきており、どう見ても廃屋にしか見えなかった
余談だが、この葛という植物は凄まじい繁殖力で、多摩地域では荒れ地と斜面は、たいていこの植物に蹂躙されている。アメリカでは緑化のため日本から輸入したら、たちまち大繁殖してしまい、あまりの繁殖力に危険外来植物に指定されているぐらいだ
もっとも、この状態で営業していたら、むしろ不気味かもしれない
ちなみに、Googleマップにはまだ、お好み焼き「紫陽花」も隣のお酒・米穀「コンビニエンスさがみや」も記載されている
調べてみると、このななしま通りも、以前は、大口の商店街に連なる賑やかな商店街だったらしいが、この現状を見ると商店街の運命は、もはや風前の灯火のようだ
僕が訪ねた日に店を開いていたのは、この写真の奥に写る「丸杉園茶店」という店とヤマザキデイリーストアだけであった
このななしま通り商店街は、この先もまだ続いているが、はたしてその先にあるものは……
続く
†PIAS†
****