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サンシャインシティの真横を走る首都高速5号池袋線の高架の下を東へ向かう
このあたりはA級戦犯が収容された巣鴨プリズンと造幣局、そして、ごちゃごちゃした町並みが特徴だったが、再開発によって、そのほとんどが消滅した
現在も一部残った古い建物は、環状5号線の工事でほとんど壊滅状態なことは、前回の雑司ヶ谷の記事にて紹介したとおりである。かつての裏東京的な風景は、現在も上書きされている最中だ
サンシャインの裏側には造幣局跡の広大な更地が拡がっており、いずれタワーマンションでもぶっ建てるのだろうか
サンシャインの周囲は僕の知らないうちに、すでに見覚えのない高層ビルが、いつの間にかニョキニョキ生えていた
このビル街の先に、川の跡地(水窪川?)のような細い道があり、吸い込まれるように、その細い路地に足を踏み入れると、さらにその先にはかつての池袋のごちゃごちゃした風景がわずかに残っている
この写真のすぐ先で、路地は都電荒川線に突き当たる
踏切の先にある商店街が「日の出優良商店会」だ
この商店街は、かつて東池袋四丁目の電停の商店街で、2系統の都電が交わる交通の要衝として栄え、百店舗以上の商店が並び大変なにぎわいだったそうだ
しかし、ここもお馴染みのパターンで……
今はそのにぎわいが嘘のように、商店街のなれの果てが続く
この商店街の周囲には、戦後のドサクサでなし崩し的に造られたバラックに毛が生えたような古い木造建築が、現在なら完全に違法な間隔で密集している
ひとから聞いた話だが、おばあちゃんが独り暮らしをしていたそんなバラックのひとつが、自然倒壊してバラバラになる事故があって以来、空き家が出る度に豊島区が買い上げ、バラックの撲滅にいそしんでいるようだ
僕が訪れたのは商店街の稼ぎ時である夕方だったにも関わらず、開いていたのは八百屋、ドラッグストア、飲食店だけで、ほとんどの店は、営業しているようには見えなかった
この日の出優良商店会の「日の出」は、かつての町名に由来するが、これも例によって東池袋という味気ない町名に変更されている
このあたりには、その名残をとどめる日の出湯という風呂屋があったが、今は跡形もない
この商店街の中ほどに、写真家の田中長徳氏が絶賛する有名な総菜屋「北池袋の名前のないコロッケ屋」があるので、訪れるのを楽しみにしていたのだが……
し、閉まってる。そして店のブリキの雨戸に見える貼り紙に嫌な予感が……
shock!
この店のコロッケとメンチが楽しみでやって来たのに、なんと廃業しているではないか! 旧き佳き東京の景色がこうして、またひとつ灯を消す光景に立ち会ってしまい、やりきれない思いが押し寄せる
貼り紙に書かれた数々の寄せ書きが、この店のすべてを雄弁に物語っている。誰が貼ったのか、店主を撮影したモノクロ写真が胸を打つ
もじゃハウスの化粧品店は明かりを灯していたが、振り返るとほとんどの店が、すでに廃業してしまったような雰囲気で、文字通りシャッター街と化した町並みが侘しい
今となってはシャッター街で、開いている店舗は数えるほどの商店街なのに、唐突に信用金庫があるところが、かつての繁栄を偲ばせる
池袋という大都会から歩いてすぐの場所に、こんなさびれた地方都市のような町が存在する事実は、かなり衝撃的である
商店街から外れた脇道にさえ、こうして商店が並んでいるところを見ると、百店舗以上の店が並び繁盛していたのは間違いないようだが、それは、もはやモヘンジョダロやインカの遺跡と同様に、過ぎ去った過去の出来事のようだ
こうして滅びかけた町をいくつも見ているが、そのたびに東京という都会が、いかに歪なかたちで発展してきたかが、実感として迫ってくる
大手企業がでっち上げた、くそつまらないショッピングモールばかりにひとが集まることを見ても、それは明らかである
この商店街の要所要所には、このような場違いなポケットパークがあちこちに見られた
とりあえず商店街の外れまでは見てみようと僕は歩みをすすめた
続く
†PIAS†
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