転倒事故 | ペッターの話

ペッターの話

延々と1人でブツブツやってる

ケガをした。

Twitterでも散々言ってる。

ケガをした。


今まで大きなケガというのをしてこなかった。

骨折とかヒビをやったことがない。

人生で1番痛かったのは親知らずの抜歯。

それもなんとか下両方終わって

もう歯医者で痛い思いをしなくて済む!

とおもっていたら、歯を折ってしまった。

この年齢まで虫歯ゼロだったのに。

折ってゲームオーバーになるとは。


毎朝、駅までは自転車を使っている。

金曜の朝は外に出たら雨が降っていた。

しかもそこそこ大粒の雨だったので

濡れるのが嫌で駅まで急いだ。


もうすぐで自転車置き場、というところで

曲がり角から急に自転車が飛び出した。

私も下り坂でスピードが出ており

咄嗟にブレーキを握ったら

雨に濡れた道でタイヤが制御を失い

気付いた時には地面に打ち付けられて

周りを走ってた女性2名と男性1名が

咄嗟に自転車から降りて

介抱をしてくれた。


顔を打ったことだけは分かった。

他の状況が何も分からなかったが

あまりの痛さに思わず

「いっっっってぇ………っ!」

と呻いた記憶はある。

血が出ているような気がした。

鼻血かと思った。

女性に起こされながら口元に手をやったら

指先に血がついた。

口を切ったのかと思った。

「大丈夫ですか!?あら、お顔が…

あとで冷やしてくださいね…」

と女性に言われた気がする。

「大丈夫です、ありがとうございます…」

と目も開けられない状態で

ふらふら立ち上がり

起こしてもらった自転車にまたがった時に

歯の異変に気がついた。

最初に感じたのは、やたら唇に刺さること。

欠けたのか?と思いながら

舌で触ってみたら

確かに欠けて鋭利になっていた。

ついでに、その隣の前歯がなかった。


ない。歯があるところに、ない。

パニックになりながらも

自転車置き場へ向かって漕いでる時に

もう一つ気付いた。


右耳のイヤホンがない。

左耳にしか入ってない。

そのことにしばらく気付けなかったあたり

混乱具合が伺える。


一旦、Uターンして現場に戻ったが

ぱっと見、ない。

雨は降り続く。

顔中が痛い。膝も痛い。

どこから血が出ているのかも分からない。

そしてやっぱり、前歯がない。


来た道を戻って帰宅した。

玄関をあけてマスクを外すと

マスクの中から折れた歯が出てきた。

手鏡で顔を見てみる。

左目の下にそこそこな擦り傷。

鼻の下も小さな傷があり、唇がやや腫れている。

鼻血は出ておらず、口も切っていなかった。

歯が折れている。

出っ歯気味だった、上の大きな前歯が

三分の一ほどしかない。

隣の歯も欠けており尖っている。

それが刺さってか、唇の内側から

血が出て腫れている。


右手の親指と、手のひら側の付け根から

出血している。

手のひら側は強く打ったようで

やや赤くなっている。

長ズボンのおかげで膝はすりむいてなかったが

こちらも強く打っており赤くなっていた。


近場の歯医者を探す。

1番早いところで9時から営業だった。

時刻は8時10分ごろ。まだ時間が早い。

ネットで調べたら

折れた歯を牛乳に漬けておけと出てきたので

隣のコンビニで買ってきて漬けた。

顔も足も全体的に痛いが

なんとなく折れた歯が痛み出したので

バファリンを飲んだ。

折れた歯の断面には赤く血のような部分があり

歯茎も血が滲んでいる。

口の周りには白い粉がついていた。

多分、歯が折れた時の破片だ。


8時半にダメ元で電話してみたら繋がった。

営業前の連絡であることを詫びてから

急ぎで見て欲しいと伝えたら

9時15分で予約を取ってくれた。

もう一度、雨が降る中

今度は歩きで傘をさして駅まで行く途中

現場に寄ってイヤホンを探した。

そこまで未練があったのは

結構高いイヤホンだったから。

1ヶ月の食費よりも高い。

まだ2月に買ったばかりだ。

そりゃ諦め切れない。

しかしイヤホンは無かった。


歯医者で状態を見た先生が深刻そうに呟いた。

あっ、ダメなんだなと思った。

あとから受けた説明では

歯が折れたことで神経が完全に

露出してしまっているんだそうだ。

折れた歯に見えた血のようなものが

神経だそうで、この状態だと

神経を取る必要があり

牛乳に漬けた歯があっても使えないかも

ということだった。


歯の神経を取る…親不知の抜歯でも

同じようなことをやっていると思うが

言葉の響きだけでも怖い。

しかしやってもらうしか無い。

もう無いと思ったのに麻酔の激痛に耐えて

処置をしてもらう。

ついでに欠けた歯も刺さらないように

角を丸めてもらう。

最後に被せものをボンドでつけて

椅子を起こされる。


手鏡を持たされて恐る恐る見たら

私が持ってきた歯をつけてくれていた。

色はくっきり変わっており

境目がハッキリ分かったものの

一応、前歯が復活したのは嬉しかった。


ただ、後日根っこの処理をするために

また外す必要があるとか

ボンドでつけてるだけだから

すぐ取れてしまうとか

神経を取ってるので2〜3日は痛むとか

先生の説明は喜べるものでは無かった。



そのまま電車に乗って会社へ向かう。

イヤホンがない通勤電車ほど

つまらないものもない。

仕事を教わる予定だった先輩と

廊下でバッタリ会った。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃないです…前歯折っちゃって…」

「えぇ!?そんな…永久歯なのに…」

「今はまだ麻酔が効いてるんですが

このあと痛むみたいなので

リモートでも良いですか…」

とお願いしてパソコンを持ち帰り

また電車に乗って帰路につく。


なんとなく、一瞬めまいを感じることが

2〜3回あった。

顔とはいえ頭を打っているので

脳外科とかも本当は行った方が

安心なんだろうが……。


お昼に食べる予定だったお弁当を

自宅で温めて食べる。

折った歯よりも隣の欠けた歯の方が

出っ張っており

下の歯があたると痛くて

とても噛めたものではない。

口の横の方から少量ずつ入れて

草食恐竜のように奥歯で挟んだりして

モサモサと嚥下した。

食後に抗生物質とロキソニンをのんだ。


イヤホンを諦めて、スマホで音楽でも

流そうと再生ボタンを押したら

Bluetoothが接続されたままだった。

左耳のイヤホンは既にケースにしまってる。

おや?と思い音量を最大にしてみた。

部屋のどこかから音が聴こえる。

一応イヤホンケースに耳を当ててみる。

これじゃない。

カバンから鳴っているようだった。

耳を近づけながら探してみたら

背面ポケットの中に右耳イヤホンが入ってた。

転んだ衝撃で吹っ飛んだのではなかった。

道路を探してもないわけだ。

どういう状況か分からないが

倒れた時に背負ってたカバンの

背面のポケットに入ったらしい。

そんなことある??????



母の休憩時間を見計らってLINEした。

「夜行ってあげようか?」

と言われたので

「隣にコンビニあるし大丈夫だよ」

と返したものの、やはり心配だったようで

夜、わざわざ高速を使って来てくれた。

母が家にあがるのは

引っ越した日以来だ。

扉を開けた瞬間、私の顔の傷を見て

顔を歪めたものの

母の想像以上に腫れがなく傷も少なく

安心したようだった。

「顔の傷が痛むから軟膏を持ってきて欲しい」

とお願いした通り持ってきてくれたが

母が帰ったあとによく見たら

使用期限が2007年に切れていた。

ちょっと使う勇気はない。


「きっとマーキーやおじいちゃんが

守ってくれたんだよ。

だからそのくらいのケガで済んだんだよ」

と母が言った。

「だったら最初から守ってくれたら良いのに」

「事故を防ぐことまでは

無理だったんじゃない?」

うーん、信仰心が薄いのでなんとも。

でも、これは後出しになるのだけど

曲がり角で人が飛び出す直前のこと。

一瞬頭の中で

(いまブレーキかけたらマンホールで転ぶ)

と滑るビジョンが見えていた。

で、マンホールを過ぎた後に

人が飛び出してきて急ブレーキをかけたら

普通の道でも滑って転んだ。

これが警告だった、という捉え方をしても

別に良いんだけど

結局ケガをしてるしなぁ。


前歯が使えないとご飯が食べられない。

奥歯だけで噛むことってなかなか難しくて

時間もすごくかかるので

面倒で食事を殆ど取っていなかった。

私は食事を抜くとすぐ体調が悪くなる。

足元がふらついたり気持ち悪くなったりする。

さらにずっと横になっていたり雨の日は

頭痛がする。

この症状というのが、頭を打ったあとに

病院へ行く判断基準と

全く一緒なのには参った。

どっちの理由か判断ができない。

とりあえず頑張ってご飯をちゃんと食べたら

フラつきや気持ち悪さはなくなったので

救急車は呼ばなくても大丈夫そうだ。

歯痛用のロキソニンを飲みたいが

飲んだら頭痛が分からなくなるので飲めない。


言うて顔は腫れてなくてアザもなく

頭も出血やコブがないので

恐らく足から落ちて倒れたんだと思う。

足のアザは結構ヒドイ。

だから多分大丈夫なんだけど

脳みそのことは自分じゃ分からないので

毎日、目が覚めるたびに

(あぁ、生きてる……)

と割と本気で感じている。