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住所表示が上末吉から下末吉にかわると俄然店の数が増えて、商店街の体裁を成してきた
前回記したとおり、この場所は鶴見駅からも綱島駅からも徒歩圏とは言い難く、雨でも降ろうものなら、自転車で通勤するのも厳しい僻地とでも言うべきロケーションである
このような場所に商店街がある場合、たいていかつての宿場町だったか、門前町であったというパターンが多いが、下末吉は、そのどちらにも宛てはまらない
では、どのような理由でこんな場所に商店街が成立したのかと調べてみたが、いまひとつその成り立ちがハッキリしなかった
しかし、牛丼屋や、信用金庫などのある程度栄えていないと存在しない業種があるので、一時期はそれなりに繁栄していたことは間違いないだろう
下末吉に入ると、片側アーケードを備えた店舗が多くなるが、やはり商店街としては衰退傾向にあるため、マンションや更地にされてしまった場所が多く、アーケードは途切れがちであった
初めてこの場所を見たのは、僕がまだ高校生のころだったが、そのころは、もう少し賑やかだったような記憶が残っている
そのときは、鶴見駅に向かって急いで自転車を走らせていたので、あまり注意して見ていなかったが、アーケードは、もっとつながっていたように思う
残念ながら首都圏の商店街は、ごく一部を除くと、おしなべて衰退傾向にあり、それは、このような依存する駅や施設がないこの商店街にも、顕著にあらわれていた
下末吉商店街は、末吉台地のふもとにあること、駅に依存していないこと、という2点において、川崎市の南加瀬にある夢見ヶ崎の商店街に類似している
夢見ヶ崎の記事においては、コメントにて、地元の方から昔の賑わいを教えていただいたが、こちらの商店街も並んでいる商店の数から、かなり賑やかな商店街だったと想像できる
現役の「みつば」というフラワーショップ
アーケードの屋根の色褪せた赤いテントがナイス。「みつば」というロゴの「"」が文字通り三つ葉のクローバーになっているところがかわいい
屋根庇には、歩道をすべてカバーするという以外の約束事がないようで、そのデザインは、バラエティーに富んでいた
この場所の特徴を端的に説明すると、フラワーショップ「みつば」のワンブロック後ろには鶴見川が流れ、道路をはさんだ反対側には……
すぐに下末吉台地が迫っていることだろう
下末吉台地の段差を撮影しようと細い路地に入ったら、目の前をやけにスリムな小型犬ぐらいの大きさの動物が横切った。最初は、フェレットかと思ったが、ひょろっとした長い尻尾が印象的だった
帰宅してネットでいろいろ画像を検索したが、どう考えても僕が目撃したのは、フェレットではなく「いたち」だったとしか思えない
しかし、鶴見川流域で「いたち」が生息している可能性があるのは、源流域の町田市や八王子市山林以外にあり得ないので、おそらくペットが逃走したものだろう
下末吉台地の斜面には、あり得ない角度の場所にも、びっしりと住宅が並ぶ。このような光景は、横浜、川崎にまたがる下末吉台地の特徴で、何度も僕の記事で取り上げている
しかし、よくこんな急斜面に住もうなどと考えるものだ。僕なら身の危険を感じるので、絶対にお断りだな。高所恐怖症だし
階段の両脇には、開渠の雨水溝が設けられているが、大雨のときは、滝のようになるに違いない
商店街に話を戻すと……この商店街は戦後になって、この道路が敷設されてから成立したようで、戦前型の建物は皆無である
国道1号線を越えて鶴見駅の近くにゆけば通り沿いに、出桁造りの商家などもわずかに残っているが、それはこの商店街とは直接的な関係はないだろう
商店街には、このような戦後型看板建築が連なっていた
廃業してしまった店舗のなかには、軒先の屋根庇が撤去されてしまっているものをかなり見かけた
ほとんどの部分がブリキの波板で造られた看板建築があった
シャッターが半分開いているので、廃屋ではないようだが、現役の商家には見えなかった。ここでもブリキの波板が、アーシーなブルーに塗装されている
ブリキの波板イコール青というのは、首都圏ではお約束と言ってよいだろう
バス停の前に、端正なデザインの看板建築があった
鶴見駅行きのバスは、けっこう混雑しており、やはりバスが重要な交通手段のようだ
それにしても小さな子どもが多い。幼稚園の閉園時間だろうか?
こうして見ると、やはり新しく造られたような建物には、ほとんど屋根庇がつけられていない
このまま建て替えがすすめば、やがてこの商店街にアーケードがあったことなどは、人びとの記憶の片隅に埋もれてしまうだろう。などと、センチメンタルな気分になった
続く。次回このシリーズ最終回
†PIAS†
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