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この商店街の存在は、高校生のころから知っていた

 

なぜかというと、僕は当時から自転車で学芸大学から武蔵小山に移動するとき、商店街の入り口の前を通っていたからだ。しかし、そのころはとくに関心は持たず

 

 

「なんでこんな駅から離れた場所に、商店街があるんだろう」と思ううだけで、足を踏み入れたことがなかった。今思うと、そのころなら、もっと古い建物が残っていたはずで、当時の自分を叱りたい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平和通り商店街の真ん中あたりになると、がぜん買い物客の数が増加する

 

このあたりが商店街の中心部というのもあるが、その最大の理由は……

 

 

 

 

 

 

 

 

タイトルバックにも使用したこの昭和30年代ちっくな古い三階建てのビルの1階部分にある「二葉フードセンター」というマーケット形式の店があるからだ

 

昭和の風情を残すマーケットは、ご存じのとおり僕の大好物なので、川崎市を代表する「小向マーケット」「昭和マーケット」など、数々のマーケットを取材した

 

 

そのどれもに共通しているのは、廃業が相次ぎ滅亡寸前ということである

 

ところが、この「二葉フードセンター」は、その対局にあり、ものすごく繁盛している。2枚前の歩行者天国の通りの真ん中に、ズラリと路駐されているママチャリは、驚いたことに、ほとんどがこのマーケットの客なのだ

 

 

マーケットには、八百屋、魚屋、総菜屋、パン屋、焼き鳥屋などのいろいろな店舗が入居しているが、そのどれもが客で一杯で、八百屋などは、近隣のレストランが仕入れにくるほどだ

 

マーケットの裏側には、やはりプロ御用達の乾物屋などもあり、ここでは、マーケット=寂れているという図式は成立しない

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな状況でも、やはり商店街の衰退は進行中で、入り口に記されている店舗の看板より、確実に店の数は減少しており、2階に入居していた美容室も、いつの間にか廃業していた

 

 

マーケットの並びにあった「フルーツの新井」という店も、ネットで画像検索すると、盛業している写真ばかりがヒットするが、僕が訪ねたときは、シャッターに「貸店舗」の貼り紙が……

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ廃業して間もないはずだが、すでに荒廃した雰囲気が漂っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

平和通り商店街の路地裏にあった居酒屋らしき店

 

店舗の前に植えられたビワの木が傍若無人に生い茂り、まるで廃墟のようだが、新しいビールケースが積んであるので、どうやら開店前というだけのようだ

 

 

 

 

 

 

 

 

平和通り商店街を抜けて、学芸大学から武蔵小山に続く広い通りに出た

 

左にゆくとクラシックカメラ好きには有名な「三宝カメラ」の前をとおり、目黒通りを越えて学芸大学駅に。ちなみにこの道は、玉川上水の支流、品川用水がとおっていた道で、商店街のすぐ近くには羅漢寺川の暗渠がある

 

 

右方向にゆけば武蔵小山駅に出るが、平和通り商店街の道沿いにすすむと、武蔵小山駅西口駅前にある小山台高校の裏手に出る

 

そちらの道も、以前は平和通り商店街の続きのようになっていたようだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広い通りがひとの流れを分断してしまうためか、賑やかな平和通り商店街とは対照的に、寂れた雰囲気にかわる

 

「うーん、こりゃあ、たいした物件はなさそうだな……」

 

 

などと、あきらめモードになっていたら、我が目を疑うような建物を見つけてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うーん、素晴らしい!

 

昭和30~40年代には、最先端だったであろうモダンなデザインの看板建築である

 

 

エントランス部分の張り出した屋根とか、ファサード部分の横線のブラインドのようなデザインが素晴らしい。そしてなによりも(剥がれ落ちてしまっているが)「やなぎ美容室」という壁面の文字のフォントがかわいい

 

 

この横線のブラインド状の目隠しは、一時期流行ったのか、少し前の大岡山の散策や、地元川崎市でも見たことがある

 

 

過去の記事から写真を再掲してみよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれは、まるで別のデザインであるが、ファサード部分の2階の窓を、横向きのブラインド状のもので目隠しするという様式が同じである(いずれも壊れているのも同じ)

 

 

このように複数のサンプルが存在していることから見ても、ある時期に、この様式が多数造られたものと類推できる。戦前型の物件にも目黒区内で複数発見された「十字形看板建築」があったが、こちらは「ブラインド型看板建築」

 

とでも名付けておこう

 

 

 

 

 

 

 

 

平和通り商店街の続きは、この接骨院の先で、近年整備されただだっ広い道に分断されて終わる

 

おそらくそれ以前は、そのまま武蔵小山駅西口の小山台高校の裏手に続いていたはずであるが、ここ最近顕著な土建政治主導の再開発のおかげで、こうしてまたひとつの商店街が消滅してしまった 

 

 

何度も書くが、だだっ広い道は、たとえ地続きであっても人びとの動線を、ものの見事に分断してしまうのだ

 

 

これでだいたい平和通り商店街は見たので、この商店街の西側を平行している、1本学芸大学駅寄りの道路も見に行ってみ

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらの道も以前は商店街だったような痕跡が残っていたが、間断なく車が通行しており、目黒通りの裏道のようになっていた

 

 

何軒か戦後型看板建築が並んでいたが、いずれも廃業して久しい雰囲気で、隣のマンションに移転した写真の精米店を除くと、現役の店舗は、ほとんど存在しなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その道沿いに、築70年はいってそうな古民家があった

 

どう見てもひとが居住しているようには見えなかったが、なぜかごく最近、新しく塗装され直された感じで、もしかしたら古民家物件として売りに出されているのかもしれない

 

 

ということで、目黒区の学芸大学と武蔵小山の真ん中あたりにある「平和通り商店街」を2回に分けて散策した

 

次回は、ガラッと方角をかえて、知られざる立川市の町、羽衣町界隈を散策する

 

 

 

《目黒・平和通り商店街さんぽ》おしまい

 

 

 

 

 

 

 

 

†PIAS†

 

 

 

 

 

 

 

 

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