2021年の初プレップアップは年末入荷したP173Breeze黒艶出モデル!
年末年始の間ショールームの環境に馴染ませた後、数日にわたるプレップアップ(精密調整)によって「製品」を「楽器」に仕上げました。
鍵盤に軽く触れただけで発音する敏感なタッチ、輪郭のある粒立ちの良い音質に調整。PETROFらしい歌うような音色&良質な響板の豊潤な響きが存分に味わえる一台です😌
その作業の始終をご紹介、コンサートピアノ同様の調整で一台の輸入ピアノが楽器に成るまでの工程をご覧ください。
まずはベッディングスクリューをリセット、鍵盤筬と棚板を適切に接地させます。
続いてバランスキーピン88本の位置を正しくセッティング。
定規を用いて鍵盤の高さをチェック、パンチング調整のためにチョークでメモ...
アクション、鍵盤を外して土台から整備し直します。
バランス・フロントキーピンの汚れ・ベトツキを拭ってスムーズな弾き心地を作ります。
フロントキーピンの角度を修正、鍵盤動作の摩擦抵抗を減らします。
打鍵エネルギーをアクションに伝達するキャプスタンスクリュー、接点を磨いてタッチを円滑に...
バランスホールを掃除、キーブッシングを専用プライヤーで調整して鍵盤の基本調整が完了です。
メモに基づいてパンチング紙を抜き差し、本体におさめて綺麗に均されているか確認。
続いては弦とハンマーフェルトの接点をチェック、適切な位置に「弦合わせ」を行います。
場合によってハンマーの進行方向&角度を修正。
「弦合わせ」完了、ハンマーフェルトの間隔、角度が綺麗に揃っているのがおわかりでしょうか?
ハンマーの位置が定まったら「サポート合わせ」です。
ローラースキンの真下でレペティションレバーが受けるように微調整。
そのローラースキンにはテフロンパウダー処理、上品なタッチ感を作ります。
バックチェックの角度を微調整。
ハンマーテールを正しい位置で受け止めるように専用プライヤーで調整。
続いてトリルや連打に関わるジャックの調整、まずは88点の前後位置を微調整...
そして上下のレベルを指でなぞってチェック。レバー表面から0.2mmほど段差をつけるべく専用ドライバーで調整。
ハンマー接近調整、LEDライトで照射しながらハンマー先端と弦の影を頼りに0.5mm単位で精密に。微弱音やトリルに関わる重要な作業です。
接近を調整した後にドロップ調整、繊細なアフタータッチの反応を作ります。
鍵盤の深さ調整、まずは白鍵から10㎜でセッティング。
白鍵のアフタータッチの感触をもとにハンマーストローク(打弦距離)を設定、静止時のハンマーの高さを均します。
そして白鍵のアフタータッチの感触を黒鍵の深さにも反映させます。
鍵盤から伝わるエネルギーが揃ったところでハンマーストップ調整、打弦後のストップ位置を15mmで整えます。
そして連打が入りやすいようにスプリング調整、強すぎず、弱すぎず。
ダンパーの動作、掛かり、ソステヌートペダルの効きを整備してアクション&鍵盤の「整調」作業が完了しました。
「駒打ち」作業、弦と駒が密着するように真鍮棒で小突きます。
A=443Hzで調律、新品のためピッチを高めに設定。
続いて音質の粒を揃える「整音」作業。ソフトペダル使用時の音を専用ピッカーで調整。
ハンマーのクッション感を針刺しヴォイシング、工場でも行っていますが最終的に現場で仕上げる工程。ppp~fffまでの弾力性を整えていきます。
最後に「3弦合わせ」、ハンマー先端と3弦が同時に接するようファイラーで薄く削って微調整、微弱音にも輪郭が宿ります。
ハンマーフェルト表面の針の痕跡、毛羽立ちを綺麗に処理、
艶々しく上品な音色に生まれ変わりました✨
コンサートピアノに施している工程を家庭用GPでも実施。手間と時間をかけて本来備えている能力を引き出しました。
ブランドや価格は確かにピアノ選びの基準ですが、ユーザーとして35年、技術者として20年携わってきた店主の見解としては今回のように徹底して調整されていることが何よりも大前提...。
残念ながら量産、量販されるピアノの多くは、出荷前のプレップアップ(精密調整)、納品後のメンテナンス(維持管理)が専門家の目でみると不十分、プロの演奏家の要求を充たすレベルに達していないのが実情です。
P173Breeze&P159Bora Black High Polish
2機種のペトロフGP黒色艶出モデルが並ぶ極めて稀な機会、プレップしたチェコの名器を体感してみませんか??
輸入したばかりのPETROFを通じて、整備の大切さをピアノを愛するユーザーにご理解頂くことも弊社を設立した理由のひとつです。
ピアニスト、ピアノの先生、愛好家の皆様もピアノの調整について詳しく知りたい方は白金台ショールームへどうぞお越しください!