H先生は高校の時の
地学の先生だった。
理科の選択は2年生からだったが
1年生の頃から理科総合Aの授業を
H先生が担当していたし
1年3組の担任だったので
面識はあった。
(私は1年2組だった)
当時定年を間近に控えたH先生は
理科の先生らしく
大体いつも白衣を羽織っていて
眼鏡で、髪は真っ白。
なんだか変な先生で
生徒に媚びないし
かといって突き放すわけでもない。
一度、理科総合Aの授業に
先生が来なかったことがあった。
30分くらいたってクラスの女子が
職員室へ先生を呼びに行くと
どうやら授業を
すっかり忘れていたらしい。
バツが悪そうに教室へ来て開口一番
「君たちね、来ないなと思ったら
放っといてください。
職員室へ呼びにきたら
僕が忘れてたってバレて
怒られちゃうでしょ」
と言った。
残りわずかな授業時間で
学校の近くを流れる河川についての
話をしてくれた。
もちろん、授業内容とは
全く関係のない話である。
ところで私はH先生の
理科総合Aの授業が大嫌いだった。
というかH先生が大嫌いだった。
特に何かされたわけではないが
学校で1番嫌いな先生だった。
なので、授業中はいつも遊んでいたし
当然成績も悪かった。
私は幼いころから
地球や宇宙が大好きだったので
2年の選択理科は
地学にするつもりだったが
担当がH先生と知った時は結構悩んだ。
悩んだ末に、もしかしたら
異動になって先生が変わるかも
という期待もこめて地学を選んだ。
高校1年の3学期。
いつものように理科総合Aの授業中
机の下でDSをやって遊んでいると
知らないうちに周りが静かになった。
ハッと顔をあげると
目の前にはH先生。
怒られる・・・・!!
と身構えていたが、先生は
「ペッターもそういうことするんだな」
とボソリと呟いただけで
また教壇へ戻った。
ガツンと怒られるよりも
ガッカリさせた、というのが
なんだかショックが大きくて
非常に申し訳ない事をした気分になり
その日から心を入れ替えて
真面目に授業を聞くようになった。
授業はサッパリ理解できなかったが
ちゃんとH先生を観察していると
これがすごい面白い人で。
結構可愛いところもあって
一気に先生に対して興味が湧いた。
そして高校2年になり
H先生の地学の授業が始まった。
出席番号順の私の席は
教壇の真ん前で特等席だった。
前述のとおり元々大好きな分野だし
H先生も学校1嫌いな先生から一転して
大好きな先生に変わっていたので
毎回授業が楽しくて仕方ない。
H先生も自分の専門分野だから
楽しそうに授業をしているし
とても分かりやすかった気がする。
昼休みには地学室へ通って
先生を質問責めにしたし
相変わらず隣のクラスの担任だったので
廊下で顔を合わせることも多かった。
最初の中間テストで
私は99点だった。1問だけミスった。
次こそは100点!と意気込んでいたが
中間テスト後の体育祭が終わったあとから
H先生は学校に来なくなった。
確かに最近具合が悪そうだなぁとは
思っていたのだが
急に来なくなったので相当心配した。
地学の授業は全部自習になった。
当然期末テストはなくなった。
夏休みが近くなっても先生は来なかった。
2学期になったら復活するかもしれない。
そんな淡い希望を抱いて
夏休みの部活を乗り越えたあとの
9月1日、始業式。
H先生の退職が発表された。
バレないようにちょっとだけ泣いた。
地学の授業は結局
別の学校から臨時の先生を呼んで
授業が再開された。
この臨時の先生はH先生の知り合いで
私と同じようにH先生推しの人だったので
全く知らないH先生の話を
色々聞かせてくれた。
同じころ、どういう経緯だったか忘れたが
私はH先生の連絡先を手に入れた。
「何かあった時にはメールして下さい」
と言ってくれたので
2学期中間テストで
地学100点満点を取ったと
報告をしたら喜んでくれた。
できれば先生のテストで
100点を取ってあげたかったけれど。
卒業してしばらくしてから
臨時の先生も交えてご飯に行ったり
吹奏楽が好きなH先生に誘われて
海上自衛隊の音楽会へ行ったこともあるが
今は年賀状のやり取り程度のお付き合いだ。
確か、先生が退職した翌年くらいに
還暦だったような気がする。
8月の終わりが誕生日だったはずなので
もう相当な年齢になったんじゃないだろうか。
9月1日になると、そんなH先生を思い出す。